「スタンダード・フォーマット」が導入されると同時に、基本セットとクラシック・セットのカードが一部修正されます。
10~20枚程度のカードに、弱体化の修正(あるいは内容の変更)が施されることが、開発陣から予告されています。
ニュース – 「スタンダード・フォーマット」の採用が決定
今後に「スタンダード」の切り替えが発生しても、基本セットとクラシック・セットのカードは常に「スタンダード」で使用できます。
その中で、「スタンダード」の対戦環境において永続的に悪影響を与えかねないカードが、修正の対象となります。
今回は、上記の理由によって弱体化されるべきであると、コミュニティから多く指摘されているカードを掲載します。
プロ・アマを問わず、多くのプレイヤーから弱体化を要望されているのが、ドルイドの「野生の咆哮 + 自然の援軍」のコンボです。
最低でも14点――攻撃可能なミニオンが場にいればそれ以上――の体力を1ターンで奪う、ドルイドに勝利をもたらす必殺技です。
これが存在するために、ドルイドは長期にわたって上位のクラスとして君臨し続けてきました。
どちらのカードも「スタンダード」で存在し続けます。
よって、ドルイドはいつまでもこのコンボを主軸に据えて戦うことになるのではないかと、大いに懸念されています。
ミッドレンジ・ドルイドの発案者であり、ドルイド・クラスを得意としているStrifeCro氏は、コンボの存在を以下のように批評しています。
「ほとんどのドルイドのデッキで用いられているコンボであるが、何も楽しいから、華々しいからという理由ではなく、単に勝利するためだけに用いられている」
一般のドルイドのプレイヤーですら、ドルイドのコンボは永続してほしくないと訴えているほどです。
開発陣もこの問題を認識しているため、高い確率でこのコンボにはメスが入ると予想されています。
自然の援軍は、それ単体ではバランスがとれたカードか、むしろそれほどには強くないと評されています。
野生の咆哮との組み合わせがなければ、試合を決定づける存在ではありません。
問題視されているのは野生の咆哮です。
自然の援軍がなくとも、戦術によっては序盤戦から終盤戦まで様々なシーンで活用できるカードです。
野生の咆哮は手軽にバースト・ダメージを発生できるために、プレイヤーにストレスを与えかねない即死級のコンボの発生源にもなります。
このことは、複数のミニオンを召喚する能力や、突撃および隠れ身を持つミニオンなどを新しくデザインする際の、大きな障害になると指摘されています。
提案された修正例
- コストを5に高めて、コンボを極めて発動しにくくする。
- 与える攻撃力を1に減らす。
- 攻撃力を与える対象をヒーローと獣種族限定にする。
- 能力を全く違う内容に変更する。
クラス専用のレジェンド・カードの中では、格別に強力であるとみなされているミニオンです。
挑発と聖なる盾の組み合わせだけでも、対戦相手に複数枚のカードを消費させる存在です。
さらには5/3の武器のアッシュブリンガーが装備されることによって、相手は追加で3体のミニオンが葬られるか、ヒーローに計15ダメージが与えられてとどめを刺されます。
Warcraftにおける象徴的な人物とはいえ、許容できる範囲をはるかに超える強さとなれば、弱体化を求める声が噴出します。
ただ、ティリオンの弱体化については、少し変わった理由によって、慎重に行われるべきだという意見もあります。
その理由とは、パラディンが弱くなりすぎる恐れがあるということです。
「ゴブリン vs ノーム」で登場したシールド・ミニロボや兵役招集などの優秀な専用カードは、それまで最下層であったパラディン・クラスの評価を飛躍的に高めました。
これらを失うパラディンは、再び最下層のクラスに転落してしまうのではないかと予想されています。
さらに、ティリオンまで弱体化されたら――
他のクラスとのバランスをとるために、パラディン専用カードの底上げが必要となるでしょう。
既存のカードの弱体化は行うけれども、強化は行わないことを開発陣は明言しています。
となれば、パラディンを底上げするためには、新しいセットに強力なパラディン専用カードを用意することが必要となります。
シールド・ミニロボや兵役招集なみの強いパラディン・カードを毎年に発行するというのは、リスクが高い調整法であるだけでなく、「ワイルド・フォーマット」におけるパラディンを過大に強くしてしまいます。
提案された修正例
- コストを増やす。
- アッシュブリンガーを弱体化させる。
- ステータス値を5/5にする(アッシュブリンガーの攻撃力5とマッチする)。
