続いてインフィニット・ドラゴンは、悪魔に操られたアゼロスのガーディアンのメディヴが敢行(かんこう)した、「ダークポータルの開通」を妨害しようとしました。
この事件によって引き起こされたオークの侵略はアゼロスに甚大な被害と損失をもたらしたために、それを妨害することは、一見すると旧神の復活の助力にはつながらない印象を受けます。
しかしながら、その戦乱によってアゼロスの社会が一体となり、結果として強固なアライアンス陣営が組織されたことも事実です。
強敵であるアライアンス軍およびホード軍がアゼロスに現存する今の環境よりも、アゼロス中が平和ボケのまま恐れるに足りない環境である方が都合がよい――そう考えたインフィニット・ドラゴンは、メディヴのオーク召喚による大戦乱の発生を、アゼロスの歴史から消し去ることを画策しました。
この歴史の不当な操作を阻むために、ダークポータルが発生する過去の時点にプレイヤーたちは送り込まれ、そこでメディヴを暗殺しようとするテンポラスらと戦うことになります。
そしてプレイヤーたちは、おびただしい数のアゼロスの戦死者を招いた「ダークポータルの開通」を史実通りに実現させるべく、悪魔の手先であったメディヴを皮肉にも助けることになるのです――
そしてインフィニット・ドラゴンは、アンデッド化する疫病に冒された街をアーサス王子が焼き払おうとした、「ストラトホルムの虐殺」の現場にもタイム・ワープして、それを妨害しようとしました。
インフィニット・ドラゴンがこの事件に干渉した理由は、正確には明らかになっていません。
ただ、この時点でアーサスが抹殺されてストラトホルムの総アンデッド化が実現していたならば、アンデッドはリッチキングではなく悪魔の軍団に所属したまま、大繁殖を継続させてホードとアライアンスの両軍の崩壊を招いていたことでしょう。
さらには、後にノースレンド大陸を拠点としたアーサスとネルビアンが、ノースレンドに封印されていた旧神のヨグ=サロンの勢力と衝突し、ヨグ=サロンの復活の進行を遅らせることもありませんでした。
過去のストラトホルムに派遣されたプレイヤーたちは、ウーサーとジェイナからも猛反対された焼き討ちによる虐殺を史実通りに遂行させて、アーサスをリッチキングに導く役割を果たすことになるのです――
なお、「ハイジャル山の戦い」については、これもインフィニット・ドラゴンによる干渉が存在するというコンセプトが当初にはありましたが、開発陣はそのストーリーを撤回させています。
「Warcraft 3」および第三次大戦のフィナーレにあたる、有名なアーキモンドとの戦闘を、とにかくも「World of Warcraft」の舞台でプレイヤーに体験してもらいたいという思いから、ストーリーが未整備のままであっても制作が遂げられたコンテンツなのだと説明されました。
結局「ハイジャル山の戦い」は、インフィニット・ドラゴンによる不当な干渉と関連がない事件であることが認められたために、なぜプレイヤーたちが過去のハイジャル山の歴史を保全せねばならなかったのかが不明になりました。
旧神復活のためにアゼロス史のタイムラインを奔走(ほんそう)しているインフィニット・ドラゴンのリーダーが、ムロゾンド(Murozond)です。
旧神に支配されたバージョンのノズドルム――現在のブロンズ・ドラゴンのリーダー――であり、同じく旧神配下に変貌したインフィニット・ドラゴンを、以前のブロンズ・ドラゴン時代と同様に率いています。
ノズドルムの派生版となるキャラクターであるがゆえに、ハースストーンに登場したムロゾンドは、ノズドルムと似た能力を有しています。
ちなみにムロゾンド(Murozond)は、ノズドルム(Nozdormu)の名前のアルファベット文字を並べ替えて構成した名前です。
プレイヤーたちは、アゼロスに降臨したデスウィングの討伐に必要なドラゴンソウルを復活させるために、異なる時系列からそれを妨害しているムロゾンドを倒す必要がありました。
ムロゾンドが討伐されると、息絶えたばかりのムロゾンドの姿を見据えたノズドルムは、狂気に陥る運命にある未来の自分自身について複雑な思いを巡らせました。
やがてデスウィングがスロールたちによって滅ぼされると、デスウィングがアゼロス全土の荒廃を成し遂げたバージョンのタイムラインが、アゼロス史の時系列から取り除かれました。
ノズドルムが心配していた自身の「ムロゾンド化」は、その取り除かれたアゼロス荒廃バージョンのタイムラインにおいてのみ実現されるために、ムロゾンドは二度と発生しないものと現在のところは目されています。