「World of Warcraft」におけるアルネスは、プレイヤーのキャラクターが装備できるアーティファクト武器の一つです。
アーティファクト武器は、いずれもアゼロス大陸に現存する伝説級の武器であり、それらの使用は悪魔の焦熱の軍団(Burning Legion)に対抗し得る唯一の手段であると見なされています。
アーケイン(Arcane)のスペックを選んだメイジ・クラスのプレイヤーがアルネスを扱います。
徐々にダメージを与え続けながら最後に爆発を起こして大ダメージを与える「Mark of Aluneth」というスペルを、アルネスは使用可能にします。
Warcraftのストーリー上においては、ガーディアン・メディヴの母親であるエイグウィン(Aegwynn)が、かつて手中に収めていたことでよく知られています。
彼女がアルネスを扱った軌跡は、魔法都市ダラランに存在する守護者の殿堂(Hall of the Guardian)の内部でうかがい知ることができます。
選ばれし魔導師たちだけが立ち入ることができる守護者の殿堂は、とても広大であり、様々な魔法の展示物や書物が資料として保管されている場所です。
その書物の一冊である「ティリスガードの記録書 = Archive of the Tirisgarde」には、エイグウィンによってアルネスがダラランに納められるまでの経緯が記されています。
アゼロスの大陸上には多種多少なアーティファクトや魔法の遺物が散りばめられていますが、その中でもアルネスは別格の存在でした。
いささかも不純な要素が混ざっていないアーケインのエネルギーの集合体であり、純粋であるからこそ大変強力なそれは、実体を持たないながらも意思を有していて、魔法の杖に宿ってはいつしか「アルネス」と呼称されるようになりました。
この杖からアルネスのエネルギーを引き出すには、アルネスの意思を制御せねばならず、そのためには強大な魔力と、それを精密にコントロールできる能力を兼ね備える必要がありました。
もちろん並大抵のメイジでは、仮にこれを発見したとしても、使いこなすことは到底できなかったでしょう。
最初にアルネスを発見したアゼロス上の生物は、マリゴスが率いる青龍軍団のブルー・ドラゴンフライト(Blue Dragonflight)でした。
魔法とアーケインのエネルギーを司る守護者である彼らだからこそ、異様なまでに高純度なアーケインのエネルギー体であるアルネスの存在を誰よりも早く感知できたのでした。
アーケイン・エネルギーに関する専門家とも言えるブルー・ドラゴンたちでさえも、アルネスを制御することは困難を極めました。
アルネスを扱う過程で何度もアルネスの意思は暴走し、ブルー・ドラゴンの拠点で小さくない損害をもたらし続けました。
そんなアルネスの従順ならざる挙動に対して、ブルー・ドラゴンたちは難色を示すことはなく、むしろ喜々として、この芸術的なまでのアーケイン・エネルギーの変動性を興味深く観察していました。
アルネスにとって無害な実験を何年も繰り返した後で、ブルー・ドラゴンフライトはようやく自分たちの好奇心を満たし、アルネスを元にあった場所へ戻したのでした。
そのブルー・ドラゴンフライトに、メートル(Meitre)という一人のハイボーン(Highborne)が接触していました。
ナイト・エルフ族の上級階層であったハイボーンの中でも、メートルは高い智力と魔力を有する大魔導師であり、世界中を日々めぐっては見識を深めていました。
その際中に出会った魔法の守護者であるブルー・ドラゴンから、アルネスという不可思議な杖の存在をメートルは教わったのです。
果たしてメートルはアルネスを発見したのですが、彼でさえ、この杖の意思を制御することは結局できませんでした。
アルネスをコントロールするまでには至らなかったものの、魔導師としての様々な知恵を蓄えていたメートルは、杖の内部からアルネスの力を引き出す方法を発見し、自分の魔法の力を増強させる手段として活用することには成功しました。
その「アルネス仕込み」のメートルの魔法が活躍した場が、悪魔の軍団が襲来した、いわゆる古代戦争(War of the Ancients)です。
多くのハイボーンたちが悪魔の強大な力に魅せられて裏切る中で、メートルはアゼロス大陸を防衛するレジスタンスの軍に加わり、かつての同胞および悪魔の軍団と対抗しました。
ここでメートルたちは悪魔の軍団に包囲される危機的状況に陥りましたが、メートルはアルネスから引き出した力を自分たちに向けて、その場の生き残り全員を安全な場所まで瞬間移送させるという、尋常ではないほどに大きいエネルギーの発動を実現させています。
この悪魔との戦争でアゼロス側は勝利したのですが、久遠の聖泉(Well of Eternity)が破壊された際の衝撃で大陸の8割が沈没するなど、アゼロスには甚大な被害がもたらされていました。
大陸崩壊を目の当たりにしたエルフたちは、アーケインのエネルギーを操る行為は極めて危険であると定めて、これを封印することを決めました。
アルネスという強大なアーケインのエネルギー体を活用してきたメートルも、それを手放さざるを得ず、さらには長期に研究と鍛錬を積み重ねてきたアーケイン・スペルを二度と扱うことができなくなったのです。
魔導師としての道を極めようとする情熱を失った彼は、いつしか隠居への道をたどり、アルネスと共に忘れ去られる存在となりました。
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