正式リリースから2年目を迎えた2015年においても、ハースストーンの世界では様々な出来事がありました。
その2015年が終わろうとする今、この1年の間に起こったハースストーンの重大な出来事を、ニュース形式で振り返ります。
それぞれのニュースがコミュニティへ与えた反響の大きさの順に、ランクを定めて掲載します。
2014年3月11日にベータ・テストが完了し、正式なリリース版として世に登場したハースストーンは、予想を上回るほどのシェアを獲得して1周年を迎えました。
それを記念した公式の特設サイトが一時的に掲載され、多数のお祝いメッセージが寄せられました。
また、ブリザード社のCEOのマイク・モーハイム氏、およびブリザード社の各ゲームの開発陣が祝辞を述べる模様を収録した動画が掲載されました。
1周年企画の一環として、TwitterやFacebookで「#HSBirthday」のハッシュタグを付けてメッセージを送ることが、コミュニティに依頼されました。
日本語版がリリースされる以前の日本国内からでも、この企画に応じた方がいました。
中でも、日本初のハースストーン専門サイトであるHearthstone dojoは、「Hearthstone1周年記念」と題した投稿を掲載し、特別にこれを祝いました。
今でも「最高のゲーム」と評するStarCraft 2からハースストーンに目を向けた経緯や、「大勢の人々との出会いをプレゼントしてくれました」というハースストーンへの感謝の気持ちなどが記載されています。
この1周年に対するコミュニティからの反応で最も多かった意見は、ゲーム内に影響を及ぼす祝典の企画の要望です。
これからの「ハースストーンの誕生日」においては、特別な報酬やイベント等を用意し、さらに盛り上げてほしいという声です。
まだ正式リリースから2年も経過していない今の段階からプレイしている私たちに対して、長期のプレイ継続の特典となる報酬やサービスが今後に用意されると、個人的には嬉しく思います。
様々な要素が追加され、着実に内容の向上が続いているハースストーンの3年目にも、大きな期待が集められています。
モバイル版のシェア拡大のためには「必須」であると内外から指摘されていた、ハースストーンのスマートフォン版アプリがついにリリースされました。
スマートフォン版は、すでにリリースされていたタブレット版よりも物理的な表示画面が小さくなるため、快適にプレイできる専用のインターフェースの開発に多大な苦労があったことが、開発中の段階から打ち明けられていました。
待望されていながら、リリースまでに長い時間を要した原因です。
ようやく登場したスマートフォン版は、手札をタップすることでこれを拡大および縮小表示するなどの工夫が施されていて、小さな画面でもプレイしやすいカードゲームとして高い評価を得ることに成功しました。
このリリースによって、国内外におけるハースストーンのプレイヤー数がさらに増加しました。
スマートフォン版は、タブレット版にも対応するユニバーサル・アプリとして登場しました。
タブレット版のアプリとは別に、スマートフォン版のアプリが単独でリリースされた訳ではありません。
同じハースストーン・アプリでも、6インチ以上の画面のモバイル端末にインストールされればタブレット版として、6インチ以下の画面のモバイル端末にインストールされればスマートフォン版として起動します。
リリースされた当初においては、小さな画面での操作に慣れないプレイヤーが、呪文を自分のヒーローにプレイして自傷するアクシデントが頻発していました。
カードの操作の受け付けをスワイプのみとするのではなく、PC版と同様にタップでカードを一時的に「持つ」行為を可能とする、「タップ・モード」の搭載が、タブレット版のリリース時より継続して求められています。
国内のコミュニティに対して最大級の衝撃を与えた日本語版のリリースは、海外でも小さくないニュースとして報じられました。
「マジック:ザ・ギャザリング」において日本が世界王者を複数名輩出していることを引き合いに出して、日本勢の本格的なハースストーンへの参戦は興味深く楽しみであるという声が挙がりました。
また、日本が誇る声優陣による日本語音声の吹き替えは、他国の吹き替えと比してはあまりにクオリティが高いとして、アジア圏内を中心に「音声だけ日本語化できないか」という声が続出しました。
