「World of Warcraft」におけるヴァラニルは、プレイヤーのキャラクターが装備できるレジェンド武器の一つです。
レジェンド武器でありながらも、エピソードが少ないヴァラニルについて、判明していることは2つです。
まず1つは、アゼロス大陸を形成したタイタン種族が、アースン(Earthen)種族に譲った武器であるということです。
アースンは、タイタンが鉱石に生命を吹き込んで創造した生物であり、量産されてはアゼロスの大地を司る種族となり、タイタンが去った後には大陸の形成の続きを託されました。
そのアースン種族の初代の王に任命されたウレル・ストーンハート(Urel Stoneheart)に、ヴァラニルがタイタンから与えられました。
創造神のハンマーの聖なる力によって、ウレルもまた鉱石に生命を吹き込み、同胞となるアースンを量産していきました。
なお、現在のアゼロスで多数生息しているドワーフ種族は、この鉱石体であるアースン種族に、旧神のヨグ=サロンが「肉身の呪い = Curse of Flesh」をかけた結果として誕生した生物です。
もう1つのエピソードとは、アースン種族の間でぼっ発した大戦争の際に、粉々に砕かれたことです。
やはり旧神のヨグ=サロンのささやきによって、アースンの一部は「アイアン・ドワーフ」と呼ばれる旧神の手先に堕落してしまいました。
旧神の勢力となったアイアン・ドワーフは、旧神の敵であるタイタン種族に仕えるアースンと、必然的に敵対して大規模な紛争を起こしました。
その争いの記録は残されておらず、詳細も結果も明らかになっていませんが、このときにアースンの王ウレルが所持していたヴァラニルは破壊され、何十個もの破片となって散り散りになったことが語り継がれています。
プレイヤーは、大型ダンジョンのウルドゥアー(Ulduar)において、この地で飛散したヴァラニルの破片(Fragments of Val’anyr)を収集することによって、レジェンド武器であるヴァラニルの修復に取り掛かることができます。
ただ、それらを結合し、古代の伝説の武器として再生する技術は、いまのアゼロスには現存しません。
魔法の鉱石サロナイトを血液とする旧神ヨグ=サロンの体内に、かき集めた破片を投入して、それらを液化サロナイト――ヨグ=サロンの血――に漬け込むことが、聖なるハンマーのヴァラニルを復活させる手段でした。
実際のゲーム上においては、ヨグ=サロンはウルドゥアーの最終ボスであるため、プレイヤーがヴァラニルの完成の最終工程を経るには、ウルドゥアーの攻略を完遂できるグループに所属する必要がありました。
一週間ごとに数個しか収集できないヴァラニルの破片を合計30個も集めたうえに、ヒロイック版の高難度であるヨグ=サロン戦に勝利することで、ようやくヴァラニルは完成します。
戦士向けのサルファラスや、魔法使い向けのアティシュなどのように、「World of Warcraft」のレジェンド武器といえばアタッカー陣に最強の攻撃力をもたらす装備品でした。
その中でヴァラニルは、「World of Warcraft」で登場した史上唯一の回復役(Healer)向けのレジェンド武器です。
ヒーリング・スペルをかけた対象に、そのスペルがもたらす回復量の15%分に相当するダメージ吸収シールドを付与するという、簡単に言うなら「かなり強力な防衛効果」を発動します。
オーバー・ヒール(対象の最大体力を上回る過剰な回復)もシールド生成の対象となるため、当時はそのオーバー・ヒール量およびシールド生成力が格段に高かった、パラディン・クラスに与えられるケースが多かった武器でした。
他に回復役を担当できるドルイド、プリースト、シャーマンの各クラスも装備できた武器ですが、上記の理由によって、ハースストーンにおけるヴァラニルがパラディン・クラス専用の武器として登場したことは、割りと自然に受け入れられています。
回復役であった自分が、最初で最後に入手したレジェンド武器でもありました。
個人的には、所属していたギルドから信頼されてそれに応えた記憶が、このヴァラニルを最も愛着あるハースストーンのカードにさせています。
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