一般的なスポーツのハラスメントと、e-Sportsのハラスメントとの大きな違いは、体現する手段です。
一般的なスポーツでは実際の言動が、e-Sportsではネットを介した文章が、主にハラスメントの手段として用いられます。
ハラスメントの発生を抑止する手段も、大きく異なることになります。
そして、e-Sports側のハラスメントを抑止する分野は、現状では未成熟であると捉えられています。
その未成熟な抑止力の状況下で、普段からハラスメントの脅威にさらされているのが、e-Sportsのプロ選手たちです。
彼らが利用する配信サービスやSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)には、一般人が発する無数のハラスメントがはびこっているのです。
彼らにとって、これらのサービスを通じてファンを惹きつける行為は、人気やイベントの招待を獲得するための重要な活動です。
よって、たとえ毎日にでもハラスメントを受ける恐れがあるとしても、配信やSNSを介してファンの声に目を向け続けねばなりません。
女性プロ・ゲーマーのKim “Eve” Shee-Yoon選手は、Twitterで性的ハラスメントとなるツイートを日常的に受け続け、2013年にTwitterアカウントを閉鎖した。
同年にe-Sportsの世界から引退。
e-Sportsの配信分野では、これまでにTwitchが多大な貢献を果たしてきました。
ただ、そのTwitchこそがハラスメントの温床となっていることが、現状のe-Sports界におけるハラスメントの特徴の一つでもあります。
ハラスメントの発言が平然と繰り返されるTwitchのチャットは、見るに堪えない様相を呈することが多々あります。
あるプロ選手が、「Twitchのチャットのハラスメントは文化だ」と皮肉まじりに発言したこともあります。
ハラスメント・チャットに対するTwitchの対策ガイドラインは「まず無視すること」であるそうですが、これはハラスメントの抑止力としては全く機能しないものだと思われます。
度を越した発言者に対しては、当該の配信から10分間の強制退場を処分として下すそうですが、これも十分な抑止力ではありません。
「10分後に戻る」「新たにアカウントを作成する」「他の配信に移る」などのアクションを起こすことで、ハラスメントの続行が可能となるからです。
e-Sportsの規模と、e-SportsにおけるTwitchの役割が大きくなった現在では、Twitchのハラスメント対策の甘さは是正される必要があります。
Polygonの特集記事のインタビューで、Twitchの広報担当者の応答が掲載されました。
「ただ自らの楽しみのためだけに、あるいは多数のコメントの中で目立つためだけに、不快な発言を繰り返すユーザーが、常に、どこのチャットにも出現している」
「彼らは、人種、性別、年齢、見た目、配信者の過去の言動、配信者が手にしているペンすらも対象として、目に映った何もかもをハラスメントを行うための材料とする」
ゲームの観戦を楽しむのではなく、不快な発言内容でチャットが盛り上がることを楽しむユーザー層が、Twitchには多数存在していると公式に認められています。
もちろん、e-Sports界にとっては害悪となる、ただちに排除および抑制されねばならない存在です。
今回のTwitchにおける人種差別問題がとても重く受け止められていることが、広報担当者から打ち明けられたようです。
そして、
「Twitchでハラスメントに及んだユーザーの取り締まりを、配信の運営者に任せっきりにする現在の規約を改定すること」
「Twitchからハラスメントを追放させる新たな仕組みを早急に開発すること」
のそれぞれが約束されました。
続く第5回では、e-Sportsにおけるハラスメントの対策について掲載します。
- Polygon – Racism, Hearthstone and Twitch
- The Daily Dot – The effects of esports’ sizable gender gap