スポーツでハラスメントが厳しく罰せられるのは、なぜでしょうか。
その理由を理解するには、スポーツの基本理念をよく把握せねばなりません。
スポーツの基本理念は、「心身の健全な発達」と「社会文化の発展」を主題として掲げています。
「心身の健全な発達」のうち、「心の発達」の方は、「他者を尊重して協同する精神を育むこと」が趣旨の一つとなっています。
「社会文化の発展」は、あらゆる人種を平等に迎え、あらゆる人種と交流して相互理解や一体感を深め、最終的には国際平和に貢献することを目標の一つとしています。
ハラスメントは、これらを真っ向から否定する行為です。
不当な理由によって他者を貶めて排他する行為がハラスメントです。
相手が社会的弱者であることや、特定の人種・性別・宗教だけに注視して負の感情を示し、不平等に扱う行為が、差別と呼ばれるハラスメントです。
日本は海外に比べてハラスメントの罪の意識が低いとみなされています。
ハラスメントの加害者が、ハラスメントが重罪であると自覚していなかったり、ハラスメントを行ったつもりではないと考えていたケースがよくあります。
サッカーのJリーグでは、人種排他的な差別用語が記された横断幕が観客によってスタジアム内に掲示され、史上初の無観客試合という厳罰が下される問題にまで発展したことがあります。
女子柔道では、全日本の監督が選手の強化において過度に熱中するあまり、選手に対する殴打や暴言、さらには負傷選手に対する出場の強要などを行っていたことが発覚し、最終的には協会幹部が刷新される事態に陥ったことがあります。
いずれも、人種差別やパワー・ハラスメントの行為であると、加害者が明確に認識していませんでした。
スポーツの世界では、自らの主体性を築き上げることと同程度に、他人の主体性を尊重することが重要視されています。
ただ、教育が不十分である地域を中心に、後者がないがしろにされていることが問題視されています。
自らが勝利することや、自らが楽しむことが、第一に追求されるのは当然です。
ですが、対戦者があってこそ成り立つスポーツの世界に身を置くならば、多種多様な対戦者たちの理解を深めて、それぞれをリスペクトする行為も欠かせません。
スポーツの種目の一つであると声高に宣言しているe-Sportsの世界においても、これは例外ではありません。
e-Sportsのハラスメントも、厳しく罰せられるべき、根絶されるべき犯罪です。
以前も記載しましたが、新規参入者が途絶える競技は崩壊します。
一般プレイヤーが定着しづらい競技も崩壊します。
不毛な人種間の憎しみ合いや、不当な女性プレイヤーの扱いによって、コミュニティが限定されることになった競技に未来はありません。
同じコミュニティの間で起こるハラスメントは、結果的にそのコミュニティを自ら崩壊させるきっかけになってしまいます。
続く第4回では、e-Sports特有のハラスメントについて掲載します。
- 文部科学省 – スポーツ基本法(平成23年法律第78号)(条文)