「World of Warcraft」におけるドラゴンソウルは、とてつもなく高い魔力を秘めたアーティファクトです。
プレイヤーが実際に装備できる武器ではありませんが、物語上では大きな存在意義を持つアイテムです。
拡張セット「Cataclysm」で主役となったデスウィングが作り上げ、そのデスウィングを破壊する唯一の武器となりました。
ハースストーンのドラゴンソウルのようにドラゴンを召喚する能力は持ち合わせていませんが、アゼロスの守護者であるドラゴンたちのエネルギーが込められました。
太古の時代に、ブラック・ドラゴンのネルサリオン(Neltharion)は、アゼロスの創造主タイタン種族から大陸と地底の守護を任されていました。
彼はアゼロス全土の管理を遂行する過程で、一見すると何の変哲もない金色の円盤に不思議と気を取られました。
これは途方もない規模の魔力を内包できるアーティファクトである――やがてはそう確信したネルサリオンは、従えていたゴブリン種族のアーティファクト専門の工芸家たちに、この円盤を精製するよう命じました。
いつしかドラゴンソウルと呼ばれるようになったそのアーティファクトは、秘めている魔力を発揮できる完成形となるまでに近づいていました。
その時期のことです。
悪魔の焦熱の軍団(Burning Legion)が、初めてアゼロス大陸に侵攻してきました。
このアゼロスの未曾有(みぞう)の危機に対して、守護者の一人であったネルサリオンは、悪魔に対抗するための強力な武器としてドラゴンソウルを活用しようとしていました。
ただ、その悪魔の襲来の前後にネルサリオンは、精神を著しくかき乱されていました。
アゼロスの地底の管理も担当していた彼は、その地底に封印されていた邪悪な旧神たちと無意識に接近し続けていたために、徐々に旧神たちから精神を蝕まれ(むしばまれ)ていたのです。
そして、とうとう発狂してしまったネルサリオンは、旧神の復活のために身を尽くす旧神の配下に成り果ててしまい、その障害となる他のドラゴンの守護者たちを、悪魔が侵攻している最中であるにもかかわらず排除し始めました。
当初は悪魔の軍団に対して扱われるはずであったネルサリオンのドラゴンソウルは、旧神の不浄な力が加わったことによって、より強力なデモンソウル(Demon Soul)となり、彼の味方であったドラゴンたちに向けて魔力が発揮されることになりました。
そのデモンソウルの力を取り込んだネルサリオンはデスウィングと化し、アゼロスの守護者から破壊神になりました。
ネルサリオンの暴走をいち早く察知して抑制しようとした、マリゴス率いるブルー・ドラゴンたちは、ネルサリオンが強大なデモンソウルの魔力を有していることを知らなかったために、彼の力量を見誤ってしまいました。
その結果としてブルー・ドラゴン軍は、リーダー格であるシンドラゴサの死を含む壊滅的な返り討ちに遭いました。
アゼロスの新たな脅威となったデスウィングの力の源が、デモンソウルであることが明らかになりました。
そこで、竜の女王アレクストラーザの配偶者であるレッド・ドラゴンのクラサス(Krasus)は、ナイト・エルフのドルイドのマルフュリオン・ストームレイジと共にデスウィングの棲み家に潜入して、デモンソウルを盗み出そうとしました。
その企みは成功したのですが、同じくしてデモンソウルの存在を知った、悪魔の軍団の手先となっていたナイト・エルフのアズシャラ女王(Queen Azshara)とイリダン・ストームレイジ――マルフュリオンの弟――が、マルフュリオンたちを捕らえてデモンソウルを奪ったのです。
アズシャラたちは、このデモンソウルを、悪魔の軍団をアゼロスに召喚するための動力源にしようと画策していたのでした。
しかしながら、膨大なパワーを秘めるデモンソウルがいかに危険なアーティファクトであるのかを、彼女たちは知りませんでした。
悪魔を召喚するポータルを作り出す過程で、デモンソウルの激しい魔力の暴走を引き起こし、アゼロス全土の8割を海に沈めた末に、悪魔の軍団の召喚に失敗しました。
やがてアズシャラ軍を撃破したマルフュリオンとドラゴンたちは、デスウィングに奪い返されないように、デモンソウルをアゼロスのいずこかに隠したのでした。
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