現地時間の2月12日にアクティビジョン・ブリザード社が、全従業員9,600名の8%程度にあたる、およそ800名にレイオフ(一時解雇)を通知したことが判明しました。
業界に衝撃を与えるニュースとして、各大手メディアが一斉に報じています。
業績の不振や損失を補う等の理由で従業員を整理解雇すること。大抵は唐突に告知される。
従業員側に非がある一般的な「解雇」ではなく、再雇用を前提とした一時的な解雇。
ただ近年は、実際には再雇用はほとんど行われず、人員整理(リストラ)の意味合いが強い。
このレイオフの対象部署は主に営業部や管理部であり、ゲームの開発部には及ばなかったとのことです。
販売や市場展開に大きく寄与してきたマネージャーやエンジニアたちの離脱の決定は、ゲームの発展のために同じく尽力してきた残存の社員たちも含めて、大きな悲しみを社内中にもたらしたそうです。
過去に苦楽を共にしてきたブリザードの旧社員たちも、元チームメイトを気遣う慰労の意を続々と表明しています。
ハースストーンの管理チームからも、特筆されるべき人材が、惜しまれつつも去りゆくことになりました。
公式フォーラムで精力的に告知と返答を続けてきたJesse J. Hill氏――
今年の1月にブリザード勤続10年を迎えて盾を授与されたばかりであり、経験も活動実績も申し分がないように映っていました。
同氏が一手に応答を引き受けていた、オート・スケルチとティランダ再配布のスレッドのゆくえは、果たしてどうなってしまうのでしょうか――
ハースストーンのリリース当初から「Zeriyah」という呼び名でコミュニティ・マネージャーとして人気を博していたChristina Mikkonen(旧姓Christina Sims)氏――
以前にBlizzConのコスプレ・コンテストで優勝し、近年ではJanne “Savjz” Mikkonen選手と結婚したことが話題となっていました。
コミュニティ・チームのリーダーも務めた、ハースストーンの創成期に大きく尽力してきた人材が失われます。
2016年12月より、様々なライブ・イベントのプロデュースに携わったNicole Blalock氏――
これまで、炉端の集いとヒーロー予選、および選手権ツアーの運営などに従事してきました。
ハースストーンのe-Sports部門に関連する多くのスタッフやキャスター陣から、別れを惜しまれています。
優秀な管理営業部門の人材の大量レイオフを受けて、アクティビジョン・ブリザード社の競合相手となる各種ゲームの事業社が、我先(われさき)にと彼らに雇用の受け入れを表明しています。
昨年末には、ブリザード社のe-Sports部門のトップであったAmy Morhaime氏が退社されたことが非公式に判明――同氏の夫であるMike Morhaime前社長も、今年の4月に退社される可能性が濃厚となっています。
コスト削減と再編成が急速に進む組織の中で、ブリザード社は、ゲーム開発事業の形態が一変され得る過渡期へすでに突入しています。
昨年末にブリザードの社長に就任したJ. Allen Brack氏による、コミュニティに対するメッセージの要約です。
- 企業理念は変わらず「偉大なゲームとエンターテイメントの創造に専念する」こと。
- 最高水準の技能と優秀性が求められていて、それを維持、拡大するには時間と有能な開発者が必要。
- より多くの方面にゲーム・コンテンツを提供し、未発表のプロジェクトを組み上げることに専念している。
- e-SportsとOverwatch Leagueも重要であり、競技向けコンテンツの発展も継続させる予定。
- 上記の優先事項を果たすために――まずは北米地域から、数か月にかけて他地域でも――非開発部門の人員を削減する。
- 対象者には「給与の増額」「就業手当の継続」「再就職のサポート」が含まれた退職金のパッケージを用意。
- 人員整理は難しい決断。対象者には感謝。ブリザードの将来には自信有り。期待に応えるべく努力する。
アクティビジョン・ブリザード社が発表した2018年第4四半期の決算報告書の主要部分です。
- 「Destiny」の出版権を開発社Bungleに返上。
- 中国NetEase社との提携を2023年まで延長。
- ブリザード社の月間アクティブ・ユーザー数は3,500万。
「オーバーウォッチ」と「ハースストーン」が堅調。
拡張セットのリリース後における「World of Warcraft」のユーザー数減少は想定済み。 - 売上高は前年比で伸びたものの、ゲームの売上は予想よりも少し下回った。
- 期待の水準に満たないゲームや権利に対する優先度を下げる意向。
- 2019年は内部フランチャイズの生産ペース向上と高品質化に注力。
「Call of Duty」「CandyCrush」「Warcraft」「オーバーウォッチ」「ハースストーン」「ディアブロ」の各ゲームの開発要員を20%ほど増やす予定。 - 上記の達成のために、ゲーム開発以外の管理部門のコストを削減する予定。
- 2019年には新規タイトルの大型作品をリリースしない(2019年の新リリースは「Warcraft 3」のリマスター版のみ)。
この決算報告を受けてアクティビジョン・ブリザード社の株価が上昇を続けていると、日本経済新聞が報じています。
流行する「PUBG」「フォートナイト」「Apex」などのバトルロイヤル系のゲームで競争力を持たないことが、同社の最近の株価を大きく落とす要因の一つであり続けましたが、この発表を機に「悪材料が出尽くした」と期待され、買いに転じられたとのことです。