パッチ「15.2」が唐突に発表されました。
このパッチにおける修正対象の一つとなった能力が発見(Discover)です。
その変更内容は「クラス・ボーナスが適用されなくなった」と公式に説明されています。
修正はもうすでに適用済みであり、ゲームに小さくない影響を及ぼしています。
にもかかわらず、公式の説明文だけでは何がどう変化したのかよくわからない――そうとまどう方も多いのではないかと思われます。
そこで今回は、発見能力の仕様変更に関する詳細について解説します。
発見能力は3枚のカードをランダムに提示します。
提示対象に当選するカードは、条件に合致した中立のカードと自分のクラス専用カードの中からランダムに選ばれます。
そして発見による提示が行われる際に、クラス専用カードにはそれぞれ、中立カード1枚の4倍分の当選確率が設定されていました。
この内部設定が「発見能力のクラス・ボーナス」という部分に該当するのです。
ウォリアーの発見カードであるオメガ・アセンブリを例に挙げてみます。
現在の「スタンダード・フォーマット」の対戦ルールにおいてプレイされたオメガ・アセンブリは、35種類の中立のメカ・ミニオンと9種類のウォリアー専用のメカ・ミニオンを発見の対象とし、その全44種類の中からランダムな3枚を提示します。
ただ、クラス・ボーナスが適用される場合には、ウォリアーのメカ・ミニオンのカードは1種類につき4枚分の当選枠が設けられることになります。
したがってオメガ・アセンブリは、実質的には「計35枚分の中立メカと計36枚分のウォリアー・メカ」というカード・プールの中から提示対象を選んでいたという訳なのです。
このケースにおいては、特定の1種類の中立メカが提示される確率は4.32%、特定の1種類のウォリアー・メカが提示される確率は16.52%、ウォリアー・メカが提示される平均枚数は3枚中1.49枚、ウォリアー・メカが1枚以上提示される確率は88.55%となります。
クラス専用カードの方が圧倒的に種類が少ないのに、そうとは感じさせないほどに発見でクラス専用カードがよく提示されるのは、この隠れた仕様のためでした。
クラス・ボーナスが適用されない、本日からのパッチ「15.2」以降の対戦環境におけるオメガ・アセンブリは、単純に「計35枚分の中立メカと計9枚分のウォリアー・メカ」というカード・プールの中からフラットにランダムな3枚を提示します。
このケースにおいては、特定の1種類の中立メカが提示される確率は6.82%、特定の1種類のウォリアー・メカが提示される確率も同じく6.82%、ウォリアー・メカが提示される平均枚数は3枚中0.61枚、ウォリアー・メカが1枚以上提示される確率は50.58%となります。
現在の「スタンダード・フォーマット」で発見能力を持つカード全てを、9月11日現在の直近14日間の使用率順(※HSReplay.netのデータに基づく)に掲載します。
狂気の天才ドクター・ブームは選択能力のお届けドローンを利用可能にし、強盗王トグワグルは選択能力のザログの王冠を利用可能にするので、それぞれも一緒に掲載しています。
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発見対象カード | 使用率 (%) | カード名 | クラス | 能力 |
---|---|---|---|---|
クラス専用のみ | 11.7 | ヴァルペラの悪党 | 中立 | 雄叫び:呪文1つを発見するかミステリーチャンスに賭ける。 |
クラス専用と中立 | 9.3 | 怯える下っ端 | ウォリアー | 挑発、雄叫び:挑発を持つミニオン1体を発見する。 |
クラス専用のみ | 8.6 | 有意義な探検 | ドルイド | 選択カード1枚を発見する。 |
クラス専用のみ | 8.3 | 必中の一矢 | ハンター | ミニオン1体に4ダメージを与える。呪文を1つ発見する。 |
クラス専用と中立 | 7.7 | 文書管理官エリシアーナ | 中立 | 雄叫び:カードを5枚発見する。そのコピー2枚ずつを自分のデッキと置き換える。 |
クラス専用と中立 | 7.2 | 狂気の天才ドクター・ブーム | ウォリアー | [装甲+7] 雄叫び:この対戦中自分のメカは全て急襲を得る。 |
クラス専用と中立 | 6.9 | オメガ・アセンブリ | ウォリアー | メカを1体発見する。自分のマナクリスタルが10個ある場合、3枚の候補全てを入手する。 |
クラス専用のみ | 5.7 | ヘンチ・クランの強盗 | ローグ | 雄叫び:他のクラスの呪文を1つ発見する。 |
クラス専用のみ | 4.7 | 砂漠のサー・フィンレー | パラディン | 雄叫び:自分のデッキに重複するカードがない場合強化版ヒーローパワー1つを発見する。 |