このニュースにおける、海外のコミュニティの最大の関心事は、日本語版の発表を記念したカードパックをプレゼントするキャンペーンであったようです。
キャンペーンのページでアカウントのメール・アドレスを登録すれば、クラシック・カードパック1つが与えられることから、この内容を英訳して情報交換するフォーラムのスレッドが一時的に盛り上がりました。
結局はアジア地域のサーバーでしか与えられないことが判明し、この件は一気に沈静化した模様です。
既存のアジア地域のプレイヤーからは、日本人のプレイヤーと対戦できることを喜び、私たちを歓迎する内容のコメントが複数寄せられました。
そうしたコメントを埋没させるように、「アメリカをデフォルトの地域に」「フォントを変更して」などといった日本のプレイヤーからの独特の要望が、日本語版のリリースを発表する公式ブログに多数投稿されました。
本来ならば感動や感謝を共有する場が、他の所で主張されるべき要望によって独占されことについては、少し残念に思いました。
第21回の酒場の喧嘩「力をあわせてメカゾッドを倒そう!」では、ハースストーンでは初めての試みとなる協力型の対戦ルールが採用されました。
いつもは敵である相手のプレイヤーが仲間となり、場にいるボス・ミニオンを倒すことで両方のプレイヤーが勝利するというルールです。
この回よりも攻略法が多く共有された酒場の喧嘩はいくつかありましたが、登場した衝撃の大きさを物語るコメントや、高く評価するコメントが圧倒的に多かったのが、この協力型の酒場の喧嘩でした。
「今後は全てこの協力型モードでいい」という声も多数挙がりました。
その他にも、以下のようなフィードバックが寄せられました。
・久々に、カードパックを獲得した後も繰り返しプレイした。
・協力型のアドベンチャーも追加してほしい。
・相手からの「見事だ」が、いつもより嬉しかった。
・この対戦だけ相手とのチャットを許可してほしかった。
・2対2のプレイヤー同士の対戦とかも面白そう。
負けると非公開の対戦レーティングが下がることから、パートナーとなる対戦相手が低レートのプレイヤーとなり、負けるほどに戦闘が困難になるのは課題であると個人的には思いました。
その後に開催された「BlizzCon 2015」において、この協力型の対戦ルールは最も作成が大変だった酒場の喧嘩であることが、開発陣から明かされました。
また、当初のボスの配置位置が中央固定であった(他のミニオンの表示が制限されるので断念)ことや、ゲーム性を高めるためにクラスやデッキを固定化したことなどが説明されました。
今年の「BlizzCon」において発表されたハースストーンの新コンテンツは、新しいアドベンチャーの「リーグ・オブ・エクスプローラー」でした。
「ナクスラーマスの呪い」「ブラックロックマウンテン」に続く第3のアドベンチャー・モードで、探検家として秘宝の獲得を目指すというストーリーです。
「エクスプローラーズ・リーグ」に所属する、プレイヤーの味方となるキャラクターがプレイ中にセリフをよく話すことが特徴的でした。
このアドベンチャーのリリースより、新しい能力のキーワードとなる発見(Discover)がゲームに追加されました。
発見の能力が発動されると、記述された内容のカードがランダムに3枚提示され、プレイヤーはその中から任意の1枚を手札に加えることができます。
冒険家や考古学者が活躍するアドベンチャーの舞台にふさわしい能力です。
このエンカウンターは、ボスの体力をゼロにするのではなく、指定されたターン数を生き延びることが勝利条件となります。
他のアドベンチャーと比べては、リリースの発表に対するコミュニティの反響は小さな規模にとどまりました。
その最大の理由は、ハースストーンの新コンテンツとしては珍しく、発表からリリースまでの間がわずかに1週間と短かったことです。
嬉しいサプライズではありましたが、コミュニティはリリースの発表を十分に歓迎する間もなく、新カードの感想と批評、ボス戦の攻略、新たなデッキの作成と、メインとなる話題をあわただしく移り変えていました。
これまで9体に限定されていたヒーローに、マグニ・ブロンズビアード、アレリア・ウィンドランナー、メディヴの3体が追加されました。
