闘技場に関するデータが、改めて細かく公表された背景には、コミュニティの間で渦巻いている闘技場への不満があります。
長らくハースストーンの闘技場の分野でコミュニティを代表し、現在はLightforgeで闘技場のカードランクの編集に携わるADWCTA氏が、Redditで衝撃的な投稿を載せたことで、闘技場の問題に関する話題に火が付きました。
同氏はその投稿で、今年の8月からの新環境における闘技場の不満に対して、怒りを存分にぶちまけたのです。
「ブリザードは毎年8月あたりに闘技場をぶち壊す」と表現するADWCTA氏は、「今年も例年と同じように8月のパッチが闘技場を『クソゲー』にした」とまず嘆きました。
同氏が複数抱いている闘技場の不満の中でも、現在に最も大きな問題として挙げている事項が、直近のパッチで突如として追加された新しい闘技場のドラフト・ルールです。
カードのドラフトにおいて1番目と2番目に出現するカード群が、「他のカードとのシナジー効果を持つカード」になるよう変更されたのです。
ADWCTA氏が試算した結果によると、「シナジー効果を持つカード」は各レアリティごとに10種類にも満たず、800~900種類もある闘技場の全カードプールに比しては非常に狭い選択肢であるとのことです。
しかも、その「シナジー効果を持つカード」の闘技場における強度は大半が低く、100点満点に換算すると平均で40点程度のカード群なのだそうです。
さらには、特定の「シナジー効果を持つカード」を選択したとしても、そのシナジー効果を発動できるカードが後のドラフトで出現する保証を得られません。
例えば、エレメンタル種族の召喚を能力発動のトリガーとするトルヴィアのストーンシェイパーを選択したとしても、その後のドラフトでエレメンタル・カードの出現率が特別に高くなる訳ではないし、最悪1枚もエレメンタル・カードがドラフトで出現しないこともあります。
- ブリザードは、闘技場へ楽しさと多様性をもたらすのではなく、狭い選択肢の中から不完全な「シナジー・デッキ」を組み上げることを強制している。
- この現象は、ハースストーンの闘技場にあるべき姿ではないし、他のいかなるカードゲームにおけるリミテッド・フォーマット――未開封パックからデッキを組み上げるルール――にあるべき姿でもない。
- これは独りよがりの批判ではなく、闘技場専門のコミュニティの間でも馬鹿げていることだと話題に挙がっている。
- そればかりか、闘技場で完全に登場しない「凍てつく玉座の騎士団」カードが12種類もある(※このバグは8月25日に修正済み)。
- 「Arena players deserve better」(闘技場のプレイヤーはもっと良い環境でプレイする資格があるはずだ)
- 私たちは楽しく真剣に闘技場をプレイしようとしているのに、十分にテストされておらず楽しくもない要素を急に放り込まれると、カジュアル層を含めた闘技場プレイヤーの全員が失望する。
- お願いだから、十分にテストされていない要素を正式稼働中の闘技場に追加しないでほしい。
私たちは、ベータ版やテスト・サーバーで実験しているプレイヤーではない。 - 誰もが愛した、「シナジー効果」の強要などない、以前の闘技場の環境に戻してほしい。
事後修正の恐れなど無用の心配で、以前もあなたたち開発チームは、私たちが声を大にして訴えた武器カードの出現率の問題を修正したではないか。 - ブリザードがコミュニティと共に歩んでいることは同意するが、ハースストーンの闘技場に関しては別である。
締めの「Respectfully,(謹んで)」が皮肉であるとしか感じられないほどに謹むことなく、あの祓い清め問題で開発陣に罵声を浴びせ続けたKripparrian選手と同程度の熱量でもって、ADWCTA氏は闘技場のゲーム・デザインの変革を痛烈に批判しました。
同氏は闘技場でのプレイを真剣に愛しているがゆえに、コミュニティの軽視にも映る、不完全と言わざるを得ないシステムの唐突な追加に対して我慢できなかったのでしょう。
闘技場のゲーム・デザインも担当する開発陣のDean Ayala氏は、この「シナジー問題」の反響の大きさに対して「変更を加えたばかりでフィードバックの収集中」などの弁明に追われることになりましたが、闘技場のコミュニティからはいま現在も理解が得られていない要素である模様です。
ゲームを統括するディレクターのBen Brode氏も急きょ投稿に参加し、決してコミュニティを軽視している訳ではないと再三に強調し、「シナジー問題」はプレイヤーのドラフト能力をより発揮させるきっかけにしたいがための措置だったのだと釈明しました。
この投稿においてコミュニティは、「シナジー効果を持つカード」の内訳を含めた、闘技場のドラフトにおけるデータの全貌が明らかにされていないことへの不満も挙げました。
そのことが、昨日のDrakkari氏によるカード出現率の再掲載――「8.4.0」のパッチノートで掲載済みであり、これでも開示が不完全だと指摘された内容――につながったのかは定かではありません。
とにかく、ADWCTA氏と彼に賛同するコミュニティによる叱咤激励が、ハースストーンの開発陣にいま最も大きな影を落としている案件の一つであることは、確かなことだと思われます。
ランク戦と同様に改革に着手され始めた闘技場ですが、こちらは序盤から前途多難な様相を呈しているようです。
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