ハースストーンの開発陣の中心人物であった、ゲーム・デザイナーのベン・ブロード(Ben Brode)氏が、現地時間の4月20日付でブリザードを退社したと発表しました。
同氏は2002年より夜勤のゲーム・テスターとしてブリザード社におけるキャリアを開始し、「World of Warcraft」のTCG(トレーディング・カードゲーム)の製作活動を経て、2008年よりハースストーン開発チームのオリジナル・メンバーの一人となりました。
ハースストーンが大ヒットした後にメディアへ露出するようになると、陽気で大らかな性格を持つ同氏は一躍人気者となり、コミュニティから絶大な支持を受けました。
凄まじい声量の笑い声を連発したり、カードセットのプロモーションとしてラップ・ソングを披露するなど、ハースストーンのコミュニティにとって忘れられない伝説も残してきました。
以下に、ベン・ブロード氏がブリザード社員の最後の仕事として記した、お別れの挨拶文を日本語に訳して転載します。
「私の友人、同僚、そしてハースストーンのコミュニティへ」
ブリザード社に15年、ハースストーンの開発におよそ10年、それぞれ従事した後に、私は新しい旅路に出るという非常に難しい決断を下しました。
なんてこった、これはタイプして仕上げることが難しい文章だ――
20歳で入社した私の、当時の最初の仕事は「夜勤のゲーム・テスター」でした。
それを経てからは、ブリザードは私にとって居心地が良い会社であり続けました。
e-Sportsのイベントの配信者として活動し、BlizzConにおけるアナウンスの一員を担い、ロック・バンドを組んで演奏し、ラップ・ソングを作製し、素晴らしい人々と働くことができたのです。
ただ、最も大きな転機となったのは、2008年に「Team 5」――ハースストーンの開発チーム――に参加したことでした。
私はハースストーンを大変誇り高く感じています。
これは、業界に多大な影響を与えたのだと思っています。
人々は、私にこのようにも教えてくれました。
「ハースストーンが家族の関係をより密接にしてくれた」
「炉端の集いで出会った人々と親しい友人になることができた」
ハースストーンに感銘したことによって、自身がゲームの開発者になったという人もいるほどです。
相当な数の人々がたどる人生の、それぞれの一部に関与したなど、到底信じられないことです。
しかし、ハースストーンを誇りに思う以上に、私はその開発チームを誇りに思っています。
ハースストーンの開発チームのようなチームは、他に存在しません。
ハースストーンが開発され始めてからの10年の間に、様々な人々が出入りしましたが、私たちのチームには特別な魂が宿っています。
私たちの最も重要なプロダクトは、ゲームではなく、チームそのものであることを熟知していました。
偉大なチームは偉大な成果を残します。
そして、ハースストーンの開発チームは、最も偉大――活動内容だけにとどまらず、情熱を共有してきたことに関しても――であったと思っています。
私たちは仕事に就き、私たちが愛するゲームに集中して、毎日がより良いものとなるように努力しています。
私たちは、ゲームを改善するきっかけを探すために、頻繁にハースストーンのredditをチェックしています。
そこで展開されるユーモアや、激しい議論や、私たちが共有したゲームの高度な説明をする責任を持つことが、私は好きでした。
私たちはソーシャル・メディアの活用の可能性を高めることに努めていて、開発チームはその件について大きな助力をもたらしたと思っています。
開発チームがここ数年で大きく成長し、ゲームのデザインよりもチームの成長を導く役割に集中することになった自身の現状について、私は大変満足しています。
私は対外的な代表者として過剰な認知度を頂戴(ちょうだい)していますが、80名を超える開発メンバーがまだここには存在して、実際にカードや、酒場の喧嘩や、イベントや、1人用ミッションや、各種の機能を作り続けています。
このゲームは実現し得る最高の可能性を秘めていると確信していますし、ここから新世代のリーダーが台頭することを非常に楽しみにしています。
そして今、私は、自分の人生に狂ったようなリスクを負わせることができる、幸運な状況にあります――まとまりのない期待感と、少しの恐怖心を抱えながら、です。
私は、新しい会社の設立に協力する予定です。
そこで私たちは、おそらくゲームを製作することになるでしょうが、具体的にはまだ何も決まっていません。
デザインおよびプログラミング、そして実際に何かを創作することを心待ちにしています。
キャンパス内にあるスターバックスに行く機会は失いますけれどね。
ちくしょう。
ブリザード社へ――
私にチャンスを与えてくれて、そしてハースストーンとの出会いを与えてくれて、ありがとうございます。
御社が次に何を見せてくれるのか、待ちきれません。
そして、情熱的なハースストーンのプレイヤーのコミュニティへ――
あなたたちと、そして私たちが共有してきた笑いの数々と、お別れすることになります。
私にとってかけがえのないほどに楽しいハースストーンを構成した一員になってくれて、どうもありがとう。
その全てのモーメントを、私は愛してきました。
敬具
ベン・ブロード