マグニはウォリアー・クラス、アレリアはハンター・クラス、メディヴはメイジ・クラスのヒーローで、それぞれのクラスをプレイする際にはヒーローを選択できるようになりました。
追加のヒーローは純粋な装飾要素です。
新しいクラス専用のカードやヒーローパワーなどは追加されず、対戦内容に影響を及ぼすものではありません。
追加のヒーローを適用すると、特別な演出効果が発生します。
対戦中のメッセージも、各ヒーローの独自なものに全て置き換えられます。
追加のヒーローは有料コンテンツで、現金購入のみが受け付けられる(ゴールドでは購入できない)販売アイテムです。
価格は1体ごとに9.99ドル(PC版)で、ゲーム内のショップから購入できます。
購入すると、各ヒーローの要素をテーマとしたCard Backが特典として与えられます。
今後に残り6クラスの追加ヒーローも販売されることが、すでに開発陣から言及されています。
いずれのヒーローも、「Warcraft」シリーズを象徴するキャラクターになるとのことです。
トーレン種族の首長であるHamuulがドルイドのヒーローとして、Heroes of the Stormにも登場するTyrandeがプリーストのヒーローとして登場するのではないかなどと、コミュニティから予想されています。
公式世界大会の「2015 Hearthstone World Championship」の決勝大会が開催され、Ostkaka選手が2015年度の世界王者の栄誉に輝きました。
Ostkaka選手は、スウェーデン国籍である19歳の若手プロ選手です。
普段はヨーロッパ地域ではなく、アメリカ地域でランキング戦に臨み、ここで長期にわたって好成績を挙げ続けていました。
名勝負となったThjis選手との激戦に競り勝ち、その勢いを持ち込んだ決勝戦で3-0のストレート勝ちを果たし、優勝をたぐり寄せました。
今年の公式世界大会において、前回大会から大きく変更された事項の一つは、コンクエスト・フォーマットが採用されたことです。
勝利したデッキがその対戦から除外されて、残りのデッキで戦い、用意したデッキ全てでそれぞれ勝利することが求められる対戦ルールです。
このルールは、賛否両論あれど、おおむね好評であったように思われました。
また、アメリカ、ヨーロッパ、中国、アジアの4地域で地域選手権(Regional Championship)が開催され、この予選大会にも賞金が用意されました。
もちろん来年も公式世界大会が開催されます。
そして、その予選へ出場するために必要となるポイントは、さっそく今月(2015年12月)のランキング戦や大会から発生します。
地域選手権が3回に分けて行われることや、相手のデッキを1つ除外する対戦ルールの追加などの仕様変更があるので、出場を目指す方は以下の公式発表を熟読してください。
ポイントが付与される大会は、以下の投稿より参照できます。
2年目を迎えた公式世界大会においてコミュニティの間で懸念された事項は、昨年の決勝進出者16名のうち、今年も決勝に進出したのはKranich選手ただ一人ということでした。
初代の世界王者に輝いたFirebat選手を始めとした他の15名のほとんどは、地域選手権への出場すら叶わず敗退しました。
トップ・クラスの選手たちの実力がきっ抗していることが最大の理由でしょうが、「実力でなく運が支配するゲーム」というネガティブな批判を不本意にも裏付ける結果となってしまいました。
拡張セット「グランドトーナメント」がリリースされると同時に、ハースストーンの新たな報酬となる守護者の宝箱(Ranked Chest)がゲームに追加されました。
守護者の宝箱は、ランキング戦のシーズンごとの報酬で、ランクが20、または20より上位に達するとシーズンの終了時に与えられます。
報酬の内容は、ゴールデン版のカード、魔素(Arcane Dust)、そしてシーズンごとの参加報酬となるCard Back(カード裏面のデザイン)です。
ランキング戦でランクを向上させると、宝箱のランクも向上して報酬が増えることが特徴です。
宝箱のランクは、そのシーズン中にランキング戦で到達した最高ランクとなります。
ランキング戦でのランクの向上を奨励する追加要素となりました。
これまでは、ランク20に到達することで得られるCard Back以外に主な報酬がないことから、ランクを高めることへの意欲に欠けるという指摘がありました。
