昨年末のバランス調整に引き続いて、新たなカードの修正が2月6日に実施されることが先日に発表されました。
騒然とするコミュニティに対して、ゲーム・デザイナーであるディーン・アヤラ(Dean Ayala)氏は、Redditのフォーラムやツイッターで複数のフィードバックに対して応答しました。
また、ハースストーンのリリース当初から連載が続いているポッドキャスト「The Angry Chicken」に、ゲーム・デザイナーであるピーター・ウェイレン(Peter Whalen)氏が出演して、その配信中にバランス調整の見解を述べました。
今回は、それらの内容のまとめを掲載します。
両氏の経歴(※クリックで開く)
2011年07月: テスト・アナリスト
2014年06月: アソシエイト・ゲーム・デザイナー
2016年03月: ゲーム・デザイナー
2018年02月: シニア・ゲーム・デザイナー
現在はシニア・ゲーム・デザイナーとして、カードセットのデザインのファイナライズ(最終調整)を手掛ける。
データを有効的に活用する理論派であり、毎月にレジェンドの高ランク帯で実際に対戦しては、その経験をカードの能力の調整に役立てている。
2008年: 卒業
【Elysium Digital, LLC】
2008年07月: コンピューター・サイエンティスト
【ジョージア工科大学】
2009年09月: 大学院生
2014年05月: 卒業
【Amazon】
2014年06月: オペレーションズ・リサーチ・サイエンティスト
【Blizzard Entertainment】
2015年06月: シニア・ゲーム・デザイナー
プレゼンテーションの際に、快活かつ情熱的な語り口で発言してきたことによって、コミュニティから多大な人気を博す。
今なお根強い人気を誇るローグライクRPGの「Dream Quest」を制作した実績があり、その経験をもとに同氏がデザインした「コボルトと秘宝の迷宮: ダンジョン攻略」は、大変高い評価を受けるコンテンツとなっている。
調整が実施された後でもミッドレンジ・ハンターの流行は続くだろう。
- ぜひ、そうなってほしい――ハンターのアーキタイプや、修正したカードを、完全に排除することが今回の調整の目的ではないのだから。
私たちがバランス調整を施すときには、現在の環境に注目するよりも、調整後にどのようなゲームとなるのかを理解しようと努めることに重きを置く。 - 統計的に秘策ハンターは強度も人気も最大級に高かったので、その独走を抑止することも今回の調整の目的。
「ワイルド」においても、強度を増し続ける恐れがある秘策関連のカードを変更することは、長期的に考えてもマイナス面がないように感じられた。
もしバランス調整のゆくえが思い通りの結果にならなかったら、弱体化を元に戻すことは検討するか?
- もちろん。
修正対象を「栄誉の殿堂」に移して「ワイルド」専用にしなかった理由は?
- 私たちが普段考えている「基本」と「クラシック」の弱体化の対象基準は、「健常かつ各クラスのメカニクスやフレーバーにフィットする」カードでありながら、「少し強力過ぎたり新拡張のデザインを制約する」カードであること。
例えば、野生の繁茂はドルイドというクラスの特徴を十分に物語る存在であり、これを残しておきたいがためにパワー・レベルを落とす選択をした。 - 「栄誉の殿堂」入りは、そのカードがクラスを適切に表現できていない場合に発生する。
もし癒しの雨のようなカードがハンターの「基本」セットにあったならば、それに対しては弱体化ではなく「栄誉の殿堂」入りの方を選択するだろう――ハンターは強力な回復呪文を活用すべきクラスではないからね。 - このようなガイドラインに沿って、将来も「基本」「クラシック」の変更が起こるものと予測している。
何の前触れもなく唐突に弱体化を実行するのはなぜか?
これでは安心してカードを作成することができない。
- アナウンスに関して言えば、適切な猶予期間がどれほどであるべきかについて、私は断定できない。
公式ブログに載せるメッセージをあれこれ考えるのに一週間程度かかり、それから多くの異なる地域で同時に発表するための翻訳が必要となる。 - そうであるとしても、今回の弱体化は2月6日までは実行されない。
奇数パラディンが明らかに問題なのに、なぜコントロール・パラディンおよび偶数パラディンの排除を目標とするのか?
- 短期的な事項の改善も目標の一部ではありながらも、長期的な観点からゲームを改善することこそが一番の目標。
- ゲーム・バランスに目を向けると、現時点で問題を引き起こしているパラディンのアーキタイプは何もないと考えている。
そして現環境における偶数パラディンとコントロール系のパラディンは十分に強く、パワー・レベルを何とか維持してプレイが継続されるものと思われる。
奇数パラディンもまだまだ強いが、問題視されるほどではない。
バクとゲンこそがデザインを大いに制約している存在だ。
今やマナコスト上昇の弱体化は、常にこの2体が関係してくる。
- 奇数パラディンの存在と、平等をコスト3にしなかったことには何の関連性もない。
もし、コスト3に修正することによって、平等がパラディンの全てのアーキタイプへ自動的に採用されることなく、それでいて短期的にはいくつかのアーキタイプ――例えば奇数パラディン――で採用される見通しであったならば、私たちはそれを実行したはずだ。 - いつの時代のどのアーキタイプにも用いられるような高い強度を持つ「基本」「クラシック」のカードは、メタを新鮮にするという目標を大きく阻害する。
平等の場合は、テスト・プレイで3マナにしても、まだその解決には至らなかった。 - 実際には4マナへの変更も当初はしっくりしなかった訳だが、とにかく現在と将来の環境のテスト・プレイでそれを試してみたかった。
その結果として、4マナ版の平等は(現在と将来の)コントロール系のアーキタイプにおいては妥当な選択肢になると感じられ、それでいてアグロ系のデッキでは利用価値が少なくなると感じられた。
このような(一部のアーキタイプからは必要性がなくなるような)性質こそが、我々がほとんどのカードに求めているものであるため、結局4マナ化という修正に至った。
年間サイクルの最終盤という時期に「殿堂入り」ではなく弱体化を選んだ理由は?
