ありがたく、幸いなことに、私は日本の公開日に先駆けて映画「ウォークラフト」を事前に鑑賞する機会をいただきました。
Warcraftの経験者として、観た感想を簡潔に言い表すと、「ガッカリすることがなかったゲームの映画化」です。
「ウォークラフト」の製作を伝え聞いたときに、真っ先に頭によぎったことは、これまで多くのゲーム映画化作品が原作ファンを失望させていたことです。
「ゲームの映画化は危険」と広く認知されてしまうほどに、ゲームの映画化が満足された例は少なく、成功が難しいジャンルというイメージが植え付けられていました。
ゲームの映画化が「ガッカリ」される大きな要因の一つは、そのゲームに慣れ親しんだファンを置き去りにすることだと思います。
世界観やキャラクターの言動などが、求められてもいないのに原作からかけ離れると、一番の支持層であるはずのファンが「そうじゃない」と感じて盛り上がれなくなります。
「制作側が表現したい独自のストーリーを無理に押し付けている」
「見せつけたい映像技術ばかりにこだわっている」
「ゲームを知らない一般層への配慮が強すぎる」
以上の意見などを、置き去りにされた原作ファンは、失望した理由として挙げているようです。
映画「ウォークラフト」は、原作ファンが歓喜した作品です。
制作陣やキャストは、原作のWarcraftの世界観を尊重しており、それを忠実に再現することにこだわりました。
目に飛び込んでくる高いクオリティの映像は、ファンが観たかったWarcraftの実写化そのものです。
ファンは、置き去りにされることなく、自分たちが慣れ親しんだ原作と違和感がない映像に没頭することができます。
連載の第1回で記述した「Warcraftの経験者は満足できる」という前評判に偽りはなかったと感じました。
ただ一方で、「ファンでなければ置き去りにされる」という前評判も、事実なのではないだろうかと感じました。
原作ファンに対する訴求力が強い反面、世界観の基礎知識や特有の用語を知らない鑑賞者が、ストーリーを把握しきれるのだろうかと、観終わった後で心配に思いました。
なぜならば、独特の舞台設定があるにもかかわらず、エピソードがやや「詰め込みすぎ」気味である(※1)からです。
予備知識がある人にとっては、間延びしない適切なペースの展開となるでしょう。
しかし、そうでなければ、ついて行けなくなる要因になり得ます。
「デュロタンの子供」や「オークの決闘」などの不明な要素(※2)が、説明もなしに次から次へと現れることは、予備知識がない人にはストレスを与えかねません。
(※1. それでも合計40分に達するシーンの数々を泣く泣くカットしたそうです) (※2. それぞれは存在意義を知っていると感慨深い場面となります)
だからこそ、少しでも「ウォークラフト」が満足に理解されることを望んで、今回の鑑賞ガイドを連載することを決心した次第です。
Warcraftは、海外においては大変に有名なゲームであるため、予備知識がある人は大勢います。
しかしながら、日本における知名度はそれほど高くなく、このような基礎から徹底的に解説するガイドがあってもよいのではないだろうかと思いました。
本作品の「売り」の一つであり、実際に評価が高かったのは、全編を隅々まで彩る視覚効果です。
私は日常的に映画作品を観ていないために、最近の他作品と比較して評価することはできませんが、十二分に満足できる美麗なコンピューター・グラフィックスであったと感じました。
とりわけ、実写とCGとを融合する映像技術は目を見張るものがあります。
人間以外の種族――とりわけオーク種族――が、リアルに再現されて活動する場面には、ダイナミックな臨場感があります。
ファンタジー世界という舞台設定における、スペクタクルな展開も見どころです。
剣と魔法が、人間と異種族が、当然のように共存している架空の世界がリアルに表現されます。
その世界で、魔法が飛び交い、異種族との大抗争が発生する、幻想的で迫力あるシーンを楽しむことができます。
感想の項でも述べましたが、Warcraftの世界が忠実に再現されていることも大きな見どころです。
Warcraftやハースストーンのプレイヤーの方々には自信をもっておすすめできる作品です。
海外においては、Warcraftのファンである鑑賞者は大多数が「満足した」と評したことも、映画「ウォークラフト」の特徴です。
監督のダンカン・ジョーンズ氏は、「ウォークラフト」を3部作に展開したいという希望を語ったそうです。
確かに、次回作が存在し得ることを含ませるシーンが、本編中にいくつかありました。
ファンは早くも、「Warcraft 1」「Warcraft 2」「Warcraft 3」が、3部作のそれぞれの原作に該当するのだろうと予想しています。
もしその通りであれば、次回作では人間とオーク以外の種族やドラゴンが本格的に登場し、さらにその次回作では、いよいよアーサス王子がリッチ・キングとなる過程が描かれることになります。
私は、この「ウォークラフト」なみのクオリティによる2作目と3作目を、非常に観たいと個人的に望んでいます。
それが成されるかどうかは、もちろん興行成績の良し悪しが大きく影響するのだと思います。
「ウォークラフト」の次回作が世界で、そして日本国内で上映されることになるためにも、多くの方々が作品に興味を持って劇場に足を運んでいただければと、身勝手ながら願っております。
「ウォークラフト」は、日本国内では東宝東和株式会社の配給により、7月1日(金)に全国の劇場で公開されます。
以下のリンク先より、劇場の一覧を参照できます。
http://warcraft-movie.jp/