今春から「スタンダード・フォーマット」が導入されます。
このルールでプレイする際には、「ナクスラーマスの呪い」と「ゴブリン vs ノーム」のセットに属するカードが使用不可能になります。
それぞれは、ハースストーンで初めてとなるアドベンチャーと拡張セットでした。
リリース前に連日のように発表された「新カード」という追加要素に対して、強烈な印象を抱いた方も少なくないと思われます。
今回は、なごり惜しくも「スタンダード・フォーマット」の舞台では登場しなくなる、思い出深いカードたちを記録として残します。
ニュース – 「スタンダード・フォーマット」の採用が決定
ハースストーンの第1回目の「スタンダード落ち」において注目を集める2大カードです。
それぞれ「最強の大型ミニオン」「最強の中型ミニオン」として、長らく君臨し続けました。
ドクター・ブームは、おそらくは意図的に最強クラスのミニオンとしてデザインされた訳ではなかったのだと思います。
シルヴァナスやティリオンなどとは異なり、原作においてはマイナーである、ただのクエストの討伐対象に過ぎないからです。
なぜか7/7という恵まれたステータス値を与えられ、さらには特徴を表現するためのブームロボを付加されたことによって、中立ミニオンとしてはあるまじき性能の存在となってしまいました。
コスト7で「7/7のミニオン、2体の小型ミニオン、2回の1~4ダメージ」をまとめて提供するというのは、凄まじい場のコントロール能力をもたらすだけでなく、最終兵器ともなり得る内容です。
これを上回る強さのミニオンは登場すべきではないことから、このままハースストーンにおける歴代No.1のミニオンの座を占め続ける可能性があります。
手動操縦のシュレッダーのコンセプトは、発表の段階ではとても興味深い印象を与えました。
「果たして誰が操縦しているのでしょう?」――破壊後にランダムで召喚されるミニオンを、シュレッダーの操縦者として表現したのです。
ただ、4/3という弱くはないステータス値と、ハースストーンにおいては重要性が高いコスト2のミニオンを召喚する能力を与えられたことで、結果として大方の予想をはるかに上回る普及を見せました。
2体が一度に召喚されないこともポイントで、全体攻撃に対するカウンターともなります。
多くのケースで相手に2枚のカードを消費させ、「二度手間」をかけさせる、場の勢力争いにおいて厄介となる存在です。
両者とも、中長期向けの戦法であれば、ほぼ全てのクラスのデッキで用いられるミニオンです。
コスト4のミニオンの中では他の何よりも手動操縦のシュレッダーが、大型ミニオンの中では他の何よりもドクター・ブームが、それぞれデッキの編入候補として最初に選択される傾向にあります。
使用頻度が高くて馴染みある存在となりましたが、今後はこのようなカードが登場すべきではないとも感じさせます。
全てのカードが使用可能である「ワイルド・フォーマット」においては、引き続き常連になると思われます。
続いて、多くのクラスに影響を与えそうであるのが、ディフェンス用のカード群の退場です。
この3種のカードは、速効型の相手の対抗策として、中長期戦向けのデッキにおいて態勢を整える時間を稼ぐ役割を担います。
エサゾンビは、何の追加条件も必要とせずに第1ターンで2/3として登場し、序盤で敵の小型ミニオンを駆逐できる最強のコスト1のミニオンです。
ヘドロゲッパーは、倒されても小型の挑発ミニオンを召喚する「二段構え」の門番として、最も多用されてきた挑発ミニオンです。
ヒールロボは、対象がヒーロー限定でありながらも大きな回復能力を発動し、敵の猛攻やコンボによるフィニッシュから救う存在となったミニオンです。
これらの退場によって、今年にリリースされるカードセットに充分なディフェンス用のカード群がなければ、長期戦用のデッキは衰退してしまうのではないかと懸念されています。
ゲーム・デザイナーのBen Brode氏は、直近のインタビューにおいて、少なくとも回復をもたらす新しいミニオンは次の拡張セットより登場すると予告しています。
「ナクスラーマスの呪い」は、ゾンビやスケルトンなどのアンデッド軍が主役となる舞台です。
「ミニオンの死」がテーマとなり、ミニオンが破壊されることと作用するカードや、断末魔の能力を持つカードが多数登場しました。
「ナクスラーマス」セットの全30種のうち、16種類ものカードが断末魔の能力を備えています。
その中で代表格となったカードの1つがマッドサイエンティストです。
破壊されると秘策カードをデッキから引くだけでなく、それをコストの消費なしにセットするという、序盤戦では膨大なテンポ・アドバンテージをもたらします。
コストが高い秘策を活用するメイジやハンターのデッキにおいては、何よりも優先して編入されるミニオンです。
呪われた蜘蛛は、多くのミッドレンジ向けのデッキで用いられてきた断末魔ミニオンです。
攻撃力は最低ながらも、完全に駆逐するまでには手数が必要となることから、序盤戦において勢力争いの足がかりとなります。
ネルビアンの卵は非常に個性的な断末魔ミニオンで、攻撃できないけれども、破壊されたら4/4を召喚するという強力な断末魔能力を持っています。
