場における自勢力を拡大することに関して、相手よりも効率的にマナを消費することで得られる優位性です。
テンポ・アドバンテージが増えるほど、場に展開する自軍が強力となり、相手よりも速く敵側のヒーローを倒す可能性を持つことになります。
ハースストーンの対戦における作業の大部分はテンポの奪い合いです。
継続してテンポを得て、テンポ・アドバンテージを大きく増やした側のプレイヤーが、一般的には勝者となります。
その理由は、テンポを得る結果として場に登場する自軍のミニオンたちこそが、敵へダメージを与える最も効率的な手段となることです。
ミニオンは一度召喚されると、以降は破壊されるまで延々と、追加のコストの消費なしに敵へダメージを与え続けます。
一部のデッキによる戦術を除き、テンポを度外視していては、敵軍のミニオンたちの累計ダメージによって早期に決着を付けられてしまいます。
カード・アドバンテージをいくら稼いだとしても、それをうまくテンポの獲得へ結びつけられなければ、多くの手札を抱えたまま敗北することになります。
ライフ・アドバンテージをいくら稼いだとしても、テンポが圧倒的に劣っていれば、その差は瞬く間に縮まることになります。
テンポ・アドバンテージを手にしている側を有利とする、もう1つの特筆すべき要素は、先に攻撃対象を選べることです。
ハースストーンの場に登場するミニオンは、突撃能力を持つものを除き、召喚された直後には行動できません。
このことによって、両軍の陣容が全く同じになったとしても、先んじてテンポを得て先に軍を展開したプレイヤーに優位性が残されます。
例えば、両陣営に3/3、3/1、1/2のミニオンが1体ずつ存在するとします。
この時点でのテンポに差はありませんが、先にテンポを得た側のプレイヤーが先に攻撃できることが、差異を生じさせます。
このケースでは、図のように3/1を敵の3/3と相打ちにさせ、1/2を敵の3/1と相打ちにさせ、3/3で敵の1/2を倒せば、マナやカードを一切消費せずにテンポ・アドバンテージを手にすることができます。
このように、相手よりも先にテンポを得たプレイヤーが有利となるために、ハースストーンを含めた対戦型のカード・ゲームでは先攻側が有利とされています。
先攻側は、常に相手よりも多くのリソースを先に使用でき、相手よりも先にテンポを得ることが可能です。
よって、ハースストーンではこの差を埋めるために、ハンデとしてコインと追加のカードという2枚分のカード・アドバンテージを最初から後攻側に与えています。
試合中における「テンポが悪い」という言葉は、テンポを得る機会を失う場面が多いことを意味します。
場に影響を及ぼさない能力のためにマナを消費したり、コストに比してはステータス値が低いミニオンを場に召喚すると、テンポを得る機会を失うことになります。
例えば、魔力なる知性のプレイは、カード・アドバンテージを1枚分増やしますが、場には一切の影響を及ぼさないために、コスト3に相当するテンポを得る機会を失わさせます。
一般的なコスト4のミニオンと同等のステータス値(5/4)を備えるエルーンのプリーステスを、コスト6で召喚することは、その差のコスト2に相当するテンポを得る機会を失わさせます。
ヒーローの体力が4回復する能力の発動の代償です(テンポを犠牲にしてライフのアドバンテージを得る)。
ターン終了時に使用可能なマナが余ることも、テンポを得る機会を失わさせます。
ミニオンとしての「バリュー」が相当に高いケーアン・ブラッドフーフを30枚揃えたデッキがあったとしても、それではほぼ間違いなく勝利できません。
コスト6のケーアンを召喚できる第6ターンまでに、計15マナにも相当するテンポを得る機会を失い続ければ、1体目のケーアンを召喚する頃には敵軍によって倒されるからです。
デッキのコスト・バランスを意味する「マナカーブ」をデッキの構築時に熟慮するのは、マナを使用できずに浪費するターンが少しでも発生しないようにするためです。
テンポを稼げなかったり失ったりした相手に対して、場の勢力拡大を果たすと、テンポ・アドバンテージが増えたものとみなされます。
もちろん、自軍のミニオンが排除されることでもテンポは失われ、両者間のテンポ・アドバンテージが変動します。
例えば、第6ターンで先攻側がコスト6のボルダーフィストのオーガを召喚し、続く後攻側がそれをコスト3の密言・死で破壊したとします。
この時点では、先行側がコスト6相当のテンポを失ったのに対し、後攻側はコスト3相当のテンポを得る機会を失っただけです。
後攻側が残りの3マナでコスト3相当のミニオンを召喚すれば、後攻側は相手のテンポをコスト6分減らして、自分のテンポをコスト3分増やす結果となります。
自軍を目いっぱいまで拡大してテンポを大きく稼いだ直後に、ただ1回の相手の全体攻撃によって自軍が全滅し、テンポ・アドバンテージが逆転されることなどもよくある事例です。