日本時間の10月27日未明に、いよいよハースストーン選手権の決勝大会が始まりました。
各地域のシーズン予選を勝ち抜いた16名が出場する、第3代目の世界王者を決定する公式世界大会です。
そのタイミングで、来年度の選手権の変更点も併せて発表されました。
その中で主要な事項を以下に列挙します。
それぞれの詳細情報を以下に掲載します。
決勝大会は「BlizzCon」以外で開催へ
2017年度から、各シーズン選手権の日程は、カードセットのリリースと連動させることが決定されました。
カードセットがリリースされると、次にカードセットがリリースされるまでに、1つのシーズン選手権が開催されるよう明確に定められます。
選手権決勝大会への進出者を決める、季節ごとの選手権大会です。
2016年度は冬季、春季、夏季の各シーズン選手権が、アメリカ、ヨーロッパ、中国、アジア太平洋の各地域でそれぞれ開催されました。
新しいカードセットがもたらす新鮮な対戦環境を、さらに際立たせることが目的です。
「マジック・ザ・ギャザリング」のプロツアーと似たような開催方式が採用されることになります。
ちなみに2016年度においては、「旧神のささやき」「スタンダード・フォーマット」のリリース前に冬季選手権が開催され、「ワン・ナイト・イン・カラザン」が最新である環境において夏季選手権、最終選抜大会、決勝大会が開催され、次の新拡張セットが最新である環境においては何の選手権も開催されません。
それに伴い、選手権の決勝大会は「BlizzCon」で開催されなくなることも発表されました。
例年「BlizzCon」は、新しいカードセットの発表の場となります。
そのカードセットがもたらす新しい対戦環境において、一度選手権大会が開催される必要があるため、年度ごとの「スタンダード」を締めくくる決勝大会の場は「BlizzCon」ではなくなります。
来年度の選手権の決勝大会は、来年度の「スタンダード」が終わる直前に開催されることが併せて発表されました。
その時期は2018年の初頭であるとのことです。
「マジック・ザ・ギャザリング」に倣(なら)い、カードセットのリリースごとに世界大会を開くという取り決めは、観戦者にとってもプロモーション的にも利点がある、理にかなった決定だとコミュニティから評価されています。
最近では、ハースストーンを含めたブリザード・ゲームの世界大会決勝が、「BlizzCon」の開催期間の2日では消化しきれなくなっていました。
そのために、グループ・ステージを「BlizzCon」開催前の予備期間に消化することで対応していましたが、今年はその予備期間が1週間にも及んでいます。
この世界大会という大掛かりなミッションが、ただでさえ多忙となる「BlizzCon」の開催直前に広がりを見せていたことも、要因の一つであったかもしれません。
私は、決勝大会と新カードセットの発表という大きなイベントが2つ同時に「BlizzCon」で行われるのは、注目度が高い話題が重なることになり、もったいないと個人的に感じていました。
実際に「リーグ・オブ・エクスプローラー」のリリースから「スタンダード・フォーマット」導入の発表までの3か月間は、ハースストーンの話題が乏しく、間延びした感じを抱かせました。
大きなイベントを分散させる今回の決定は、ハースストーンの話題を継続的に提供することに一役買うものと思われます。
ただ一方で、恒例となっていた「BlizzCon」における決勝大会の開催がなくなることについては、残念だと表明する人が少なくありません。
やはり、「BlizzCon」といえば「世界王者が誕生する場」であるという認識が定着しているようです。
「BlizzConを目指す」というスローガンは、「予選を突破する」ことの代名詞ではなくなります。
「BlizzCon」という巨大な存在から離れることになったハースストーンの世界選手権は、「BlizzConのイベントだから観てみよう」という観客層を失うことになります。
「BlizzCon」から独立した後の世界選手権は、より一層魅力的なコンテンツになることが求められると思います。
なお、今後の「BlizzCon」においては、世界選手権に代わるハースストーンの競技大会を新たに開催するとのことです。
そしてそれは、バーチャル・チケットを購入せねば視聴できない有料コンテンツとなる可能性もあります。
シーズン予選大会がシーズン・プレーオフに
アメリカ地域、ヨーロッパ地域、中国地域、アジア太平洋地域に分別して開催されていたシーズン選手権が、全地域を統合した国際大会になります。
その名も「グローバル・シーズン選手権」に変更されます。
また、シーズン選手権の出場者を決定する各地域のシーズン予選が、「シーズン・プレーオフ」という名称の大会に置き換えられます。
アメリカ、ヨーロッパ、中国、アジア太平洋の各地域のシーズン・プレーオフで上位4名となった選手が、それぞれグローバル・シーズン選手権へ進出する仕様になります。
すなわち、来年度の各シーズン選手権は、シーズン・プレーオフを勝ち抜いたアメリカ地域代表4名、ヨーロッパ地域代表4名、中国地域代表4名、アジア太平洋地域4名の16名で争われることになります。
日本シーズン選手権予選 優勝 → アジア太平洋地域シーズン選手権(8名) 優勝 → 決勝大会(16名)
※2017年度
アジア太平洋地域シーズン・プレイオフ ベスト4 → グローバル・シーズン選手権(16名) → 決勝大会
この変更点については不明瞭な部分が多く、今後に発表されるであろう追加の情報が判明しないと、全体像が把握しにくい状況にあります。