そうした数々の意見がくみとられ、ランキング戦へ参加し続けるモチベーションをプレイヤーに保ち続けさせるために、この新たな報酬システムが採用されました。
ゴールデン・カードを還元すると多量の魔素を得ることができるので、経験の浅いプレイヤーがカードを作成していくうえでの大きな助成にもなっています。
ハースストーンのゲーム・デザイナーとしておなじみであるBen Brode氏が、ハースストーンの公式Youtubeチャンネルに出演し、ゲーム・デザインの考察について論じました。
「カードがなくて勝てないから新規参入者が参加しづらい」「カードの強さのインフレ化が心配」という、プレイヤーからの2種類のフィードバックが大きな懸念であることを、同氏は動画で打ち明けました。
自身と開発陣が思うところを主張したうえで、コミュニティに対して意見を必要とする姿勢を見せたことで、この問題に対する議論が活発に行われました。
「カードがなくて勝てないから新規参入者が参加しづらい」については、「古いセットのカードが使用不可となる『スタンダード・フォーマット』を採用してはどうか」という意見が最も多く寄せられました。
また、経験者のモチベーションまで奪わないよう、新規と経験者の共存を目指す重要性についても多く訴えられました。
「カードの強さのインフレ化が心配」については、それを肯定する立場の開発陣に対し、懐疑的な意見が多数寄せられました。
否定側の大きな主張の一つは、各カードが強くなるごとに、カードをプレイできない「テンポ損失」のペナルティがより深刻化するゲームになるということです。
序盤に1ターンでもカードをプレイできねば即敗北に直結し、テンポ重視の速攻型のデッキばかりとなるような事態の発生が危惧されています。
また、カードが強くるほどにウォーロック以外のヒーローパワーの価値が下がり、ヒーローの体力が30のままでは心もとなくなる、「相対的なヒーローの弱体化」も懸念されています。
過去のセットのカードが実質的に無価値となり、「新規参入者が参加しづらい」を同時に解消できるという、肯定派の少数意見も見受けられました。
昨年の公式世界大会における高笑いで大きな話題を集めたBen Brode氏ですが、今年は一転して真剣な表情で動画に出演し、再び話題を集めました。
その後も3回にわたって、ゲーム・デザインの考察を論じる動画に出演しています。
その中の「基本カード」と「一貫性」は、日本のハースストーン公式チャンネルより、日本語の字幕付きで視聴することができます。
今年の年明けに大層盛り上がった話題は、パッチによって墓掘り人が弱体化されたことです。
墓掘り人は、アドベンチャー「ナクスラーマスの呪い」の報酬カードで、「断末魔を持つミニオンを召喚する度に+1/+1を得る」という能力を持つミニオンでした。
それがパッチによって、攻撃力だけ+1を得る能力に変更されました。
弱体化される前の墓掘り人は、主にハンターやウォーロックの速攻型デッキで用いられ、脅威の存在となっていました。
序盤から際限なくステータス値が上昇していくため、放置すると取り返しがつかなくなり、最初の数ターンで勝負を決してしまうこともよくありました。
同じタイプのデッキの対戦においては、最初の手札に墓掘り人があるかないかが、そのまま勝敗に直結する事態となっていました。
弱体化された以降は、体力が上昇しないために、序盤にプレイできるミニオンや呪文で容易に排除できるようになりました。
これを契機として、現在まで墓掘り人は通常の対戦のシーンから姿を消しています。
この弱体化が決定された大きなきっかけは、その直前にGamespotにおいて掲載されたBen Brode氏のインタビューにあります。
ここで同氏が「墓掘り人のプレイは終盤ではとても非力となるので、現時点では弱体化に値しない」と発言した内容によって、墓掘り人に関する議論が最高潮に達しました。
このインタビューは墓掘り人の脅威の継続が認められる前に行われたものだったのですが、遅れて掲載されたことによって、「現状を理解していない」という大きな反感が発生してしまいました。
