公式には発表されていませんが、どうやら米AmazonとTwitchは、現地時間の10月6日から「Twitch Prime」の入会制限を強化した模様です。
「Twitch Prime」の入会制限とは、居住国がアメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、スペイン、イタリアであるユーザー以外は申し込みを受け付けないというものです。
今回強化された内容とは、その対象国以外の国のクレジットカードが登録されている場合は、自動的に申し込みを却下するというものです。
したがって、先日に紹介した住所の虚偽報告による申し込みを行っても、登録するクレジットカードが日本のものであれば、「Twitch Prime」の会員になることはできなくなりました。
実際に、もう1つの米Amazonのアカウントを作成し、以前と同じ手法で「Twitch Prime」の会員申し込みを試行するも、今度は成功しなかったことを確認しています。
「Twitch Prime」の会員になると、ハースストーンの新しいヒーローであるティランダが特典として与えられます。
そのために、対象国以外のプレイヤーがその会員になってティランダを得る方法が、最近の大きな話題となっていました。
現時点で、対象国以外からティランダを得る方法、すなわち「Twitch Prime」の会員になる方法は、私が調べた限りでは以下の3通りです。
私は実際に試していませんが、米Amazonのカスタマー・サポートに連絡してTwitchのアカウントとの連携を願い出ると、対象国以外からでも「Twitch Prime」の会員になれたという報告が複数ありました。
ただしこれは、今回の入会制限の強化前における報告であって、締め出しが強化された現在でも同様に受け付けられるかは判明していません。
また、アメリカ版のAmazonであるために、カスタマー・サポートとは英語で連絡せねばならないという制約があります。
Revolutとは、スマートフォンの無料アプリであり、イギリスのバーチャル・デビットカードを作成する外貨交換用の決済アプリです。
「Twitch Prime」の対象国であるイギリスのクレジットカード番号を登録できることになるため、今回の制限強化後であっても「Twitch Prime」の会員になることができます。
ただし、現時点ではどうやら、日本は残念ながらRevolutのサービスの対象外である模様です。
日本からでは試行できない手段です。
虚偽報告する住所を、アメリカではなくドイツのものにすれば、制限強化後も相変わらず「Twitch Prime」の会員になれるという報告があります。
ただし、この方法は、居住国がEU所属であるユーザーに限定されている模様です。
もちろん日本からでは成功しません。
10月7日からは、日本を含めた「Twitch Prime」の対象国以外のユーザーが、確実にティランダを入手できる方法はなくなったように見受けられます(対象国のクレジットカードを所有している場合を除く)。
ハースストーンの公式Twitterアカウントは、この件に関して、「対象国以外もティランダを入手できるようにすることを検討している」とアナウンスしています。
対象国以外のプレイヤーは、検討してもらって他の入手方法を設けてくれることを願うしかない状況にあります。
これほどの大きな反響が巻き起こったために、ブリザード社が何の措置もとらないとは、通常ならば考えにくいことです。
ただ、ティランダは「Twitch Prime」のプロモーション・アイテムであるために、Twitchとの協議が必要になる事案なのかもしれません。
ティランダの入手期限は、BlizzConが閉幕する11月5日です。
もし何らかの措置があるのならば、その前後に(あるいはBlizzConで)発表されるとも予想されます。
ティランダを入手できないことに関する反感の声が盛大となった理由は2つあると思います。
まずは、ハースストーンが世界的な人気を博していることです。
もともと「Twitch Prime」の対象国はいずれもブリザード・ゲームのファンが多い国ですが、その対象国以外から大きな反響が挙がっているということは、それほどにハースストーンが世界的に普及している証しでもあります。
ヨーロッパ諸国と中国は言うに及ばず、アジア・オセアニア地域においては韓国、台湾、日本、オーストラリア、ニュージーランドなども、公式大会の予選地域に特定されるほどにハースストーンが親しまれています。
