同作品をこれから鑑賞する予定である場合は、事前に閲覧しないことを強くおすすめします。
ぜひ、鑑賞後にお読みください。
なお、当サイトでは、映画「ウォークラフト」のストーリーが把握しやすくなる、鑑賞前の予習となるガイドを掲載しています。
映画「ウォークラフト」が、ついに日本でも公開されました!
すでに観たという、Warcraftおよびハースストーンのファンの方々も大勢いると思われます。
私もゆっくりと楽しむために、改めて劇場で鑑賞してきました。
その最中に、一度の鑑賞では完全に把握しにくいであろうシーンや、疑問を持たれるかもしれない要素があることに気付きました。
それらを帰宅後に全て調べ上げた結果を、以下にQ&A形式でまとめて掲載します。
映画「ウォークラフト」の物語の理解や、同作品に対する思い入れを、鑑賞後により深めていただくことを趣旨としています。
<目次>
- 「ゴエル」と名付けられたデュロタンの子供は一体何だったのですか?
- グルダンはどうして悪魔のフェル魔法を使えるのですか?
- メディヴはどうして悪魔のフェル魔法を使えるのですか?
- カドガーの腕に施された光るマークは何なのですか?
- グルダンが決闘でデュロタンを破って勝利したのに敬意を表されなかったのはなぜですか?
- なぜローサーは気絶後にとどめを刺されずブラックハンドと決闘することになったのですか?
- メディヴはローサーたちとの戦闘で何に変貌したのですか?
悪魔の総帥であるサーゲラスですか? - なぜレイン・リン国王はガローナに自分を殺させたのですか?
- 「Warcraftの世界を忠実に再現」というコンセプトと「デュロタンが人間と共闘」などのオリジナル・ストーリーの創作は矛盾しませんか?
- 原作との相違点を全て知りたいのですが?
ゴエルは、後にホード陣営の最高の指導者となるスロールです。
トロル種族やトーレン種族を救って仲間に引き入れて、オークたちを汚染した悪魔と対抗する新生のホード陣営を率います。
Warcraftやハースストーンのプレイヤーにとっては最大級に馴染みが深い存在であるため、赤子の状態であっても特別に扱われて描写されます。
原作でも映画でも、ゴエルは人間に引き取られて、人間界で育つオークの戦士となります。
映画の次回作(または次々回作)では、スロールとして成長した姿が映されることが、ファンから大いに期待されています。
映画の本編では、グルダンがフェルを習得した経緯は詳しく説明されませんでした。
原作のグルダンは、悪魔の軍団から誘いを受けたことで習得しました。
アゼロス大陸の壊滅を目論む悪魔の軍団「バーニング・リージョン」は、大昔にアゼロス侵攻を失敗していたことから、事前にアゼロスをオークに疲弊させて確実に侵略しようとしていました。
それを実行する際に目をつけたのが、オークの野望高き魔術師であるグルダンです。
悪魔はグルダンに対して、強大な悪魔の力を授ける代わりに、自分たちの指示通りにオークを扇動することを求めました。
喜んで応じたグルダンは、望んでいた破滅的な力を振りかざし、それによってオークの実質的な支配者となり、悪魔が望むオークによるアゼロス侵攻を果たします。
映画の本編ではその経緯は詳しく説明されませんでしたが、映画でも原作でも、メディヴは誰も気付かないうちに悪魔によって精神が汚染されていました。
そして、アゼロス側からダーク・ポータルを開いてオークを呼び寄せてしまいました。
悪魔の脅威に対抗してアゼロスを守護する立場でありながら、悪魔の手先を招き入れて、アゼロスに大きな災いをもたらしてしまったのです。
原作のメディヴは、出生前の胎児の状態である時点で、悪魔から呪いをかけられていました。
悪魔がこのように周到に準備した理由は、アゼロス側からも強大な魔力でポータルを開かなければ、オークによるアゼロス侵攻が成し得なかったからです。
それを可能とするのは、最強の魔術師たる「アゼロスの守護者」であったため、本人を含めて誰にも気付かれずに「最強の悪魔の手下」が養成されるよう仕向けていたのです。
メディヴが成長し、オークのアゼロス侵攻の機運が高まったときに、悪魔の呪いが発動してメディヴはオークを招き入れてしまいました。
映画および小説版「ウォークラフト」のメディヴは、若い頃にドラエナ大陸――悪魔がオークを間接的に支配していた世界――へ旅していて、そこで気付かぬうちに悪魔と接触する機会を生じさせていました。
そしてフェルを無意識に自身の中へ取り込んでしまい、その対処法を必死に調査していましたが、結局はフェルによって自我を失うことになりました。