この墓掘り人の弱体化によって「さよなら、ハンター」とハンターを揶揄する声も多数出ましたが、プロ選手のXixo氏が新シーズンにFaceハンターで24時間以内のレジェンド達成を果たすなど、結局は速攻型のハンターの猛威はしばらく収まりませんでした。
ゲームの出展イベントである「Pax East」において、新コンテンツはとなる「ブラックロックマウンテン」のリリースが発表されました。
「ナクスラーマスの呪い」に続く、第2弾のアドベンチャー・モードです。
アドベンチャー・モードは、デジタル・カードゲームならではのコンテンツとして、その登場が大きなインパクトを与えていました。
World of WarcraftのBlackrock Mountainが舞台であり、ここを本拠地とする2体の大ボスのラグナロスとネファリアンが主役となるストーリーです。
特別な意味を持たなかったドラゴン種族と作用するカードが初めて追加されたことや、ターン中に死亡したミニオンの数だけコストが下がるメカニズムを持つカードが登場しました。
リリース前に購入が可能となる事前販売が行われた最初のコンテンツでした。
「ブラックロックマウンテン」では、リリース前に全エリアの入場権を現金で一括購入すると、特典としてMolten Core Card Backが与えられました。
リニューアルされたショップ内から購入することが十分に周知されていなかったり、またもや購入時のエラーが起こるなどのトラブルが散発していました。
ハースストーンのファンである一般プレイヤーのCrescendoさんが、コミュニティに向けたお別れの挨拶をRedditに投稿しました。
Crescendoさんは癌(がん)患者で、「復帰できる見込みがあまりない」と診断されていました。
病院へ移る前に、悲しくもハースストーンのプレイの継続を断念せざるを得ない事情を掲載し、少しでも多くの人にこれを共有してほしいと願いました。
掲載された途端に、この投稿には大勢のプレイヤーからの返信が寄せられました。
そのほとんどが、Crescendoさんに対する激励と、Crescendoさんの復帰を願う声でした。
プロ選手や開発陣までもが特別にコメントするなど、多くの人の心を動かす内容の投稿となりました。
2015年12月現在も、Redditのハースストーン・カテゴリーの総合トップ1位となっている投稿です。
約5か月後には、Crescendoさんの症状が快方に向かっていることが、Crescendoさん自身によるコメントによって明らかになりました。
応援していた多くの人々が、Crescendoさんが存命中である報告を受けて喜びの声を挙げたことによって、再び感動をもたらす投稿となりました。
何度でも蘇る「不死」のミニオンであるドレッドスティードのフレイバー・テキストに、Crescendoさんが記載されたことにも大きな反響がありました。
プレイ、ソロ・アドベンチャー、闘技場に続く、第4のプレイ・モードが新設されました。
「酒場の喧嘩の専用ヒーローでプレイする」「カードのコストがランダムに変化する」などの、毎回ごとに変わる特殊ルールが適用される、無料のプレイ・モードです。
1週間ごとの期間に区切られて開催され、各回につき一度だけクラシック・カードパックが与えられる勝利ボーナスがあります。
記念すべき第1回は、ヒーローがラグナロスとネファリアンとなる「ブラックロック・マウンテンの決戦」で、大きなインパクトをプレイヤーに与えました。
アドベンチャー「ブラックロックマウンテン」で登場したミニオンたちが勢揃いする、派手な戦闘を展開させるルールでした。
酒場の喧嘩は、特にハースストーンを初めて間もないプレイヤーにとって大きな価値があるプレイ・モードとなりました。
現在のハースストーンには、メイン・モードとなるランキング戦において、初心者がカード資産の差を痛感する敗戦が早期に発生する課題があります。
初心者がプレイする意欲を失いかねない、解決せねばならない課題です。
特殊ルールが適用される酒場の喧嘩は、運の要素が試合に大きな影響を与えることが多く、編集済みのデッキが用意されることもあり、カード資産が少ない初心者でも互角に近い条件で楽しめます。
酒場の喧嘩で勝利することでもクエストが達成され、ゴールドを得ることができます。
これによって、初心者がランキング戦で頭打ちとなっても、ハースストーンのプレイを継続しやすくなりました。