平等のようなカードは「殿堂入り」ではなく弱体化させることがすでに決定事項となっているのか?
それと、新規プレイヤーにクラスの特徴をより明確に認識させるために、「基本」セットの再編成――「ワイルド」専用カードのいくつかを「基本」に組み入れるなど――を行う可能性についても聞きたい。
- 「基本」と「クラシック」の両セットの長期的な運用プランとは、個々のクラスのアイデンティティーを十分に表現させることと、強力なカードを含んでいる有意義なセットであると認識させること。
そのプランを達成するために、クラスのテーマと合わないカードを「殿堂入り」させたり、その穴を埋めるための新カードをデザインしたり、あるいは強力すぎて多用されるカードの強度を調整する。 - クラス専用カードは、全てのクラスと比べてそれぞれパワー・レベルが同等となるべきであり、なおかつ、あらゆるデッキで永遠に使われるような超強力なカードがたくさん含まれるべきではない。
これらの修正はとても健全的であり、メタを改革する良い手段だと思う。
あなたが解説した内容には大変納得がいくし、このバランス調整が実施された後のプレイを心待ちにしている。
それと、誠実なコミュニケーションに感謝している。
- こうしてフォーラムで書き表していると、延々とカードを修正することは必ずしも素晴らしいとは感じられないことがわかる。
修正作業はゲームの全体的な方向性をプラスに導くものと思うのだが、それをハースストーンと作用させることがどれほど難しいのかを、私たちは正確に把握せねばならない。 - 長期間にわたってプレイヤーが遅れを取らないようにする解決策の一つは、極めて強力で、かつ永遠にほぼ全てのデッキで採用されるようなカードを提供すること。
しかしながら、それは新しい拡張セットが与えるインパクトを弱めるために、健全な解決策ではないと思っている。 - そうではなく、新しい資産をプレイヤーが入手できるような方法が模索され続けるべきだ。
私たちは、クエストの報酬を増やしたり、コレクションのレジェンド重複を回避させたり、真夏の炎祭りなどのイベントを開催するなどして、それを達成してきた。
このような取り組みは今後も積極的に継続する予定である。
方針の解説やテスト・プレイの実施に感謝している。
デスナイト・レクサーの弱体化について思うところは?
- 実際に私はデスナイト・レクサーを好んでいるし、多くの人々のお気に入りカードでもある。
とはいえ、もうローテーション・アウトを迎えることについても喜ばしく思っているし、近い将来に同様のハンター・カードを作ることもないだろう。 - 「そのクラスが普段しないようなことを実現させる」――これは、エキサイティングなカードを作ろうとするときに陥りやすい罠だ。
確かにそれはエキサイティングなカードとなるだろうが、そのクラスのアイデンティティーが失われ始めると、それは気分を害する存在に変わってしまう。
そして、一般的にはハンターの特徴ではない、多様な回復能力と終盤の戦闘継続能力をデスナイト・レクサーは提供したのだ。 - 設計を開始する時期には、過去に定めた規則に陥ることで、その設計に面白くなくなるような変更を施してしまいがちだ。
デスナイト・レクサーのデザインに関して言及すると、クラスのアイデンティティーに多彩なバリューを盛り込もうとしていたのだと思う。
しかし、その時点では「コントロール・ハンターのオール・イン・ワン」となるカードの優秀さを過小評価しており、なおかつそのテスト・プレイがあまりにも楽しかったので、そのままデザインを押し進めてしまった。 - ゲーム・デザインに厳密なルールなどなく、その究極の目標はプレイヤーにゲームを楽しくプレイしてもらうこと。
ゲーム・デザインの面でデスナイト・レクサーからは学ぶところがいくつかあるが、それはデスナイト・レクサーのようなカードを二度と作らないという教訓ではないのだと思う。
「ワイルド」環境に配慮してデスナイト・レクサーのコストを高める調整は検討するか?
- 個人的な意見ではあるが、デスナイト・レクサーが「ワイルド」で問題視されているとは思っていない。
「ワイルド」のゲーム・プレイにおいて多大なネガティブ要素であると感じたら調整を検討するが、現時点では議論の対象になっていない。
ローテーションの直前になぜエメラルドの小呪文石を弱体化するのか?
現在最高のハンター・デッキは用いていないし、これを用いる呪文ハンターは最高のハンター・デッキを抑制する役割を持っていた。
- 弱体化が及ぼす副作用と、現環境に何が起こり得るのかということについて、たくさん考えてきた。
- 統計的には、秘策ハンターが中程度の差で2位以下を離す最高のデッキであり、これは今後も成長を続ける見込みであった。
人気度が高まり、使用率も極めて高かった。
小呪文石のコスト6化は現在のメタに対する正しい処置なのだが、それでも秘策と秘策関連のカードが強化され続けることによって、「ワイルド」環境における秘策ハンターの地位は向上するだろう。
今回の弱体化は、バランス調整がより頻繁に実施されることになる予兆であるのか?
「スタンダード」のローテーションに直接関係するものであるのか?
- 永遠に採用され続けるようなカードを「スタンダード」と「基本」セットから排除するという目標に大きく関係している。
既存プレイヤーを犠牲にして、新規プレイヤーのための環境を整備し続けることは、自分のプレイ意欲を損なう。
- 一般的には、古いストラテジーよりも新しいストラテジーのプレイに意欲的である既存のプレイヤーの方が、「基本」と「クラシック」の変更の恩恵を受けると思う。