自軍のミニオンを強化したり破壊したりすることが得意なウォーロックのデッキで主に愛用されています。
こうしたカード群が「スタンダード・フォーマット」の対象外となり、同フォーマットでは使えなくなります。
今後のカードセットに断末魔を持つミニオンが質量ともに不足していれば、断末魔の能力と作用する掘り起こされたラプターなどは使用率が激減するものと予想されています。
断末魔カードを発見する博物館のキュレーターの能力にも、少なくない影響を与えそうです。
「ナクスラーマスの呪い」の主役がアンデッドならば、「ゴブリン vs ノーム」の主役はメカ種族のミニオンたちでした。
ゴブリンやノームたちが作成したメカニカルなロボットや、それらと作用する能力を持つカードが多数用意されました。
前述した手動操縦のシュレッダーやドクター・ブームも、メカ種族を召喚するミニオンカードです。
これらとともに、「ゴブリン vs ノーム」で登場したキテレツな発明品たちは、一斉にメインの舞台から退場します。
この影響をまともに受けるのが、メカ種族を主軸とするメック・メイジです。
メック・メイジの主要な構成ユニットの大半――コグマスター、スノーチャガー、クモ戦車、ティンカータウンの技術者、ゴブリンのブラストメイジ、シュレッダー、ドクター・ブーム、スペアパーツ――が抜けてしまうのです。
「スタンダード・フォーマット」においては、存続すらできなくなることでしょう。
もう一度メカ種族をテーマとする拡張セットがリリースされなければ、「スタンダード」においてはメック・メイジの復活はないものと予想されています。
同様に、メカ種族を主軸とするメック・シャーマンも終焉を迎えようとしています。
数多くのメカ種族と、回転式ザップ・オ・マティック、パワーメイスを失います。
「ナクスラーマス」セットには、現在でも高い起用率を誇る強力なカードが数多くあります。
アドベンチャーの「ナクスラーマスの呪い」をまず購入することが、これまで初心者へのアドバイスとなっていた理由です。
ロウゼブも強力なカードの一つで、攻守に活躍できる汎用性があるために高い人気を誇りました。
相手の呪文のプレイを封じ、拡張した自軍が逆転されないよう維持したり、逆に相手のコンボの発動を1ターンだけ阻止する防御策としても活用できます。
第5ターンまでに召喚されたコスト4以下のミニオンを駆逐できる、5/5というステータス値も魅力です。
ロウゼブの登場後には、1ターンだけ相手のヒーローパワーのコストを5増やす妨害工作員が登場しました。
呪文のロックだけでも相当に強力であったため、1ターンだけミニオンカードのコストを5増やすカードなどは現れないかもしれません。
「ナクスラーマスの呪い」よりマッドサイエンティストが登場してから、いよいよ本格的にメイジとハンターの秘策が活用され始めました。
当時は秘策を除去できる手段がハンター専用カードの照明弾しかなかったことから、他のクラスにも秘策の対抗手段を用意してほしいという要望が続出しました。
開発陣は、続く拡張セットの「ゴブリン vs ノーム」において、秘策の対抗策となるようなカードを加えることを約束していました。
そのカードこそがケザンのミスティックでした。
「ゴブリン vs ノーム」のリリース後に、ハンター(ミッドレンジ / フェイス)とメイジ(メック / フリーズ)が流行した際には多用されました。
このカードが退場することによって、再びハンター以外のクラスから秘策の対抗手段が失われます。
よって、次の拡張セットでは、高い確率で秘策のカウンターとなる中立ミニオンが用意されるものと思われます。
※ドルイドのデッキから失われる主なカード
ナクスラーマスの亡霊
「グランドトーナメント」の新カードが登場するまでは、ドルイドのデッキの常連となるミニオンでした。
ドルイドは、第1ターンからこれを召喚して早期に大型化させることができます。
また、しのばせたままにして、コンボの総合ダメージを高めることもできます。
現在のドルイドは最強の一角でありながら、主要なカードがほとんど「スタンダード・フォーマット」でも引き続き使用できることが問題視されています。
開発陣もそれを示唆していることから、予告されている基本セットやクラシック・セットの弱体化修正の中に、ドルイド専用カードが含まれる可能性が高くなっています。
※ハンターのデッキから失われる主なカード
ウェブスピナー / グレイブズーカ
序盤戦でプレイできるカードがいくつか使用不能になります。
何よりも大きな損失は、前述したマッドサイエンティストの退場となります。
ただ、他のクラスがエサゾンビやヒールロボなどの防御手段を失うことは、結果的に攻撃的なハンターへ有利をもたらす可能性があります。
※メイジのデッキから失われる主なカード
フレイムキャノン / 不安定なポータル / 複製 / メディヴの残響
効果がランダムながらも大きなテンポをもたらすフレイムキャノンと不安定なポータルが、テンポ重視のメイジのデッキから取り除かれます。
自軍のミニオンのコピーを作成する複製とメディヴの残響が、エコー・メイジとグラインダー・メイジから取り除かれます。
