Warcraftの世界におけるルーンスピアは、トーレン種族のブラッドフーフ部族を象徴していた武器です。
約20世代にもわたって、同部族の首長に代々受け継がれてきました。
ルーンスピアの最後の所有者はブラッドフーフ部族の前首長のケーアン・ブラッドフーフであり、これは彼の息子のベインに継承されるはずでした。
アライアンス陣営に対する敵対心を強めたガロッシュ・ヘルスクリームがホード陣営の総大将になると、デスウィングの討伐の際に一時的に団結していたアライアンスとホードの両陣営の間柄は、再び悪化の一途をたどるようになりました。
その時期に、トーレン種族のドルイドとエルフ種族のドルイドが会合する、陣営の分け隔てを超えた平和の式典が、あるオークの部隊の急襲を受け、参加していた両種族のドルイドの全員が皆殺しに遭いました。
実際には旧神信者の教団である「トワイライト・ハンマー」のオークたちによる凶行だったのですが、ケーアン・ブラッドフーフは、ホードとアライアンスの友好を望まないガロッシュの指示による虐殺事件だと断定しました。
その事件を正し、普段よりの総大将としての資質を問うために、ケーアンは老年に差し掛かりながらもガロッシュへ決闘を申し込みました。
強さが尊ばれるオークの社会においては、リーダーに成り代わろうとする者が現れたときには、伝統的な決闘の「マッガラー = Mak’gora」が催され、挑戦者とリーダーとの1対1の戦いによって世代交代の可否を決めるしきたりがありました。
挑まれた側は拒むことができず、敗者は死をも覚悟せねばなりません。
この「マッガラー」は、オーク以外の種族が加わったホード陣営でも継承されていました。
ホードの本拠地オーグリマーの闘技場で開催された「マッガラー」において対峙した、ルーンスピアを構えるケーアンと、ゴアハウルを構えるガロッシュ――
ケーアンも歴戦の強者であることを熟知していた周囲の予想に反して、ガロッシュがあっさりとケーアンを斬殺することで決闘は決着しました。
ケーアンのライバルだった他部族のトーレンが、ケーアンを葬りたいがために事前にガロッシュのゴアハウルに猛毒を塗っていて、その毒がかすり傷からケーアンの体中に回り、ケーアンは身動きができなくなっていたのです。
このときには毒の存在を知らなかったガロッシュが、動きの鈍いケーアンを一方的に攻め寄せた際に、ケーアンのルーンスピアは粉々に破壊されています。
なお、密かに毒を塗ったことで決闘の栄誉を汚したケーアンのライバルのトーレンは、あの粗暴なガロッシュからも見放されて、ケーアンの息子のベインによる復讐より命からがら退避し、トーレン種族の社会から姿を消しました。
粉砕されたルーンスピアの破片の大半はケーアンの墓に添えられ、残りの一部は、後継者のベインと旧友のスロールが形見として保有することになりました。
ブラッドフーフ部族の代々の長は、ルーンスピアに自伝を短く彫り残すことが習わし(ならわし)となっていました。
その伝記はルーン文字で刻まれたために、打ち砕かれる前のルーンスピアは、ルーンの力による精霊魔法の発動をもたらしました。