ブリザード社に限らずゲームの主要パブリッシャーは、し烈な競争で生き残るために、自社のゲームを他の国や地域へ展開することが半ば必須であるとみなされています。
最近では東南アジア地域におけるシェア争いが活発であるようです。
その傾向に逆行するかのような今回の地域差別的なリリースを、対象外の地域も含めて大々的に発表したことに、コミュニティからの批判が集まっています。
「対象外の国に住んでいる」という、理不尽な理由によって獲得できないコンテンツを、大げさにアピールされているのだから当然のことです。
疎外感を与える「おま国」=「おまえの国には売らない」という態度に対する反感は、世界各国で共通して発生している模様です。
地域差別についはブリザード社側ではなくAmazon・Twitch側に非があるという意見もありますが、提携および同意している以上は両者が同等に非難されるべきです。
2年連続でハースストーン世界選手権の決勝大会進出という偉業を成し遂げ、ブリザード社がその功績を称え続けねばならない存在であるThijs選手は、オランダに住んでいるというだけでティランダを獲得できない状況を嘆いています。
もう1つの理由は、Warcraftの世界におけるティランダ・ウィスパーウィンドが、同ゲームを象徴する一人という重要な存在であることです。
原作のティランダは、アライアンス陣営において、ヴァリアン、マグニ、マルフュリオンらと肩を並べるリーダーの一人です。
それも、作中でドロップアウトする他者と異なり、初代「World of Warcraft」から12年にわたって現在もエルフ族の首都でリーダーを務め続けている、いつでもプレイヤーが接見できる馴染み深い英雄なのです。
そもそもティランダは、「World of Warcraft」以前の「Warcraft 3」から登場していて、同作品のパッケージのモデルにも採用されています。
そのために、初めて追加ヒーローがリリースされたときから、プリーストのヒーローとしてティランダが登場するという要望に近い予想の声が展開されていました。
今回のプロモーション用のヒーローが、Warcraftにおける新キャラのモルグルであったならば、ここまで大きい反発は生じなかったのかもしれません。
そうではなく、ナイト・エルフ族を統べるあのティランダが、自分の居住国という理由だけで獲得できないとなれば、Warcraftのファンが黙殺することは到底できないでしょう。
スペシャルな存在であるからこそ、他社と提携するプロモーション・アイテムとして選ばれたのかもしれません。
しかしながら、このようなお粗末と評価せざるを得ないキャンペーンによって、英雄ティランダにネガティブな印象が与えられる事態になったことは、Warcraftの一ファンとして耐え難い感情を抱かせます。
5日より、このティランダのプロモーションと連動させた、「Hearthstone Priest Extravaganza」という公式の配信企画が始まっています。
「Twitch Prime」が新設されたことを記念して催される、ハースストーンのプリースト・クラスのプレイをTwitchで配信する企画です。
そうそうたるハースストーンのスター選手たちが参加しているのですが、この企画自体はコミュニティの間で盛り上がることなく、冷めた態度で扱われている模様です。
この企画が話題に挙がると、決まって「Sorry! Twitch Prime isn’t available in your country.」(Twitch Primeはあなたの国からでは参加できません)というフレーズが皮肉的に投稿され、続いてティランダの入手法や地域差別への批判が展開される流れになるのです。
「プリーストで2万回勝利してもティランダの獲得には及ばない」と嘆いたポーランド(Twitch Prime対象外)在住のZetalot選手は、このプリースト・クラス限定の企画に招待されませんでした。
これほどまでにプリーストを愛しているプロ選手が他に見当たらない中での、同選手の非招待も、コミュニティがこの企画に対して拒絶反応を見せる要因の一つになっているようです。
今回の騒動によって、ティランダの獲得コードを不正に取引する出品が相次ぎました。
それに関連して、詐欺行為やアカウントのハッキングまで横行する事態になったという報告もあります。
ハースストーンの健全的な発展を阻害する事象です。
運営側は、まずプロモーションの対象国以外のプレイヤーを納得させる措置を講じたうえで、多くのプレイヤーを失望させた今回の騒動を深く憂慮し、二度と同様の企画を催さないでいただきたい。
そう強く願っています。