ハンターと同様に、マッドサイエンティストの退場が、多くのメイジのデッキにおける大きな損失となります。
※パラディンのデッキから失われる主なカード
仇討 / シールド・ミニロボ / コグハンマー / 兵役招集 / 兵站将校
最弱のクラスと評されることが少なくなかったパラディンが、突如としてトップ・シーンに返り咲いた要因は、「ゴブリン vs ノーム」で追加されたパラディン専用の新カード群でした。
シールド・ミニロボ、コグハンマー、兵役招集などは、闘技場でも選択されることが多い、汎用性がある強力なカードです。
これらを一度に失うパラディンは、今年の「スタンダード・フォーマット」において先行きが最も懸念されるクラスとなりました。
パラディンの最高の秘策カードである仇討も失うことから、現在の最強の一角であるシークレット・パラディンにも暗雲が漂っています。
※プリーストのデッキから失われる主なカード
ナールの光 / シュリンクマイスター / ヴェレンに選ばれし者 / 闇の教団の使徒 / ヴォルジン / 光爆弾 / デスロード
パラディンに次いで「スタンダード落ち」の影響を大きく受けそうであるのがプリーストです。
コントロール系のプリーストのデッキで長く用いられ続けてきた、ヴェレンに選ばれし者、闇の教団の使徒、デスロードなどが退場します。
また、場をクリアにする全体攻撃の光爆弾を失うことになります。
しかしながら、最近になって除去呪文の埋葬が新たに加わったり、ドラゴン種族を主軸としたコントロール・デッキが代わりとなり得るなど、現時点ではパラディンほど深刻ではないと評されている模様です。
※ローグのデッキから失われる主なカード
ティンカーの刃研ぎ油
一時期に猛威を振るったオイル・ローグのデッキの根幹となる、「オイル」自体が取り除かれます。
前述したとおりに、「ナクスラーマス」セットに属する多くの断末魔ミニオンが退場するため、存続する掘り起こされたラプターの起用率が低下する可能性があります。
※シャーマンのデッキから失われる主なカード
バリバリ
速攻型のデッキでよく用いられるバリバリが「スタンダード落ち」となります。
また、前述したとおりに、多くのメカ種族のミニオンが退場するため、それらを主軸とするメック・シャーマンのデッキが絶滅するものと予想されています。
※ウォーロックのデッキから失われる主なカード
闇爆弾 / インプァクト / ヴォイドコーラー / マルガニス
優秀な攻撃呪文である闇爆弾とインプァクトの両方を失うことは、ウォーロックにとっては痛い損失となりそうです。
悪魔種族と作用するヴォイドコーラーとマルガニスが退場するため、悪魔種族を主体とするデッキの使用率は大きく低下する可能性があると指摘されています。
※ウォリアーのデッキから失われる主なカード
デス・バイト / シールドメイデン
ウォリアーのほぼ全てのデッキで用いられてきたデス・バイトが取り除かれます。
武器自体は(新拡張セットの武器も含めて)代替品が見つかるかもしれませんが、全体1ダメージの能力の損失は様々なシーンで影響を与えそうです。
止めの一撃、苦痛の侍祭、グロマッシュ・ヘルスクリーム、そして何よりパトロン・ウォリアーの根幹であるぐったりガブ呑み亭の常連との作用が失われます。
シールドメイデンの退場は、長期戦向けのコントロール・ウォリアーのデッキに影響を与えます。
小さくない損失ですが、ジャスティサー・トゥルーハートの加入によって痛手が軽減されています。
拡張セット「ゴブリン vs ノーム」がリリースされる際に、特集を組んでまで予告されたのがオーガ種族のミニオンカード群の登場でした。
オーガは、獣やメカのように正式な種族として追加されたのではなく、「50%の確率で指定した対象以外の敵を攻撃する」という能力を発動するタイプのミニオンの代名詞となりました。
コストに比してはステータス値が高く、強くてタフなミニオンなのですが、なかなか思う通りに攻撃が命中しない不安定要素を持つ大型生物です。
やみくもに腕力に任せて破壊しまくるオーガの特徴をよく表した能力でしたが、残念なことに、それを主役とするデッキが流行することは一度もありませんでした。
オーガたちはひっそりと姿を消すことになります。
ただ、流行するか否かにかかわらず、このような実際のキャラクターをうまく表現するカード群は、今後も登場し続けてほしいと願っています。
「BlizzCon 2014」での発表時から、多くの人からウザがられ、そして愛され続けてきた、マジウザ・オ・トロンが退場します。
召喚されてから倒されるまで、一貫して「ハロー!ハロー!」と挨拶を繰り返す、騒々しいメカ・ロボットです。
しかしながら、殺伐とする対戦中の雰囲気を明るくするキャラクター性を持つことから、ハースストーンのマスコット・キャラクターとして扱われてきました。
酒場の喧嘩でヒーローとして登場することもあれば、スマートフォン版のリリース時に実写化されたりもしました。
マジウザ・オ・トロンは、今後も「ワイルド」や闘技場では存続します。
ただ、「スタンダード」の場からはお別れとなることに、寂しさを感じているプレイヤーは少なくない模様です。
そんなマジウザ・オ・トロンに、以下のような親しみを込めた別れの言葉が贈られています。