Healerとは何か。
RPGで発生する「ダメージによる体力低下」を回復する、生存の維持に特化した役職である。
World of Warcraftのグループ戦はHealerありきのダメージ量が設定されているので、Healer抜きでは何も成し得ない。
だからHealerは常に必要とされる。
にも関わらず、Healer職は一般的に人気がない。
なぜか。
とりわけ大きな2つの理由が「地味」と「責任」だ。
体力回復にとどまらず、DebuffやBuffの管理、Healのペース配分、さらに最近では攻撃参加と、Healerが受け持つ作業の種類は多い。
それらは瞬発力、集中力、判断力を要しながらも、一つ一つの成功の精度と技量について気付いてもらえるケースは少ない。
表立たない膨大な組み立てのHeal Workを完璧に成立させたとしても、表立たないから質の高い作業として評価されることも少ない。
完璧な動きを見せるTankや、膨大なダメージ量を記録として残すDPSたちが一目瞭然で評価されるのとは対照的だ。
地味な作業に従事しながら、Tankに迫るほどの大きな責任を背負う。
10分弱の戦闘中にたった一度でもミスをしてTankを落とせば、全体の失敗に直結し、最初からやり直しとなってしまう。
私はよくHealerをスポーツのディフェンダーにたとえている。
オフェンスと同じく高いスキルを要するのに、一つ一つの成果が地味で華々しくなく、目立って評価されたり理解されることが少ない。
試合終了まで防げて当たり前だと言われ、過失やミスが一度も許されないプレッシャーと責任を抱える。
だがHealerもディフェンダーも、チームの土台として必要不可欠な役職だ。
ここがもろいとチームはどうにもならない。
安定感と信頼度が高く、しっかりとチームを支えるHealerは、ディフェンスの名選手と同様にかけがえのない存在として必ず重宝される。
アクシデントや危機にも動じずHeal Workを滞りなく遂行すれば、チーム全体の士気の向上に大きく関わることを、私自身も何度も実感してきた。
そのような達成感や信頼の獲得にやりがいを見出したり、日頃からスポーツの守備のプレイにも価値や魅力を認めている人は、Healerを楽しめる性質を持っているだろう。
自分が適していると感じたら、先入観にとらわれずに、ぜひ一度Healerとしての活動に挑戦してみてほしい。
現役のHealerであるならば、その道をより深めるためのヒントがあるか探ってみてほしい。
チーム戦ならではの「回復特化」という役割の体験は、MMORPGの醍醐味の一つだ。
経験を深めるほど、他のジャンルのゲームにはない独特の捨てがたい魅力を感じられるようになる。
Heal Workは特殊な作業だが、その特殊性ゆえに理解が十分に広まっていないので、理解するだけでも大多数のHealerとは一線を画すことができる。
その特殊なコンセプトの理解を促すガイドを連載する。
具体的なクラス別のHealingスペルの解説や、スペック、装備、エンカウンターの攻略情報などに関するアドバイスは取り扱わない。
拡張セットやパッチごとに移り変わることがない、Healerが心得ておくべき基本的な理念について次回より書き残していく。
Healerガイド一覧
(Alonsus Faol)
アゼロス全土の聖職者を束ねるファオル大司教は、World of Warcraftの世界においてHealerとしても最高権力者と認知される指導者である。
Hordeとの戦争に備えるため彼はローサー卿とともに、ローデロン帝国のウーサー、テュラリオン、ティリオンといった名だたる英雄たちにパラディンの道を教示し、聖騎士軍団「シルバーハンド」を創設した。
終戦後には傷ついた土地の復興と人々の救済に何年も取り組み、さらにノースシャイアの修道院とストームウィンドの光の大聖堂を再建した偉人としても語り継がれる。
死後にアンデッドのスコージと化すも、リッチキングの呪縛から逃れてフォーセイクンとなり、悪魔との三次大戦で神官たちを統率する大きな貢献を果たして大司教の座に復帰した。