ドン・ハン=チョーは、Warcraftの世界には登場しない、ハースストーンのオリジナル・キャラクターです。
「仁義なきガジェッツァン」の主役となる犯罪組織の一つである「グライミー・グーンズ」を率いるリーダーです。
「グライミー・グーンズ」は、いわゆるギャングの集団であり、武闘派組織として知られています。
それを率いるオーガ種族のハン=チョーも、かつては腕っぷししか取り柄(とりえ)がなく、底辺からのし上がるために独自の手法で裏社会を駆け抜けました。
その手法とは、ハン=チョー自らが「二頭体制」と名付けた、裏社会におけるビジネス戦略の展開方法です。
ネクタイを締め、ヒゲを生やして威厳をまとう右半身のハンは、魔法を扱えるような知性はなくとも、裏社会で生き抜くための商才と知恵を有しています。
裏のビジネスマンとしての嗅覚を発揮して、どの大物と取引し、どの場所の用地を調達し、どの商業施設を傘下に加えるのかを、時勢に応じて的確に判断してきました。
服がボロボロであり、体のいたる所に傷がある左半身のチョーは、強権的な暴力のかたまりのような存在です。
ハンが下した決断を、恫喝や脅迫や暴行によって力づくで解決させ、機を逸することなく強引にまとめ上げてきました。
この二頭によるスピーディーな組織展開によって、「グライミー・グーンズ」は急成長を遂げたのです。
粗暴な性格なりにハン=チョーが導き出した「二頭体制」は、普遍的な武闘派組織における独裁体制よりも優れていることが、現在の「グライミー・グーンズ」の拡大によって証明されています。
考えるよりもまず実行に移してしまうような、血気盛んな不良の連中にとっては、惹きつけられるようなカリスマ性がある存在でもあります。
ハン=チョーに憧れて「グライミー・グーンズ」に入った不良たちも、一様に身勝手で、血の気が多くて、肉体派の野心家で、ハン=チョーと同じような帽子、チョッキ、サスペンダー、ピンストライプの服を好んで身に付けています。
「仁義なきガジェッツァン」のコンセプト・アートを担当するJomaro Kindred氏は、ハン=チョーの類まれなる合理性がひと目でわかるように、ハン=チョーのイラストをデザインしたことを説明しました。
ハン=チョーが半身ごとに異なる武器を携帯しているのも特徴的であると解説されています。
右半身ではスマートに敵の集団を処理する機関銃が扱われ、左半身では1対1でも負けない腕力を誇示するメリケンサックが扱われています。
躍進著しい「グライミー・グーンズ」が、ついにガジェッツァンを代表する犯罪組織まで到達した契機は、ガジェッツァン市長ノッゲンフォッガーと提携したことです。
ノッゲンフォッガーはガジェッツァンを我がものとするべく、ガジェッツァンの設立者である巨大な商人連合を追放するために、「グライミー・グーンズ」に協力を要請しました。
この多大な好機をもちろん逃さなかったハン=チョーは、ノッゲンフォッガーに強引な商取引と解決手段(暴力)を提供する代わりに、ガジェッツァン市内における商業活動の優待を受けました。
盗品の売買をする百貨店と独占的に契約し、そこから多額の手数料を搾取する態勢を整えました。
市長黙認の隠し武器庫には、密輸入した大量の火器が収められていて、戦力の増強や火器自体の取引による利潤を「グライミー・グーンズ」にもたらしています。
組織の存在を市全体にアピールし、組織内に莫大な利益を与えることにもなった、「グライミー・グーンズ」史上で最も派手な事業が、ガジェッツァン第一銀行の開業です。
市長から難なく承認されたばかりか、市長自らがハン=チョーのためにアピールした新事業が、新聞「ガジェッツァン・ガゼッタ」で私たちが最初に目にした「第一銀行開業」だったのです。
結局この銀行は「グライミー・グーンズ」による自作自演の強盗被害に遭い、預けられた市民の金品は全て「グライミー・グーンズ」の懐に入ってしまいました。
ガジェッツァンで「犯罪王」とまで称されるようになっても、グライム・ストリートの周辺を全て支配しても、野心家であるハン=チョーは依然として先を見据えています。
ハン=チョーの最終目的は、世界を牛耳る(ぎゅうじる)裏社会のギャングの首領(ドン)になることです。
彼にとっては、現状はおろか、ガジェッツァンの独占すらも、野望の前段階に過ぎないのでしょう。