クラフト・ランキングに「ワイルド・フォーマット」のランクを新設しました。
ランクを定めるために参考とする対戦の配信やデータは、「ワイルド」においては非常に少ないのが現状です。
その不足を補うために、先月は「スタンダード」をプレイすることなく、初めて「ワイルド」のプレイに集中し、対戦環境の模様を実際に体験してきました。
これまで「ワイルド」のレポート記事はあまり見かけることがなく、いい機会だと思いましたので、体験して感じたことを掲載します。
「ワイルド」の記事を見かけないのも納得します。
どうやら、「ワイルド」に興じているプレイヤーの絶対数が、「スタンダード」と比してはあまりに少ないようです。
それをはっきりと確信させられたのが、レジェンド・ランクの到達時です。
「スタンダード」においてはレジェンド到達時にランク数が4ケタとなることも珍しくありませんが、10月中旬の時点で「ワイルド」でレジェンドに到達した際のランク数は2ケタの39でした。
過去に一度も最終順位で100位以内に入ったことがない私が2ケタの順位でシーズンを終え、シーズン最終日に対戦した相手のレジェンドの最低ランク数は378でした。
人口は「スタンダード」の10%もいないと断言できます。
ルールが「スタンダード」である大規模な大会が開催されている時期(今回は公式世界大会の最終選抜と決勝グループ・ステージ)は、特に「ワイルド」の人口が減るとも言われていますが、それにしても人気が大幅に下降している模様です。
私は結構前に、何かの配信で「ワイルド」の4ケタのレジェンド・ランクを見たことがあります。
おそらくもう、「ワイルド」のレジェンド到達者数は4ケタもいないと思われます。
「ワイルド」の対戦環境は、昔のカードセットの資産がものを言う世界です。
それを持つ古参プレイヤーが徐々に減り、それに代わる新規プレイヤーが参入したとしても、新規参加者は資産差で大きなハンデを負う「ワイルド」をプレイすることはありません。
「ワイルド」に対する特別な報酬や表彰が――それが必要であるかどうかはさておき――用意されない限りは、この過疎化は止まりそうにありません。
ただ、参加者数が少ないために、「スタンダード」と比してはランク上げが非常に楽であることは事実です。
「ワイルド」でランクを上げても公式世界大会のポイントは獲得できませんが、ランク戦の宝箱の仕様やレジェンドCard Backが発生することは、「スタンダード」と変わりありません。
エピックのゴールデン版が報酬となるランク5の到達も、満足なデッキが組めれば、「スタンダード」ほど時間を要することがないと思われます。
対戦フォーマットが「スタンダード」と「ワイルド」に分かれる直前には、2つのデッキが猛威を振るい続けていました。
1つは自然の援軍のコンボを用いるミッドレンジ・ドルイドで、もう1つはシークレット・パラディン――通称「シクレパラ」――です。
謎めいた挑戦者の能力によって複数の秘策を一度にプレイして、大きなアドバンテージを得るデッキです。
核となる秘策であった仇討が「ワイルド」でしか使用できなくなったことなどが要因となり、「スタンダード」では激減することになりました。
修正によってミッドレンジ・ドルイドが絶滅した後に、残ったシークレット・パラディンが「ワイルド」を席巻(せっけん)しています。
相手のランクが5あたりになってからは、シークレット・パラディンの出現率は一層高くなります。
上位においては、3回に1回は「シクレパラ」と対戦するようになることが、現状の「ワイルド」の対戦環境です。
シークレット・パラディン対策のためだけにリリースされたかのような秘密を喰らうものが、多くのデッキで採用されていることも「ワイルド」の対戦環境の特徴です。
クラフト・ランキングにおいて、「スタンダード」との人気格差が大きいカードの一つです。
「シクレパラ」の最大のカウンターとなるフリーズ・メイジや、「ワイルド」でも成長が著しい秘策多用のハンターに刺さることも、人気を集める理由だと思います。
ケザンのミスティックで相手の秘策を奪う行為は、相手の秘密を喰らうものの能力を無駄に発動させる要因となるので、ケザンのミスティックをほぼ見かけなくなったことも特筆に値します。
ただ、対シークレット・パラディンに限って言うならば、たとえ秘密を喰らうものが一斉に秘策を消したとしても、構わず押し切られてしまうケースが少なくありません。
それほどのテンポの良さでセットアップする強さを、シークレット・パラディン、および「ワイルド」のパラディンは有しています。
そのシークレット・パラディンのカウンターとなる存在であるフリーズ・メイジ、パトロン・ウォリアー、ズー・ウォーロックなどが、そのままシークレット・パラディンに続いて出現率が高いデッキとなっています。
