Hearthstoneのゲーム・デザイナーであるBen Brode氏が、公式フォーラムに記事を投稿しました。
カードの説明文の規則性について解説する記事です。
この投稿が必要とされるに至った発端は、いくつかの新カードの発表です。
新カードのAvenge、Anub’ar Ambusher、Voidcallerの各能力は、対象をランダムで選ぶのにもかかわらず、その能力の説明文に「ランダム」という記述がありません。
これによって、「それぞれの能力の対象は、自分で選択するのかランダムに選ばれるのか」という疑問の声がコミュニティから多く挙がるようになりました。
なぜ、これらの新カードの説明文に「ランダム」という記述がないのかをBen Brode氏が解説しています。
カードの説明文を記述する際に用いられている規則も併せて解説されています。
その内容の全てを以下にご紹介します。
(※以下引用)
こんにちは!
今回は、「ランダム(random)」という単語が、どのような場合にカードの説明文に記述されるのかをご紹介したいと思います。
ここ最近、カードの説明文における「ランダム」という単語の有無について、実に多くの議論があることを目にしています。
だから、カードの説明文がどのような規則に基いて記述されているのかについて、皆様が興味を持たれていると判断したので、この記事を投稿します。
Hearthstoneを制作する際に、「ランダム」という単語の取り扱いについて私たちが用いた大まかな規則は以下のとおりです。
・カードの効果の対象が、対戦相手の手札やデッキ(目視できない範囲)からランダムに選ばれる場合は、「ランダム」という単語をカードの説明文に記述しない。
例えば、Thoughtstealが対象とするカードはランダムに選ばれますが、その説明文に「ランダム」という単語は使われません。
相手のデッキ内のカードが対象なのだから、わざわざ「ランダム」という単語を記述せずとも、ランダムに選択されることが明白だからです。
Alarm-o-Botの説明文には「ランダム」という単語が使われます。
なぜならば、「ランダム」という記述がないと、プレイヤーが手札から任意のカードを選択できるとも読み取れる説明文になるからです。
この規則はあくまで原則的なものであって、例外もあります。
Lightwellは目視できる範囲内からランダムに対象を選択しますが、その説明文に「ランダム」という単語は使われません。
使うと、「At the start of your turn, restore 3 Health to a random damaged friendly character.」という説明文になります。
これでは説明文にあまりにも多くの修飾語句が含まれることになります。
プレイヤーは、一度Lightwellを使用すれば、対象の選択がランダムに選ばれることをすぐに認識するでしょう。
私たちはそれで良しとしているのです。
少なくとも、いたずらに説明文を長くして解読しづらい内容とするよりはましであると考えています。
逆に、Mind VisionやSense Demonsは目視できない範囲内から対象を選択しますが、その説明文には「ランダム」という単語が使われています。
なぜならば、初心者が扱うことになるBasicセットのカードであったり、「ランダム」の記述が必要であると「感じられた」からです。
私たちがカードの説明文を記述するとき、この「感覚」という要素は非常に重要となります。
確かに、一貫とした規則に基いてルールや説明文を記述することは大事でしょう。
ただ、コンピューターがルールに従って自動で処理を行うデジタル・ゲームにおいては、記述の規則性の重要度はやや下がります。
カードの説明文には「テンプレート」があります。
特定の能力を表す際には、定められた「テンプレート」の文章をそのまま用います。
例えば、「~が起きたときに ~を発動する」と表現されるSecretの効果の説明文には、必ず「When ~, do ~.」という形式の文章が用いられ、「Do ~ when ~.」という形式の文章は用いられません。
同じ種類の能力の説明文を、「テンプレート」に従った同じ形式の文章に統一することは重要です。
そうすることによって、プレイヤーが、入手済みのカードと同じ種類の能力を持つ新カードを獲得したときに、その能力の内容を簡単に把握できるようになるからです。
この「テンプレート」は常に再評価されています。
そして、私は「Curse of Naxxramas」の新カードを作成している間に、SecretやDeathrattleの効果の説明文に「ランダム」という単語が本当に必要なのだろうかと思うようになりました。
わざわざSecretカードに「ランダム」と記述しなくても、対戦相手のターンの間はプレイヤーが対象を選択できないのだから、必然的に対象はランダム選択になることを暗黙の了解にできないだろうかと考えました。
Deathrattleの効果が選択する対象には、必然的にランダム性が含まれることを暗黙の了解にできないだろうかとも考えました。
カードの能力の説明文が短くなることは、私たちにとって有益になります。
各能力の説明が複雑でないほど、より深い戦略性を持つカードの作成が可能となるからです。
よって、Deathrattleの効果の説明文から「ランダム」という単語を取り除くのも有益になるだろうと、私は思いました。
一部のプレイヤーは、Deathrattleの効果にはランダム性が必然的に含まれることを理解していました。
だから、私はDeathrattleを持つ新カードの説明文に「ランダム」と記述しなかったのですが、多くのプレイヤーは対象がランダムであることを確信できませんでした。
その後、「多くのプレイヤーに疑問を持たれるような結果が、全くの初心者に対してはどれほどの弊害になるのか」と心配する声も挙がるようになりました。
これは、私たちが相当に憂慮せねばならない事態です。
私たちは、この種のフィードバックに感謝しています。
そして、たくさんの議論を繰り返した結果、私たちは新カードのAvenge、Anub’ar Ambusher、Voidcallerの各説明文に「ランダム」という単語を加えることにしました。
覚えておいていただきたいのは、目視できない範囲を対象にするカード(Thoughtstealなど)の説明文には、これからも「ランダム」という単語が記述されないことです。
さらには、私たちが「感覚」に基き、必要に応じて説明文の「テンプレート」や記述の規則性を変更していくことを、どうかご了承ください。
常に、私たちはあなた方のフィードバックに感謝しています。
今回のケースのように私たちがいつも同意するとは限りませんが、あなた方からの真剣なご意見はゲームをより良いものにしてくれています。
ありがとうございます。
Ben Brode
(※引用ここまで)
これらの新カードの説明文に「ランダム」と記述するのは、経験者にとっては蛇足であると主張する、「記述不要派」の方々もいます。
しかしながら、初心者のためには「ランダム」の記述が必要だと主張する、「記述必要派」の意見の方が多く見受けられました。
今なお、効果の対象がランダムなのかどうかを問う声もあります。
今回のBen Brode氏の投稿は、「ランダム」と記述しなかった理由をきちんと説明しつつ、多くのコミュニティの意見を汲んで「ランダム」という単語を加えると通知する内容でした。
Blizzard社のゲームが魅力的である理由の一つは、その開発陣が自分たちのエゴなど二の次にして、プレイするユーザーこそが最も重要であるという方針のもとでゲームを制作することです。
今回の件に関しても、自分たちの意見を曲げることには困難があったでしょうが、「ユーザーにとって有益」と判断したコミュニティ側の意見を即座に採用する結果としました。
私は今回の修正に対して賞賛と感謝の意を申し上げます。
Hearthstone 公式フォーラム – The word “random” in card text.