現時点でコミュニティから問われている疑問を以下に列挙します。
- 国際大会となったグローバル・シーズン選手権から何名が世界選手権(決勝大会)に進出するのか。
- 世界選手権(決勝大会)に出場する選手の、地域ごとの参加枠数を撤廃するのか(例えば世界選手権に出場する全選手の出身地域がアメリカになる可能性もあるのか)。
- 各地域のシーズン・プレーオフには何名が出場するのか。
- 各国のシーズン選手権予選(日本ではmattun、Jako、GundamFlameの各選手が優勝した大会)はなくなるのか。
- どのようにして各地域のシーズン・プレーオフの出場者を決定するのか。
なお、グローバル・シーズン選手権は、様々な国が開催地として選ばれることになるとのことです。
例えば日本が開催地となった場合は、シーズン・プレーオフを勝ち抜いた選手たちが世界各国から日本に集まり、日本で対戦することになります。
シーズン選手権の出場者を決定するシーズン・プレーオフには、スイス式トーナメントが導入されると発表されました。
1回負けたら退場となるシングル・エリミネーションのトーナメント方式とは異なり、スイス式は、1回負けても同じ戦績の選手との対戦を続行します。
運の要素が影響するカードゲームにおいては、広く採用されているトーナメント方式です。
なぜならば、一発勝負の対戦で運の要素によって選手が敗退する事態が相次ぐと、選手の実力を測りにくくなってしまうからです。
また、一般者向けの大会においては、各参加者が1回戦で敗退したとしても、その後も大会に引き続き参加して楽しめるという利点をもたらします。
一度敗退した選手でも最後まで対戦を繰り返すため、最終順位に運の要素が関わる割合が小さくなり、参加者や観戦者が途中で離脱することが少なくなります。
スイス式の唯一のデメリットは、運営側が煩雑な管理を強いられることです。
1回戦ごとに、各選手の勝敗に応じて、次戦のセッティングを素早く正確に済ませねばなりません。
対戦数が増えることに比例して、集計作業も多量となります。
そのために、ローカルな大会や個人主催のイベントでは採用しづらいトーナメント方式と言えます。
その管理を担うことを、ハースストーンの運営サイドが発表しました。
このスイス式のトーナメント方式の大々的な採用は、コミュニティの大多数から肯定的なフィードバックを得ているようです。
世界選手権に出場するためには、とにかくもポイントを獲得してポイント・ランキングで上位に入らねばなりません。
ポイントは、月々のランク戦や公式トーナメントにおいて優秀な成績を収めることで獲得できます。
そのポイントの発生量に調整が入ることが予告されました。
「より多くのプレイヤーが参加できるよう、ランク戦とトーナメントのポイント量がより均等になる」とのことですが、具体的にいくつのポイントがそれぞれから発生するのかはまだ発表されていません。
ハースストーン世界選手権のポイント・システムに関しては、依然として改善の余地が多分にあるとコミュニティから指摘され続けています。
ランク戦のシステムの議論とも関連することですが、「シーズンの閉幕間際におけるレジェンド・ランクの上位争いは不毛である」として改善が求められています。
このわずかな期間中における「駆け込み対戦」の戦績によって、ポイントの獲得量が1から15まで変動するのです。
同じ地域にいても、居住地によっては、ポイントが発生する大会への参加のしやすさに大きな差異が生じ、ポイントの獲得機会に不公平が生じているという声も挙がっています。
世界選手権への出場を目指しているプレイヤーの多くを納得させることができる仕様になるかどうかに、注目が集まります。
1年目は総額25万ドルであった決勝大会の賞金は、3年目の今年度は100万ドルにまで膨らみました。
来年度の決勝大会の賞金総額も100万ドルで変わりありませんが、その前に開催されるグローバル・シーズン選手権には1大会ごとに総額25万ドルの賞金が、シーズン・プレーオフには1大会ごとに総額2万ドル以上の賞金が用意されると発表されました。
合計で200万ドル以上になると公式に宣言されています。
今年度の選手権では、決勝大会の賞金総額100万ドルに、計9回のシーズン選手権に各10万ドルずつが用意され、合計190万ドルに達していました。
その規模が維持され、さらには微増しました。
来年度はシーズン・プレーオフにも賞金を用意することから、より多くの選手に賞金を配当できることになるとアピールされています。
ハースストーン・グローバルゲームは、公式の国際リーグ戦です。
地域ではなく国別のチームが結成され、各国の代表チームが毎週リーグ戦に臨んで順位を競うコンテンツです。
各代表チームは4人で構成されます。
それぞれの国における最多ポイント獲得者1名と、人気投票で選出された3名という内訳です。
世界選手権とは完全に分離されるコンテンツであるのか、賞金総額がどれほどになるのかについて、関心が寄せられている模様です。
ハースストーン・インビテーショナルは、公式の招待制の大会です。
ハースストーンの有名プレイヤーや、各種大会の勝者を招いて、様々な対戦フォーマットやルールを採用する、エンタメ性が高いコンテンツです。
観戦用の番組の配信コンテンツを強化し、Twitchを始めとした配信サービスにおけるハースストーンの地位を高める狙いがあるものと思われます。
今年の10月初旬からは、Twitchの新サービス「Twitch Prime」と連動した公式の招待制イベントである「Hearthstone Priest Extravaganza」が始まっています。