カドガーが所属する、メイジのエリート集団であるキリン・トアのシンボル・マークです。
ただ、それが腕に烙印されていたり、光る仕様であったりすることは、原作にはない映画のオリジナルの要素です。
アゼロスの危機を救う重要な手がかりの前で、カドガーが持つキリン・トアのマークが光るのは、カドガーが特別な魔力を有する特別な存在であることを表しています。
それを目撃した「アゼロスの守護者」であったアロダイの亡霊は、カドガーを見込んで最後の力を振り絞って降臨し、メディヴを討伐するようカドガーに助言しました。
グルダンが途中から魔法を使ってデュロタンにとどめを刺したからです。
オークの決闘における魔法の使用は、明確には禁止されていませんが、卑怯な手段であると認知されています。
個人の腕力を尊ぶオークの伝統的な社会においては、肉体の力によって他者を制しなければ真の長として認められません。
決闘の最中にダーク・ポータルが再び開く準備が整ったため、グルダンは決闘を中止しようとしました。
しかし、デュロタンが中止を拒んだため、手っ取り早くデュロタンを殺そうとして、グルダンはフェル魔法の使用を解禁しました。
ブラックハンドが、ローサーへの復讐という個人的な思惑のために、大観衆の前で自らローサーを倒したかったからです。
ストームウィンド地方の森における襲撃で敗走したブラックハンドは、その戦闘中にローサーの銃の砲撃によって左手を失っていました。
さらに、その敗戦の夜に、指揮官だったブラックハンドは、多くの族長たちがいる前でグルダンから極刑を言い渡される屈辱を受けていました。
後にグルダンからフェルを授かって無敵を自負したブラックハンドは、最高司令官という立場を利用して決闘をセッティングさせ、ローサーを倒して屈辱を晴らし、自身の力を皆に認めさせようとしました。
しかしながら、「軍神」「獅子」「最強の戦士」などと称えられていたローサーは、フェル仕様のブラックハンドでさえも難なく一撃で葬ってしまいました。
ローサーにとってもブラックハンドは、最愛の息子を殺した、復讐の対象でした。
悪魔の総帥であるサーゲラスですか?
ダンカン・ジョーンズ監督へのインタビューにおいて、メディヴ自身が悪魔と化した姿であることが判明しています。
悪魔の軍団「バーニング・リージョン」の総帥であるサーゲラスではないことも、監督自身の返答によって明らかになっています。
悪魔の魔法であるフェルは、悪魔以外の種族が用いると、その容貌を悪魔のように変化させていきます。
そしてついには、使用者を悪魔そのものにしてしまいます。
自身の中ではびこるフェルの暴走を抑えられなくなったメディヴは、悪魔と対抗する守護者でありながら、悪魔の最終形態へ変貌することになったのです。
理由は2つあります。
1つは、正気に戻ったメディヴが力尽きたことによって、彼が開いた退却用のポータルが閉ざされ、自身の運命が尽きようとしていたからです。
もう1つは、ガローナが自分を殺すことによって多大な手柄が生じ、ガローナがオーク軍に手厚く迎えられることになるからです。
レイン・リン国王とタリア王妃は、ガローナこそが、オークと人間を共存させる鍵となる存在になると見込んでいました。
絶体絶命の状況に陥ったレイン王は、ただ討ち死にするのではなく、ガローナのオーク軍における存在感を高めて、ガローナに抗争の調停を託すことにしたのです。
それに従ったガローナは、タリア王妃から授かった短剣でレイン王を殺害し、レイン王の思惑通りにオークたちから歓迎されました。
レイン王の遺体に刺さった王妃の短剣を見たローサーは、信頼しかけたガローナが裏切ったと捉えて、大きく失望することになりました。
監督のダンカン・ジョーンズ氏だけでなく、ロブ・カジンスキー氏(オーグリム役)やダニエル・ウー氏(グルダン役)、そしてスタッフの多くが、原作のWarcraftの熱狂的なプレイヤーであったとのことです。
劇場で販売されていたプログラム(パンフレット)には、そうした彼らがWarcraftの世界を尊重して再現することは自然なことであり、彼らがファンとしてゲームに忠実であることを心掛けていたことなどが詳細に記載されていました。
にもかかわらず、原作とは異なる設定がいくつかあったことについて、米サイトのio9がダンカン・ジョーンズ監督へのインタビューで尋ねました。
それによると同監督は、「20年前に誕生した原作の中には現代社会と適合しない部分がある」「ゲーム製作と映画製作の手法の違いによって差異が生じる」「映画には物語の簡素化や短時間で視聴者を惹きつける要素が必要」などを、原作に手を加えた主な理由として挙げているようです。