逆に経験者に対しては、現状ではアピール不足であることが、酒場の喧嘩自体の課題です。
上述した運が支配する試合展開や、デッキの構築作業がないことなどは、必ずしも経験者が楽しめる要素ではありません。
無料で参加できて、負けても失うものがないことから、カードパックの獲得後はプレイされなかったり、逆転を狙わない早期の降参が多発するなどの問題を抱えています。
守護者の宝箱(ランキング戦の報酬)のような、勝利数に応じた報酬を用意するなどの、酒場の喧嘩のプレイ継続に意味を持たせる必要があると思われます。
カードの内容が変更されるたびに小さくない反響が起こりますが、他の何よりも大きな規模のフィードバックがあったと感じられたのは、ウォーソングの武将の変更です。
「攻撃力が3以下のミニオンに突撃を与える」という同ミニオンの能力が、「突撃を持つミニオンに攻撃力+1を付与する」という能力に変更されました。
その背景には、秋季に猛威を振るって手がつけられなかった、パトロン・ウォリアーの存在がありました。
パトロン・ウォリアーは、ぐったりガブ呑み亭の常連を主軸に据えるウォリアーのデッキで、分裂したこのミニオンたちとウォーソングの武将の組み合わせが即死コンボの一つとなっていました。
能力の変更によって分裂ミニオンに突撃が与えられなくなり、このコンボは封印されることになりました。
パトロン・ウォリアーは、ベータ・テスト時代のハンターを彷彿させる即死系のデッキで、高ランク戦においても最強の名を欲しいままにしました。
パトロン・ウォリアーの一強時代が比較的長く続いたため、それに嫌気が差していたコミュニティのうっ憤が弱体化の発表と同時に一気に爆発し、大きな反響につながりました。
弱体化が施行されてからは、パトロン・ウォリアーは引き続き存続したものの、ウォーソングの武将が対戦で用いられることはほぼなくなりました。
施行されてからもなお、パトロン・ウォリアーを弱体化するための手段が、この変更で適切であったかどうかの議論がしばらく活発に行われました。
数々のプロ選手もこの議論に参加し、中でも人気選手であるTrump氏は、ウォーソングの武将の個性を消す変更に対して「極めてひどい」と吐き捨てるほどに否定的な立場をとりました。
今年のハースストーンの話題の中で、コミュニティからのコメント数が断トツに多かったのが、「グランドトーナメント」のリリース関連です。
「グランドトーナメント」は「ゴブリンvsノーム」に続く第2の拡張セットで、132種類の新カードで構成されています。
発表からリリースまでの約1か月間は、この新カードが発表されるたびに、それに関する大小のトピックが乱立しました。
拡張セットとは、既存のカード群に追加される新カードのセットのことで、エキスパンションと呼ばれることもあります。
拡張カードパックを購入して開封することで、その新カード群をコレクションとして収集できます。
「グランドトーナメント」は、World of Warcraftのワールド・イベントとして登場したアージェント・トーナメントをテーマとしています。
新カードの多くは、このテーマに沿った内容となりました。
「グランドトーナメント」のリリースより、激励(Inspire)という新たな能力のキーワードがゲームに追加されました。
激励はミニオンの能力で、自軍のヒーローのヒーローパワーがプレイされるたびに、記述された効果を発動します。
また、激励以外にも、ヒーローパワーのプレイと作用するカードが複数収録されました。
Joustという、新しいメカニズムもゲームに追加されました。
Joustは、お互いのデッキの中からランダムに1枚のミニオンカードを参照し、自軍側のコスト数が高ければ効果を発動するという斬新なメカニズムです。
新カードの発表の段階で、期待値が最も高かったクラスはシャーマンでした。
トーテム種族を主軸に据えるデッキが初めて台頭するかと思われましたが、結局は年内に流行することはなく、期待外れに終わりました。
生きている根とダーナサスの志願兵を得て着実にパワーアップしたドルイドや、謎めいた挑戦者やマーロック騎士という大きな「飛び道具」を得たパラディン、ワームレストのエージェントやトワイライトの守護者を得たドラゴンを扱うプリーストなどが、リリースされた後に躍進しました。
