「World of Warcraft」におけるロークデラーは、ハンター・クラス専用の武器である弓です。
現在のゲーム内では入手不可能となっていますが、初代「World of Warcraft」がリリースされた当初におけるハンターたちにとっては、所有することがステータスにもなる上級装備品でした。
これを入手するためには、最高難度のダンジョンであったモルテン・コア(Molten Core)の奥深くで筆頭家老エグゼクタスを倒し、クエスト・アイテムを得て、それから「味方もペットもなし」の完全ソロの状態でエリート級の悪魔4体を倒す必要がありました。
アイテム・クオリティこそレジェンドに次ぐエピックではありましたが、「エピック中のエピック」の武器として、古参のプレイヤーたちの記憶に刻まれています。
アゼロス大陸の北西部には、野生の半神セナリウスの管轄下にあった、豊かで穏やかな森林地帯が連なっていました。
悪魔が襲来した古代戦争(War of the Ancients)がぼっ発すると、そこは無残にも悪魔の侵入によって汚染され尽くし、忌まわしい緑色のフェルの魔力――悪魔が扱う邪悪な魔法のエネルギー源――がはびこる地域に成り果てました。
その地帯が「フェルウッド = Felwood」と呼ばれるようになったゆえんです。
戦前にはそこで多数存在していた古代樹たちも、フェルの汚染によってほとんどが石化し、息絶えていました。
その1体であるヴァートラス(Vartrus the Ancient)の亡霊に、とあるハンターの英雄――プレイヤー・キャラクター――が接見すると、ヴァートラスは自分たちの復讐を果たすことをそのハンターに依頼します。
「自然にあふれていたこの一帯を朽ち果てさせた悪魔どもは、まだ付近に居残っている――奴らを討伐することで、これ以上の汚染の拡大を抑止すると同時に、死没した精霊たちを供養してほしい」
それに応えて見事に悪魔たちの首を持参したハンターに対し、ヴァートラスは謝意を表して、古代樹の神秘的な力が込められた特製の弓を造り、贈与しました。
フェルウッドの植物や古代樹の大半は枯れ果て、あるいは石化していましたが、ロークデラーと名付けられたその弓は、フェルウッドの景色とは対照的な様相を呈していました。
みずみずしい枝葉や褪せる(あせる)ことがない鮮やかな草花によって全体が覆われていて、封入された野生の力がにじみ出ているかのように緑色のオーラをまとっていました。
受け取ったハンターが知る由(よし)もない、フェルの魔力に侵食される以前のフェルウッドの有様を表現し、伝えているかのような出来栄えでした。