とりわけ大きな変更となったデュロタンとガローナの役割については、「ともに原作ではキャラクター・ストーリーが大雑把にしか描かれておらず、映画においては個々の存在意義をより際立たせる必要があるため、それが成されるような描写にした」と、変更にいたった経緯を説明しました。
この理由を知っているか否かにかかわらず、Warcraftファンたちが唯一「ウォークラフト」で賛否両論を引き起こしたのは、こうした原作の変更の数々についてでした。
爆発的な人気を得る前のWarcraftの作品における、馴染みが浅い要素の変更が主であったことは、その否定派の発生を大きく抑制したと私は思います。
映画「ウォークラフト」 | ゲーム「Warcraft」シリーズ |
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アンドゥイン・ローサーの実の息子であるカラン・ローサーが登場する。 | アンドゥイン・ローサーに家族はいない。 |
レイン・リン国王の夫人であるタリア・リンは、ローサーの妹である。 | ローサーに家族はおらず、レイン王の夫人は無名の存在である。 |
カドガーは17歳のときにキリン・トアから脱退し、その後に自らの意思でメディヴと接触する。 | カドガーは17歳のときに、キリン・トアの指示によってメディヴに弟子入りする。 |
メディヴの世話役であるモローズはキリン・トアのメンバーである。 | モローズは一般市民で、カラザン城の執事である。 |
メディヴが恋に落ちた女性はローサーを選んだ。 | そのような女性は存在しない。 |
魔法都市のダラランは、オークの襲来前から浮遊している。 | ダラランは、一度破壊されて移転した後の「Warcraft: Wrath of the Lich King」において、マリゴスの襲撃を回避するために浮遊した。 |
アロダイは女性で、「アゼロスの守護者」の草分け的な存在である。 | アロダイは男性で、ティリスファル評議会によって意図的に育成された初代の「アゼロスの守護者」である。 |
ゴエルは瀕死の状態で産まれて、それを救ったグルダンのフェル魔法によって肌が緑色になる。 | ゴエルは健康な状態で産まれて、生まれながらに肌が緑色である。 |
ゴエルは母親によって川に流され、それを見つけた人間に引き取られる。 | ゴエルは両親が暗殺された死体のそばで発見され、それを見つけた人間に引き取られる。 |
ダーク・ポータルは魔力によって一定時間だけ開く。 | ダーク・ポータルは開かれると破壊されるまで開きっぱなしとなる。 |
アゼロス大陸側のダーク・ポータルはオークたちによって建設される。 | アゼロス大陸側のダーク・ポータルはメディヴによって建設される。 |
グロム・ヘルスクリームとカーガス・ブレードフィストが最初のアゼロス侵攻に参加した。 | グロム・ヘルスクリームとカーガス・ブレードフィストは、最初の侵攻時にはドラエナ大陸にとどまっていた。 |
デュロタンとガローナは、人間に協力を要請して、人間とともにグルダンを討伐しようとする。 | デュロタンはアゼロス侵攻直後に亡命して、北の山地にフロストウルフ氏族の新たな拠点を設けた。 ガローナは、グルダンが破滅するまで、グルダン配下のスパイ兼暗殺者として活動した。 |
ガローナは、メディヴが父親であるオークと人間のハーフである(※小説版の記述による)。 | ガローナは、戦争孤児であるオークとドラエナイのハーフで、マラードの妹の娘である。 その後にガローナはメディヴと関係を持って、メダンというメディヴの息子を出産した。 |
デュロタンはグルダンとの決闘で死亡した。 | デュロタンとその妻ドゥラカは、グルダンの手下によって暗殺された。 |
ブラックハンドはローサーとの決闘で死亡した。 | ブラックハンドはオーグリムとの決闘で死亡した。 |
メディヴは石像の下敷きになって死亡した。 | メディヴはカドガーとローサーに斬りつけられて死亡した。 |
レイン国王は、戦場でガローナに自分を殺害するよう指示した。 国王殺害を目撃したオークたちは、ガローナを手厚く迎え入れた。 | レイン国王は、グルダンの組織に指示されたガローナによって、城内で暗殺された。 それを目撃した息子のヴァリアン・リンは、ホード陣営に対する復讐を誓った。 |
国王の遺体とともにストームウィンドへ帰還したローサーは、ストームウィンドでアライアンス陣営を結成した。 | ストームウィンドが壊滅した際に、敗軍を見事に指揮して逃避させたローサーは、北部のローデロンでアライアンス陣営を結成し、ストームウィンドの復興を誓った。 |