悪の手先のみ | 4.2 | 邪悪な取引 | ウォーロック | 悪の手先1体を発見する。 |
クラス専用のみ | 3.6 | カレクゴス | メイジ | 毎ターン自分が最初に使用する呪文のコストは(0)になる。雄叫び:呪文1つを発見する。 |
クラス専用と中立 | 3.2 | 創造の力 | メイジ | コスト6のミニオン1体を発見しそのコピー2体を召喚する。 |
デッキ内 | 3.2 | トートランの巡礼者 | メイジ | 雄叫び:自分のデッキの呪文のコピーを1枚発見しランダムな対象に対して使用する。 |
クラス専用のみ | 3.1 | 魔力の鍵屋 | メイジ | 雄叫び:秘策を1枚発見する。その秘策を準備する。 |
クラス専用と中立 | 2.4 | 強盗王トグワグル | ローグ | 雄叫び:味方に悪の手先がいる場合、素敵な宝物を1つ選択する。 |
クラス専用のみ | 2.1 | 魔術のタネ | メイジ | コスト(3)以下の呪文を1枚発見する。 |
デッキ内 | 1.6 | ご主人様の呼び出し | ハンター | 自分のデッキのミニオンを1体発見する。3枚の候補が全て獣だった場合3枚全てを引く。 |
クラス専用のみ | 1.6 | 伝書鴉 | メイジ | 雄叫び:メイジのミニオンを1体発見する。 |
クラス専用のみ | 1.1 | 秘密の計画 | ハンター | 秘策を1枚発見する。 |
クラス専用のみ | 1 | 焼き付く幻視 | シャーマン | このターン自分が次に使用する呪文のコストが(3)減る。呪文を1つ発見する。 |
クラス専用と中立 | 0.5 | 黄金スカラベ | 中立 | 雄叫び:コスト4のカード1枚を発見する。 |
クラス専用と中立 | 0.5 | 烈火の儀式 | シャーマン | 雄叫びを持つミニオンを1体発見する。 |
クラス専用のみ | 0.4 | ファイアーツリーの呪術医 | 中立 | 雄叫び:自分の手札にドラゴンがいる場合呪文を1つ発見する。 |
墓地 | 0.3 | 包帯巻き職人 | 中立 | 雄叫び:この対戦で死亡した味方のミニオンを1体発見し、それを自分のデッキに混ぜる。 |
墓地 | 0.3 | 九生あり | ハンター | この対戦で死亡した断末魔を持つ味方のミニオンを1体発見する。さらにその断末魔を発動させる。 |
クラス専用と中立 | 0.3 | 挑戦者あり | パラディン | コスト6のミニオンを1体発見する。それを召喚し、挑発と聖なる盾を付与する。 |
手札内 | 0.3 | マダム・ラズール | プリースト | 雄叫び:相手の手札のコピーを1枚発見する。 |
クラス専用のみ | 0.2 | 魔力ダイナモ | 中立 | 雄叫び:コスト(5)以上の呪文を1枚発見する。 |
クラス専用のみ | 0.2 | クリスタルソングのポータル | ドルイド | ドルイドのミニオン1体を発見する。自分の手札にミニオンがいない場合、3枚の候補全てを入手する。 |
デッキ内 | 0.2 | クローン装置 | プリースト | 相手のデッキのミニオンのコピーを1体発見する。 |
クラス専用のみ | 0.1 | 樹木学者 | ドルイド | 雄叫び:味方に「トレント」がいる場合、呪文を1枚発見する。 |
クラス専用のみ | 0.1 | ブラッドスカルプの戦略家 | ハンター | 雄叫び:自分が武器を装備している場合呪文を1つ発見する。 |
クラス専用のみ | 0.1 | 盗んだナイフ | ローグ | 他のクラスの武器を1つ発見する。 |
クラス専用と中立 | 0.08 | マイラ・ロットスプリング | ローグ | 雄叫び:断末魔を持つミニオンを1体発見する。さらにそのミニオンの断末魔を獲得する。 |
クラス専用と中立 | 0.04 | グルバシの盛り上げ屋 | ローグ | 雄叫び:雄叫びを持つミニオンの1/1のコピーを1体発見する。そのミニオンのコストは(1)になる。 |
クラス専用と中立 | 0.03 | 闇の憑依 | ウォーロック | 味方のキャラクター1体に2ダメージを与える。悪魔を1体発見する。 |
クラス専用と中立 | 0.02 | グリフター | 中立 | 雄叫び:カードを2枚発見する。そのうちランダムな1枚を相手に与える。 |
この中で「発見対象カード」が「クラス専用と中立」である発見カードだけが、今回のパッチによる「クラス・ボーナス排除」の影響を受けることになります。
それらの発見カードは、以前までよりもクラス専用カードを提示することが少なくなり、クラス専用カードを中立カードと同等の確率で提示するようになります。
一般的にはクラス専用カードの方が中立カードよりも高品質であるために、大抵のケースにおいて平均的な強度が弱まることになります。
