クラシック時代に人気を博した中立カードたちもピックアップしていきます。
どのクラスにも用いられた高コストのミニオンと言えば、炎の王ラグナロスとシルヴァナス・ウィンドランナーです。
ラグナロスについては毎週のように弱体化待望論が巻き起こっていました。
シルヴァナスの方はコスト6でも活躍し続けていたのに、弱体化前はコスト5という「ぶっ壊れカード」の元祖でした。
5マナ・ミニオンの代名詞でもあったアジュア・ドレイクが様々なクラスで扱われた結果として、それを次のターンで排除するためのアージェントの司令官がよく起用されていました。
闘技場や長期戦向けデッキにおいては、ケーアン・ブラッドフーフやイセラも最大級の評価を受けていました。
テック・カードについては、今よりもコストが低かった沈黙要員の鉄嘴のフクロウ、同じく低コストでハンドロックやラグナロスの対策となった大物ハンター、ハンドロックやランプ・ドルイドの対策となった黒騎士あたりが人気を集めていました。
テンポを稼げる3マナのミニオンが少なかった時代において唯一、刈入れゴーレムだけはアーキタイプを問わずに愛用されていました。
4マナ帯ではチルウィンドのイェティとセンジン・シールドマスタが、無料の基本カードでありながらも、それぞれ攻防に優れた高バリューの中型ミニオンとして地位を得ていました。
そのチルウィンドのイェティのようなバリュー・ミニオンがクラシック時代では活躍できて、そこではしっかりとした盤面交換を最後まで楽しめるからこそ「ハースストーン・クラシック」を望んでいるのだという意見は少なくありません。
しかしながら、そうした望みは、当時の対戦環境であっても低ランク帯でなければ十分に満たされないものと私は考えています。
アイスブロックと凍結能力で「対話無視」を続けるフリーズ・メイジを筆頭に、ミニオンのトレードや相手の戦術などお構いなしに勝利条件を追い求めるアーキタイプが、上位ランクに進むほど顕著に出現し続けていたからです。
昔にもハンドロックによるコスト踏み倒しや無限リソースがあったし、発動されたら眺めていることしかできないシナジー・サイクルがあったし、ミニオン同士の戦闘が意味を成さない超アグロ戦術もあったし、最近の「ルナポケ合戦」のように観るのもやるのも耐えられない「引いた者勝ちOTK合戦」だってありました。
同時に「デッキの多様性」も重要視しているならば、OTKハンターの体感使用率が40%以上であったベータ時代に、あるいはミラクル・ローグの体感使用率が30%以上であったクラシック時代に戻ってプレイを続けることはお勧めできません。
そのようなデッキが出現しては調整されるゲーム・デザインであることは、今も6年前もさほど変わっていないし、ハースストーンとは昔からそういうゲームであると認識する方が不毛な懐古思想から脱却できるのではないかと思うのです。
クラシック時代と比べて近代の方が明らかに劣悪だと感じられる、意図的に継続されているゲーム・デザインの風潮は、競技プレイヤーを遠ざける「過剰なランダム要素」を楽しさだと捉えることと、競技レベルを劣化させる「過剰な無限リソース」を魅力的な強さだと捉えることくらいなものでしょう。
確かに6年前の思い出は目新しい面白さであふれていましたが、だからといって「ゲームの質」と「対戦環境の整備」に関して、今より6年前の方が優れているとは全く感じていません。
そして「ハースストーン・クラシック」のリリースは、残念ながらその実現性と有用性は高くないものと考えられます。
一言で説明すれば「すぐ飽きます」。
拡張セットのリリース頻度が約2年ごとであるWoWとは異なり、数ヶ月ごとにカード・プールの拡張を要するハースストーンは、発展性の寿命と環境のサイクル期間が短い性質のゲームです。
そればかりか、最終的なクラシック時代のメタはもう知れ渡っており、皆が実験と改良に明け暮れる期間も大幅に削られることになります。
日の目を見なかったクラスが多く、カード総数も少ないため、クラスとアーキタイプの選択肢も今よりずっと狭いことでしょう。
発展性がなければ長期に渡って楽しまれるとは考えにくく、酒場の喧嘩や「ゴロシアム」などにおいて一週間ほどだけ提供されるならば良いアイデアなのだと思います。
オープン・ベータからハースストーンのプレイを続ける私は、最初期のハースストーンのデザインには不滅的な独創性と熱意があったことを心得ておりますし、もちろんそれには最大級の敬意を表しています。
ですが、同じハースストーンの現在と比較される場合に、それが過度に美化されることには違和感を覚えます。
飽きさせないための新要素を意欲的に創造し、その結果として問題点や不平不満がわき出た場合には開発チームが都度に対応し、それらが繰り返されることでハースストーンは着実にゲーム性を高めてきたはずです。
ごく最近にも「カード強化の撤回」「記録的な早さのバランス調整」「スペシャリスト形式の即時撤廃」という迅速かつ潔い決断がありました。
ユーザーの意向を意識したこれらの改革は、もっと高く評価されてもいいのではないかと考えているほどです。