シールド・ミニロボとマッドサイエンティストが退場した後には、再び最強のコスト2のミニオンとなるのではないかと予想されています。
コスト2で3/2というステータス値だけでも合格点であるのに、倒されるまで無限に追加ダメージを与え続けます。
場をコントロールする用途でも、敵のヒーローを早期に倒す用途でも、十分に活躍できます。
対象がランダムであるのも嫌悪される要因の一つです。
「ナイフがどこに飛ぶかわからないスリル感」と表現されるランダム要素は、ゲームを面白くするための演出だと開発陣は説明していますが、多くのプレイヤーはそれを面白いとは感じていない模様です。
ストレスを与える存在となるだけでなく、今後に複数のミニオンを召喚する能力をデザインする際の障害になり得ます。
よって、弱体化を予想、あるいは要望する声が多く挙がっています。
提案された修正例
- 攻撃力を2か1に減らす。
- 体力を1に減らす。
- コストを3に増やす。
- 能力の発動条件を手札からのプレイに限定し、ミニオンや呪文による召喚には反応させないようにする。
「I bring life and ウエェー」でお馴染みのアレクストラーザも、弱体化や能力の変更が要望されています。
もともと能力のデザイン自体は、個性的で興味深く、生命を司るアレクストラーザの特徴をよく表しているという高い評価を得ています。
しかしながら、ヒーローの体力をフルの30から15まで一気に落とし、直後にバーストで倒すという試合内容は、敗北側のフラストレーションを過大に募らせる結果となります。
このような戦術にはカウンターが存在しますが、永続的にこの能力が居続けるのは懸念すべきであると指摘されています。
もちろん、今後に新しいカード群を作成する際に考慮せねばならない、制限を課すカードにもなり得ます。
体力低下時の回復にも使える汎用性や、敵の体力を15にした後のアレクストラーザ自体の攻撃力が8であることにも、それぞれ苦言が呈されています。
提案された修正例
- コストを10に増やす。
- (能力の個性をやや失わせるが)能力の対象を自分か相手のどちらかだけに限定する。
- ステータス値を下げる(ノズドルム、イセラ、マリゴスと同格なので、計16は維持して4/12に変更という意見も)。
膨大なテンポ・アドバンテージをもたらす練気、野生の繁茂、段取りなどは、どの世代の「スタンダード」においても起用されるであろう、汎用性がある強力なカードであると指摘されています。
中でも、練気は即効性と汎用性の両方が高いために、特別に問題視されています。
第1ターンで3マナの消費や、第2ターンで4マナの消費が可能となることは、短期向け長期向けを問わず、全ての戦法において大変有用となります。
たとえ1枚分のカード・アドバンテージを失うとしてもです。
とりわけ、早くからプレイするほど有利をもたらすカード(例えばナクスラーマスの亡霊のような成長するミニオン)を新たにデザインする際の、大きな障害になるのではないかと懸念されています。
さらには、1ターンの間に10を超えるマナを消費できる手段となることから、合計コストが11以上となるコンボについても考慮し続けねばなりません。
早期に高コストのミニオンを召喚できることは、ドルイド・クラスの特徴として広く受け入れられています。
ただ、その受け入れは、序盤戦におけるテンポを犠牲にしたうえで得られる利点であることが前提です。
第1ターンや第2ターンからそれらを召喚できることには難色を示される傾向があります。
野生の繁茂よりも練気の方の修正を求める声が多い理由の一つです。
マジック: ザ・ギャザリングの経験者など、カードゲームに長く携わっていると自称するプレイヤーほど、練気が存続することのリスクについて警告していたことが印象的でした。
また、原作ではマナを回復するスペルが、マナを増やす能力となっている違和感について訴える声も、ベータテスト時代から散発されています。
提案された修正例
- マナ・クリスタルの増加量を1に減らす。
- コストを3にしてマナ・クリスタルの増加量を5にする(序盤戦における膨大なテンポの獲得だけ排除)。
- 次のターンだけマナ・クリスタルを2つ増やす能力に変更する(相手が事前に準備できる・11以上のマナ消費は不可)。
- 消費したマナ・クリスタルを2つ回復する能力に変更する(高コストのカードの早期プレイは排除・原作のスペルの能力とマッチする)。
弱体化の必要性という話題において、最も賛否両論があったカードが、BGH(Big Game Hunter)という略称でおなじみの大物ハンターです。