創造の力のような例外も存在し、これは雄叫びを経由しないコスト6のメイジ・ミニオン(アルカノサウルス、気象学者、遺物学者レノ、時の匠トキ)の直接召喚が弱いプレイになることから、それらの提示確率の減少は強化を意味することになります。
強盗王トグワグルがもたらすザログの王冠も同様であり、コンボと雄叫びがほとんどであるローグ・レジェンドの直接召喚の頻度減少は強化につながります。
なお、偉大なるゼフリスの能力は発見とは異なるメカニズムが採用されているために、今回の発見修正の影響は受けていません。
そして、影響を受けた発見カードの使用率上位はコントロール・ウォリアーの構成カードで占められています。
怯える下っ端は、アルマゲジロと墓所の番兵、そして怯える下っ端自身を提示する確率をそれぞれ21.17%から6.67%に激減させました。
オメガ・アセンブリとお届けドローンについては前述したとおりであり、極めて強力な除去能力を持つオメガ・デバステイターやダイノ・マティックを提示する確率をそれぞれ16.52%から6.82%に減少させています。
文書管理官エリシアーナがウォリアー・カードの発見確率を減らしたことも含めて、コントロール・ウォリアーが抱える全4種の発見能力は明確な弱体化を受けたと言っても過言ではありません。
発見能力を多用しているコントロール・ウォリアーが特別に多大な損害を被る結果となったことについては、とても偶然であるとは考えられないと、多くの人々が指摘しています。
そもそもコントロール・ウォリアーは、最近のパッチ「15.0」におけるバランス調整によって狂気の天才ドクター・ブームのコスト増を課され、開発陣から直接的に弱体化のターゲットとして指定されたばかりです。
にもかかわらずコントロール・ウォリアーは、その後の使用率の下落が限定的であり、弱体化は不十分であると捉えられて、相変わらずメタの中では確固とした役割を保持し続けています。
そして先週末の公式大会「グランド・マスターズ」においては、参加選手の48名中の41名もがウォリアーのデッキを提出し、Ryvius選手を除く40名が発見能力を3種以上用いるコントロール型のウォリアーを持ち込んだのでした。
そのような状況下であるからこそ、いまコントロール・ウォリアーを意図的に抑制するためのバランス調整だったのではないかと広く考えられているのです。
このようなユニークな手法によるアーキタイプの弱体化については一定の評価も見受けられます。
ただし、「今後の発見能力のデザインが阻害される」などの特別な理由が存在していなければ、このタイミングにおける修正は「短期的な問題より長期的な問題の排除が優先」という仕様変更のポリシーの原則には沿っていないようにも感じられます。
それでは一体なぜ、発見能力にもともとクラス・ボーナスが設けられ、そしてクラス専用カードが優遇されていたのでしょうか。
発見能力が初めて登場した「リーグ・オブ・エクスプローラー」セットがリリースされた後に、当時のゲーム・デザイナーを担当していたベン・ブロード(Ben Brode)氏とディーン・アヤラ(Dean Ayala)氏が、その経緯についてIGNのインタビューにおいて返答しています。
- クラス・カードが発見される可能性を大幅に高める措置は、発見のデザインの最終段階において施した。
おそらくは「リーグ・オブ・エクスプローラー」セットの締め切りのわずか数週間前だったと思う。 - 最終デザインの期限が迫る最中にも、特定の発見カードが中立カードばかりを提示する問題に直面していた。
まさに、闘技場のカード・ドラフトのデザインを試行錯誤していたときと同じような悩みを抱えていた訳だ。 - 闘技場のドラフトでも、フラットな確率の仕様では中立カードばかりが提示されていた。
選んだクラスをプレイしている雰囲気をより高めるべく、闘技場のドラフトではクラス・カードが提示される確率が上がるように内部調整を施した。
最終的には、発見能力についても同様の措置を講じることが決定された。
理由を要約すれば「中立だらけではクラスの特色が薄れるから」ということになります。
それでは一体なぜ、その懸念を再び抱くことになるとしても、クラス・ボーナスを排除する決定が今回に下されたのでしょうか。
それについては、残念ながら現時点では公式の見解が伝えられていません。
今後にその経緯が明かされる可能性も十分にあるので、今すぐには「以前と比べて説明不足、コミュニケーション不足」だと断定することはできません。
クラス専用カードの強度が全般的に高すぎることは、その大きな要因の一つになっているのかも知れません。
ともかくクラス・ボーナスの全撤廃、およびクラス・ボーナスの意義を失うことに対する現在の開発陣の評価は、ぜひ伺いたいところです。