「World of Warcraft」におけるマナアリの髑髏は、プレイヤーのキャラクターが装備できるアーティファクト武器の一つです。
アーティファクト武器は、いずれもアゼロス大陸に現存する伝説級の武器であり、それらの使用は悪魔の焦熱の軍団(Burning Legion)に対抗し得る唯一の手段であると見なされています。
デモノロジー(Demonology / 悪魔の使役に特化したスペック)のウォーロック・クラスのプレイヤーがマナアリの髑髏を扱います。
従えている悪魔のペットたちの体力を吸収し、その合計量に等しいシャドウ属性のダメージを対象に与える初期能力を有しています。
Warcraftのストーリー上においては、エレダー種族のサルキール(Thal’kiel)の頭蓋骨(ずがいこつ)であるという設定です。
エレダー(Eredar)とは、惑星アルガス(Argus)を生誕地とする、高い知能と体力を兼ね備えた上級種族です。
現在は、そのエレダー種族の大半は悪魔の軍団に属していて、その堕落から逃れたヴェレン率いるエレダーの残党はドラナイ種族と呼ばれて区別されました。
サルキールは、エレダー種族が悪魔の手先となる前の時代において、エレダーを実質的に先導していた魔導師です。
上級種族であるエレダーの民衆から認められるほどの知識と魔力、そして実行力を有する、野心高きリーダーでした。
膨大なアーケインの魔力で数々の魔法の建築物を創造し、アルガス大陸に堂々たる首都を築き上げたことが、彼が求心力を得た最大の要因でした。
あるときサルキールは、そのアーケインの魔力より何倍も強大なエネルギーが、宇宙の果てに漂っていることを感知します。
生物の生命力を吸収し、それを大きな魔法のパワーに変換する、現在のウォーロックも常用している「フェル = Fel」です。
アーケインが弱々しく馬鹿馬鹿しく感じられるほどに強度が高く、さらには悪魔も召喚できるフェルの魔力に惹(ひ)かれたサルキールは、自身を象徴していたアーケイン・パワーをあっさりと捨てて、フェル魔法の会得に全力で取り組みました。
そしてフェル魔法を自在にコントロールできるようになると、サルキールは弟子のアーキモンド(Archimonde)に命じて、キルジェイデン(Kil’jaeden)とヴェレン――共にサルキールと並ぶエレダーの実力者――を呼び寄せて、彼らにフェル魔法の発動を披露しました。
サルキールは、自身がアーケインの魔法で築き上げてきた建物の数々を、フェル魔法で召喚したインファーナルや地獄の炎で瞬時に焼き尽くしました。
この圧倒的なフェルのエネルギーによって、旧世代の魔力が置き換えられる新時代の幕開けを彼は高らかに主張し、同時に自分こそがエレダーの真の支配者たる存在であることを見せつけたのです。
誇らしげなサルキールの期待に反して、称賛するどころか戦りつを走らせるという、ごく当たり前の反応を見せたキルジェイデンとヴェレンは、サルキールに対してフェル魔法の一切の使用を固く禁じました。
それでもフェル魔法による支配を諦めきれないサルキールは、姿を消して、不眠不休でフェル魔法の技術を向上させつつ、秘密裏に悪魔の召喚を繰り返しては自軍の勢力を強化していきました。
「新時代の幕開けは近い――」
この彼のつぶやきを日常的に聞いていたサルキール軍――その筆頭格である弟子のアーキモンドもまた、サルキール同様に大きな野心を抱く実力者でした。
師の地位をなかなか継承できないことに苛立ちを覚えていたアーキモンドは、その師が同胞のエレダーに牙をむく準備を密かに整えているとキルジェイデンとヴェレンに密告し、討伐対象にして排除しようと画策しました。
アーキモンドの裏切りは果たして成功し、軍の内部情報を熟知するアーキモンドの指揮によって急襲を受けたサルキールは、その弟子による刀剣の一振りで斬首されました。
いきさつを知ったエレダーの民衆から英雄視され、もくろみ通りにサルキールの地位を取って代わったアーキモンドは、自ら討ち取ったサルキールの頭蓋骨をアーティファクトに加工して展示しました。
討伐を誇示すると同時に、この世のものでない力に取りつかれた愚か者の象徴として、それと同じ末路を辿ることがないよう広く警告することが展示の目的でした。
そして、その髑髏(どくろ)を、本来の名前の「サルキール」ではなく「マナアリ = 自然ならざる者」と呼ぶことにして、サルキールに不名誉を与えました。
行く先々でマナアリの髑髏を展示するために、それを日常的に携帯していたアーキモンドは、実はこの髑髏にサルキールの意思が残されていたことに気付いていませんでした。
密かに緩やかに、しかしながら確実に、マナアリの髑髏は身近な存在であるアーキモンドの精神をむしばんでいきました。
知らぬ内にフェルの魔力で汚染されていたアーキモンドは、やがて悪魔の軍団の創始者として活動し始めたサーゲラスがアルガス大陸に降臨した際に、フェルで満たされていたサーゲラスを無条件に崇拝してしまったのです。
サーゲラスによる支配は破滅をもたらすと預言したヴェレンはアルガス大陸から退避したのですが、すでに悪魔の力が内部に及んでいたアーキモンドに扇動されるようにして、大半のエレダー種族はサーゲラスに付き従いました。
彼らは、最終的には悪魔種族に変貌して、現在の焦熱の軍団(Burning Legion)における主要な一翼を担うまでに至りました。
エレダーの悪魔化が果たされた後のマナアリの髑髏のゆくえは、詳しく判明していません。
最近になってメフィストロス(Mephistroth)というボス級の悪魔が唐突に所有していたのですが、彼が入手した経緯もまた明らかになっていません。
とにかくアゼロスの防衛のために伝説のアーティファクトの力を必要としていた、ウォーロックのプレイヤー・キャラクターがそのメフィストロスを倒し、マナアリの髑髏を奪取しています。
武器アイテムとしてのマナアリの髑髏は、サブ・ウェポン(Off-hand)に分類され、装備するとメイン・ウェポン(Main-hand)のスロットに「サルキールの骨 = Spine of Thal’kiel」というダガーを自動的に装備させます。
また、マナアリの髑髏はアルネスと同じく意思を有し続けているために、装備中はいたる所でプレイヤーに語りかけてきます。
Pages: 1 2