ハースストーンのゲーム・デザイナーとしておなじみであるディーン・アヤラ(Dean Ayala)氏が、バランス調整の手法や最近の対戦環境の所感について述べています。
まず、「継続的なコア・カードの弱体化がプレイスタイルを全般的に喪失させていく」というテーマのHearthstone Top Decksの記事に対して、対象のRedditで応答内容を投稿しました。
続いて、IGNが設けた特設インタビューにおいては、ドルイドの弱体化やハンターの隆盛などについて言及しました。
その内容のまとめを以下に掲載します。
- 理想的な「基本」と「クラシック」のあり方は、過剰に使用されないという状態を維持しながら、各クラスの特徴を表現すること。
- 「基本」セットの重要性は、新規プレイヤーが時間とお金を費やすかどうかの判断を下す前に、彼らにゲームについて習熟させる役割を持つこと。
- 「クラシック」セットの重要性は、新規プレイヤーを第2ステップの習熟ポイントまで導くこと。
個々のクラスの基本的な戦術を、雄叫びや断末魔などの基本的なメカニクスと共に、彼らに習熟させる役割を持つこと。
- カードが非常に強力という理由で、「基本」「クラシック」セットがあらゆる環境とデッキに延々と存続し続ける現象は、通常はネガティブな感情しか引き起こさない。
プレイヤーから戦術の多様性を奪い、存続する戦術が停滞しているとプレイヤーに感じさせる要因となる。 - 突出した「基本」「クラシック」のカード群を徐々に修正していく機会を、私たちは見計らい続けてきた。
そのベストなタイミングとは、そのときの対戦環境にとって修正がプラス要素となる時点である。 - 野生の繁茂と滋養も、以前から修正する機会を伺っていたカード。
ドルイドの強度と人気の高さが長期に認められるメタに到達した時点で、これらを修正する最適なタイミングになったと私たちは判断した。 - このような手法の修正は今後も継続するつもりである。
拡張セットのリリースごとにゲームが新鮮味を帯びることが、プレイヤーたちの期待に応える要素となり、より良いゲームへ向上させるものと私たちは信じているから。
- 「基本」「クラシック」のカードたちがクラスを特徴づける存在であるとしても、それらのパワー・レベルが高すぎる場合は、存続させるのではなく弱体化させる。
- 「マナ加速」はドルイドを色濃く特徴づける能力。
シンプルな「マナ加速」の能力を持つ野生の繁茂や滋養は、ドルイドがどのようなクラスであるのかを伝える役割を持って、基本的なセットに含められている。 - そのような基本的なセットに含まれる「マナ加速」のカードたちは、パワー・レベルが中程度に抑えられる方がよいとも感じられた。
ドルイドの象徴として定めた「マナ加速」の能力を新たにデザインしようとする際に、それらが高すぎるパワー・レベルを有しているならば、それらよりも高い強度を持つ能力にデザインせねばならないから。
- もちろん、「基本的なセットのカードは全て弱い存在であるべき」などと言いたい訳ではない。
一般的には、ありとあらゆるアーキタイプに含まれているようなカードが修正対象となる。 - 風の王アラキア、泡を吹く狂戦士、ファイアーボール、ティリオン・フォードリングなどは、それぞれパワー・レベルが非常に高いカードでありながらも、おそらくは修正の対象には入らない。
なぜならば、それぞれはクラスの特徴を大いに表現する存在であり、かつ一部のアーキタイプにおいては採用されないという何かしらの短所を抱えているから。
- 金銭面に関する健全な解決法には、「真夏の炎祭り」のようなゴールド配布系のイベントや、新規プレイヤー向けの入門ランクにおけるパック報酬などがある。
私たちは、楽しく強力なデッキのアーキタイプを入手するために必要な投資――時間と費用――についても注視している。 - ありとあらゆる強力なデッキを全て作成することが目標であるならば、基本的なセットのカードの排除が拡張セットのカードの重要性をより高めることは事実。
最終的に目指すべき目標とは、投資行動が苦痛を伴わない経験となるようにすることであり、その手段は複数存在する。 - 永続的に使えるカードを、ほとんどのデッキに無条件で採用されるほどまでレベル・パワーを高めることは、その手段の一つではある。
しかしながら、それが正しい手法であるとは全く思わない。
- 私たちは、短期的な問題を解決するためだけに「基本」および「クラシック」のカードを調整することは絶対にしない。
烈火の戦斧を修正した時点におけるウォリアー・クラスは十分に強力であったし、烈火の戦斧の変化は好ましい要素だったと私は思う。 - もし私たちが「烈火の戦斧のコストは今後も2のままでよい」と本気で考えていたならば、間違いなく拡張セットのカード・レベルの方を変更しようとしていたことだろう。
烈火の戦斧の変化によって、スルスラズ、スーパーコライダー、木こりの斧、そしてブラッドレイザーのような新カードが活用される余地が生まれ、拡張セットごとにウォリアーというクラスの印象が移り変わるようになった。
これは私たちが設定した目標の一部だった。
上記までのディーン・アヤラ氏の投稿における重要なポイントは、高い強度の「基本」および「クラシック」カードは今後も弱体化が施行される可能性があると示唆されたことです。
修正時期は「そのときどきの環境において修正がプラス要素となるタイミング」
修正目標は「短期的な問題ではなく長期的な観点から問題視される要素の排除」
この全てが合致すると、修正対象となった「基本」「クラシック」カードは、たとえクラスを特徴づけるような存在であるとしても、「中程度のパワー・レベル」まで抑えられることになります。
また、「マナ加速」は今なおドルイド・クラスのアイデンティティーの一つであると認められていて、その「マナ加速」の能力を持つ新たなカード・デザインについても言及されました。
今後にリリースされる拡張セットに、「マナ加速」をもたらす新カードがドルイドに用意され、そのアイデンティティーを継続させる試みが施行される可能性も伺えます。
ディーン・アヤラ氏が応答メッセージを寄せたこと自体はおおむね評価されていますが、その内容は「基本」「クラシック」カードの修正の必要性を説明するだけにとどまりました。
肝心の、Top Decksの記事における「コア・カードの弱体化がアーキタイプまたはクラスそのものを完全に埋没させる」というテーマについては触れられていません。
同氏の「無条件に採用されるカードの永続は多様性を奪う」という説明に対しては、「実際には烈火の戦斧を失ったことでウォリアーはアーキタイプが奇数だけとなって多様性が奪われた」などとも反論されています。
あくまで「ドルイド崩壊・ハンター一強」となったバランス調整後の実際のゲーム・バランスについて問いたいコミュニティと、長期的な観点からコア・カードの修正の必要性を訴えているディーン・アヤラ氏との間には、論点の食い違いがあるようにも見受けられます。
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