ズーやパトロンも「シクレパラ」と同様に定番のデッキでしたが、フリーズ・メイジは苦手なコンボ・ドルイドがいなくなったことによって大きく台頭したようです。
原作では旧神の最強格と位置づけられている頽廃させしものン=ゾスは、「ワイルド」でも最強格の最終兵器となっています。
断末魔ミニオンを主役にした「ナクスラーマスの呪い」セットの人気カードのヘドロゲッパー、呪われた蜘蛛、デスロード、そして「ゴブリン vs ノーム」の”超問題児”であった手動操縦のシュレッダーとドクター・ブームたちは皆、ン=ゾスの恩恵を受けることができるのです。
「スタンダード」と「ワイルド」の分裂前からよく用いられていたシルヴァナス・ウィンドランナー、サバンナ・ハイメイン、ティリオン・フォードリングなどとも強力な作用関係があります。
プリーストやパラディンはおろか、ミッドレンジ・ハンターやパトロン・ウォリアーまでもがン=ゾスを起用しています。
もはや、ン=ゾスを所有していないと「ワイルド」のデッキの大半を用意できない状況になっています。
今後にリリースされるカードセットに、断末魔ミニオンの大きな抑止力となるような新しいカードが登場しない限りは、このン=ゾス偏重の情勢はなかなか変化しないものと思われます。
「スタンダード」よりも「ワイルド」の方でより重用されているカードの代表は、秘策全般です。
シークレット・パラディンは言うに及ばず、メイジやハンターもマッドサイエンティストの存在によって秘策をより有効的に扱います。
そのカウンターとして秘密を喰らうものが多数起用されていることは前述したとおりです。
手動操縦のシュレッダーやヘドロゲッパーを蘇らせるン=ゾスの能力をより強力とするために、断末魔ミニオンも全般的に人気を高めています。
それが特に顕著(けんちょ)であるのがローグのデッキで、掘り起こされたラプターは「スタンダード」との人気格差が大きいカードとなっています。
それに伴って、アンダーシティの押し売りや蠱毒なザリルなども人気を高めています。
人気No.1のデッキであるシークレット・パラディンの数が多いことによって、中立ミニオンである秘密の番人の人気が相対的に高まる結果となっています。
それに続くパトロン・ウォリアーの多数によって、同じく中立ミニオンであるぐったりガブ呑み亭の常連のスコアが高くなりました。
逆に、「スタンダード」ではよく見かけるのに「ワイルド」では出現しないカードの例は、やさしいおばあちゃん、速射の一矢、カルトのソーサラー、忘れ去られた松明などの、低コストの定番カード群です。
それぞれを有効に扱えるデッキであるとしても、同じく低コストであるエサゾンビ、呪われた蜘蛛、マッドサイエンティスト、フレイムキャノン、不安定なポータル、シールド・ミニロボ、バリバリなどの方が用いられているようです。
コスト4のミニオン群は、全般的に手動操縦のシュレッダーに置き換えられているようです。
呪われた蜘蛛とネルビアンの卵という、昔からの定番カードを持つ「ワイルド」のズー・ウォーロックは、破棄に関連するカードをほとんど扱いません。
「ワイルド」専用の人気カードたち
10月期の「ワイルド」対戦総数800のうち、実に2割強ともなる168試合がシークレット・パラディンとの対戦でした。
断トツでトップとなる数字です。
もちろん、今回の「ワイルド」の視察は、このシークレット・パラディンを主にプレイして行いました。
続いて多かったデッキが、フリーズ・メイジ(102試合)、中長期戦タイプのハンター(94試合)、パトロン・ウォリアー(79試合)です。
レジェンド・ランクの相手に限ってはパトロン・ウォリアーが最多であったために、平等を組み入れることを強いられました。
フリーズ・メイジとパトロン・ウォリアーがシークレット・パラディンを叩き、オールラウンダーであるハンターがその2つを叩き、シークレット・パラディンがハンターを叩くという、三すくみであるような感想を抱きました。
シークレット・パラディンのカウンターとなり得るン=ゾス・プリーストです。
64回対戦しました。
大きなポテンシャルを持つズー・ウォーロックは、意外と少なく、41回の対戦にとどまりました。
ちなみに、レノ・ジャクソン型のウォーロックとの対戦数は20でした。
その他の「ワイルド」主流デッキを以下に掲載します。
2016年の最後にリリースされる、次の新カードセットが発売されても、現行の「スタンダード・フォーマット」は移行しません。
今の「スタンダード」で使えるカードが、「ワイルド」でしか使えなくなることはありません。
次の「スタンダード・フォーマット」が変遷するのは、2017年の最初の新カードセットがリリースされるときです。
そのタイミングで、「ブラックロックマウンテン」「グランドトーナメント」「リーグ・オブ・エクスプローラー」の3セットが、「ワイルド」専用になって「スタンダード」では使うことができなくなります。