「World of Warcraft」におけるテンポラスは、初の拡張セット「The Burning Crusade」で追加されたダンジョンで登場する、敵のボスの1体です。
ダメージの回復量が徐々に下がる状態変化を攻撃対象に付与し続けるため、それを一度リセットさせるために、攻撃を引き受ける盾役が2人いると安定するボス・エンカウンターでした。
10秒間に渡って攻撃速度と移動速度が2倍になる能力は、ハースストーンにおけるテンポラスの能力を連想させます。
テンポラスは、インフィニット・ドラゴンフライト(Infinite dragonflight)に属するドラゴン種族です。
旧神のささやきによって洗脳され、精神の破綻(はたん)をきたし、旧神の配下に成れ果てたブロンズ・ドラゴンが、インフィニット・ドラゴンと称されています。
ブロンズ・ドラゴンは、ノズドルムをリーダーとする、時間の流れを司るドラゴンフライトです。
現行のアゼロスの世界においては、ブロンズ・ドラゴンたちには旧神の力が及んでおらず、インフィニット・ドラゴンは存在しません。
しかしながら、アゼロスの時系列の管理を任され、過去や未来の世界へ行き来できるブロンズ・ドラゴンの派生版であるインフィニット・ドラゴンは、彼らが旧神に汚染されたバージョンのタイムラインにおける未来から、現在のアゼロスにタイム・ワープしてくるのです。
このタイムラインにおいては、かつてアゼロスの守護者であったデスウィングが、旧神の復活の条件である「守護者の全滅」を果たすために自決している。
そのインフィニット・ドラゴンたちの目標は、他の旧神配下たちと同じく、あらゆる手段を講じても旧神たちを復活させることです。
インフィニット・ドラゴンが最初に起こした行動は、スロールが青年時代であった過去にさかのぼり、彼の運命に干渉することです。
孤児だったスロールは、人間種族に拾われると、見世物(みせもの)となる剣闘士として過ごす日々を経て、オーク種族が奴隷同然の扱いを受ける組織から脱出した過去を持ちます。
そのスロールの脱出を妨害すれば、スロールは一生そこで埋没して世間で活躍することがなくなり、旧神の復活の障害となり得る存在――実際にスロールは、最強の旧神配下であるデスウィングを葬る――に成長しなくなると考えられたのです。
この企みは、現世のブロンズ・ドラゴンによって感知され、過去の世界が不当に操作されることを防ぐべく、ブロンズ・ドラゴンの依頼を受けたプレイヤーたちによって阻止されました。
続いてインフィニット・ドラゴンは、悪魔の呪いに操られたアゼロスのガーディアンのメディヴが敢行した、ダーク・ポータルの開通を妨害しようとしました。
このとき狂気に陥っていたメディヴは、ダーク・ポータルを通じて、同じく悪魔に操られたオークを別の惑星から呼び寄せ、悪魔のアゼロス侵攻の足がかりにしようとしていました。
実際にそれが果たされた後には、異世界のオーク軍がアゼロス大陸に大挙して襲来し、今日のアゼロスで現存するホード陣営が組織されるに至りました。
メディヴが引き起こしたオークとの大戦乱が発生していなければ、そこでアゼロスにもたらされた被害や損失は大幅に軽減されます。
しかし一方で、その戦乱によってアゼロスの社会が一体となり、強固なアライアンス陣営が組織されたことも事実です。
旧神の復活のためには、強敵であるアライアンス軍およびホード軍が存在する現在の環境よりも、アゼロス中が平和ボケのまま恐れるに足りない環境である方が都合がよい――
そう考えたインフィニット・ドラゴンは、メディヴのオーク召喚による大戦乱の発生を、アゼロスの歴史から消し去ることを画策しました。
こちらもブロンズ・ドラゴンに感知され、過去の世界の有様が史実通りに保たれるように、依頼されたプレイヤーたちがインフィニット・ドラゴンと相対します。
このときにプレイヤーたち冒険者は、過去のアゼロスの世界において、ダーク・ポータルの開通をメディヴに完遂させるために全力を尽くすことになります。
おびただしい数の戦死者を出し、アライアンス軍とホード軍が激突する第1次大戦をぼっ発させた、悪魔の手先であったメディヴの手助けをするのです。
そのまま放置してメディヴによるダーク・ポータルの開通を失敗させれば、歴史は変わり、戦乱の犠牲者の多くが救われることになるでしょう。
しかしながら、アライアンス陣営にとっては軍事組織を飛躍的に強化させた契機でもあったために、この事変がなかったことになれば、その後に訪れた悪魔襲来の第3次大戦においてロクな抵抗が出来ず、結局はもっと大きな被害がもたらされることが判明していました。
ホード陣営にとっても、ダーク・ポータルの開通がなければ運命が大きく変わり、絶滅の危機に瀕する(ひんする)ことになる恐れがあります。
ホードの故郷のドラエナ大陸は、悪魔とグルダンが乱発した生命吸収の邪悪な魔法によって荒廃していて、アゼロスへの侵攻は自分たちが生き残るための移住だったという側面もありました。
忌まわしい負の歴史として語り継がれているメディヴの悪行を、アライアンスもホードも体を張ってサポートせねばならないという、何とも皮肉な使命がプレイヤーたちに課せられたのです。
このときに戦う相手となる1体が、テンポラスです。
アゼロスにオークが襲来する直前の過去の世界において、テンポラスを含めたインフィニット・ドラゴン軍を全て撃退すると、Warcraftの世界で大変有名なメディヴによるダーク・ポータルの開通シーンを、プレイヤーはゲーム内において直接目撃することになります。