大物ハンターの能力の修正を要望する「反BGH」派の筆頭であるのが、マジック: ザ・ギャザリングの世界的な名選手のBrian Kibler氏です。
同氏は、自身のブログにおいて特別に寄稿してまで大物ハンターの弊害を指摘していて、現在もその姿勢を変えていません。
カウンター・カードとしては、全てのクラスが使用できて、敵対する全てのクラスの大型ミニオンに有効なのが問題であると主張しています。
また、出演した動画においては、大物ハンターの存在ためにドラゴン種族を始めとした大型ミニオンが起用しづらく、このことがゲームの魅力を損なう要因になっていると説明しています。
コミュニティからは、「ミニオンの攻撃力が7より6の方が使いやすい風潮には問題がある」という意見が多数見受けられました。
一方で、大物ハンターの能力は存続されるべきというBGH肯定派の多くは、「大型ミニオンが早期に召喚されるメカニズムの存在」こそが最大の問題点であると主張しています。
大型ミニオンには活躍してほしいものの、第4ターンで召喚される山の巨人や、コスト0で召喚される溶岩の巨人などは歓迎しないというのです。
クラスによっては、このようなプレイに対処する際に、多大な困難が生じます。
そのため、大型ミニオンの低コスト化が実現される限りは、コストが低くて全てのクラスが扱える、大物ハンターのようなカウンター・カードが必要であると訴えられています。
大物ハンター、中型ミニオン、大型ミニオンの3すくみがある現状や、大型ミニオンの低コスト化と大物ハンターが共存している現状をよしとする、全てを肯定した現状維持を掲げる意見も少なからずありました。
提案された修正例
- ステータス値を減らす。
- コストを4に増やす。
- 攻撃力が7以上のミニオンに大ダメージを与える能力に変更する(必ずしも破壊できるとは限らない)。
- 能力を全く違う内容に変更する(大型ミニオンの低コスト化が排除されることが前提)。
基本セットとクラシック・セットには、トップ・シーンでもよく用いられる、強力なドルイドとローグの専用カードが多いことが指摘されています。
このアンバランスさを補正することが要望されています。
ベータテスト以来となる大規模なカード修正が実施される背景には、相応の理由があります。
能力があまりに強くて汎用性があるカードは、戦術にかかわらず、ほとんどのデッキで用いられることになります。
このようなカードが常に「スタンダード」で登場することは、対戦環境の変革を活発化させるという「スタンダード」の意義を失わせます。
操られた鎧は中立ミニオンにしたかったが、ローグの変装の達人が存在するために、クラス専用カードにせざるを得なかったと以前に開発陣がコメントしました。
このように、現時点では利用率が低いカードでさえ、その能力によっては新しいカードを作成する際に制限を課す場合があります。
基本セットとクラシック・セットは「スタンダード落ち」となって退場することがありません。
よって、それらの中に「スタンダード」の運営を阻害するようなカードがあれば、その内容を変更せざるを得ません。
このことが、今回の大規模なカード修正が実施される理由です。
開発陣から「スタンダード」の運営を阻害すると判断されたカードが複数あるのです。
メタ・ゲームの変革の障害となるような、「不健全」と称されるカードが修正の対象になると開発陣より発表されています。
また、どのカードが「スタンダード」に停滞をもたらし得るのかをよく検討し、全体のバランスを考慮しながら修正するとも言及されています。
今回、コミュニティの声を拾い集める過程で、大変興味深く感じたことがあります。
それは、烈火の戦斧やファイアーボール、獣の相棒、トゥルーシルバー・チャンピオンといったカードの修正を求める声が、予想よりもはるかに少なかったことです。
いずれも強力なカードであり、戦術を問わずに各クラスのほとんどのデッキで使用されているにもかかわらずです。
その最大の理由は、各クラスの基本カードの代表格である、クラスを象徴するようなカードであるからだと思われます。
こうした「クラスの象徴カード」は、いかに強くても修正されることがあまり求められていません。
ほとんどのデッキで用いられるとしても、「スタンダード」において対戦環境の停滞をもたらしたり、ストレスを与えるカードとしてみなされていない模様です。
基本とクラシックの各セットの中で、これまでに多くのデッキで用いられてきたカードを以下に掲載します。
この中で、弱体化されるべき、内容が変更されるべきと感じられるのは、どのカードでしょうか。