これまでに、ハースストーンのメイン・コンテンツは「アドベンチャー → 拡張セット → アドベンチャー → 拡張セット → アドベンチャー」という順にリリースされてきました。
この順序に従い、来年の最初の新コンテンツは第3の拡張セットになると予想されていますが、果たしてその通りとなるのでしょうか――
今年の公式世界大会では、日本地区が正式にサポートされ、日本地区のプレイヤーの地域選手権出場枠が1つ確保されました。
その地域選手権の出場をかけて争われる日本地区予選が、東京都内で開催されました。
日本在住のプレイヤーだけが出場する、ブリザード社の公式オフライン大会です。
Kno選手とMyrzaki選手が対決した決勝戦は、最後まで白熱した試合となりました。
2対2の互角の成績で迎えた最終戦において、相手を圧倒する実力を見せたMyrzaki選手に対し、最後まであきらめずに好ドローを冷静に活かしたKno選手が土壇場で逆転勝利しました。
残念ながら、この大会を収録した動画は削除されています。
当時の会場内の興奮まで伝わるような熱意でもって、この大会の決勝戦の模様を描いた観戦記が、ハースストーンの攻略サイトであるすべ半Hearthstoneで掲載されています。
おすすめの記事ですので、ぜひ一度ご覧ください。
日本版ハースストーンの販売促進イベントとして、「ハースストーン・チャレンジ」が開催されました。
ハースストーンの公式行事では初となる日本限定開催のイベントでした。
Hikakin氏を始めとする、国内で活躍する人気のYoutuberが、日本のプロ選手とともに、抽選で選ばれた一般プレイヤーと対戦するという内容です。
その対戦の模様は、各Youtuberの公式チャンネルにおいて配信されました。
これらの配信は、未経験者に対するハースストーンの大きなアピールとなりました。
開催するにあたって、特設サイトが掲載されました。
指定された条件を満たしてツイートすることによって、カードパックが抽選でプレゼントされたり、プロ選手から質問の回答を受けることができるなどの特典が用意されました。
日本地区予選を勝ち抜いて日本代表となったKno選手が、アジア地域選手権で準優勝を果たし、さらには決勝大会の準決勝へ進出しました。
惜しくもそこで敗退しましたが、名だたる強豪を次々と倒して、世界のベスト4へ入る快挙を成し遂げました。
Kno選手が入賞した結果は、世界のコミュニティに向けて2つの大きなインパクトを残しました。
1つは、Kno選手がわずか1しかない日本地区の出場枠から世界のベスト4まで進出したことです。
「日本のレベルの高さが計り知れない」「日本の出場枠が1しかないのは適切なのか」などといったコメントが寄せられていました。
折しも日本語版が新たにリリースされた直後のことで、日本国内のハースストーンのシーンを大々的にアピールする結果となりました。
もう1つは、Kno選手は現役の大学生であり、プロ選手ではなかったことです。
プロ・チーム無所属でありながら、BlizzConで開催されるハースストーンの公式大会へ進出したのは、Kno選手が初めてです。
同大会の主要テーマの1つである「一般人も世界王者を狙える」を具現化したプレイヤーとなりました。
昨年の世界大会では、日本在住のアメリカ人であるDTwo選手が準決勝進出を果たしています。
日本のコミュニティから2年連続で4強進出者が輩出されたことになります。
ブリザード社は、居住地が日本であるプレイヤー全員に対して、アジア地域へのサーバー移行を促す特別な措置を取りました。
アメリカ地域で購入されたコンテンツを、同じアカウントのアジア地域に、購入した数だけ無償で配布するという内容の措置です。
この措置が取られた理由は、日本のハースストーン・プレイヤーの大半がアメリカ地域でプレイしている状況下で、ブリザード社が日本をアジア地域の管轄内に所属させたからです。
新規のプレイヤーが開始する際のデフォルトの地域も、アジア地域となりました。
プレイ地域を変えることになると、これまで収集したカード資産が無価値となるため、アメリカ地域でプレイしていた多くの日本プレイヤーがこの変更に猛反発しました。
この状況を把握し、このままでは新規と既存の国内プレイヤーが地域別に分断されることを危惧した運営側は、上述した思い切った措置を取ることを決定したのです。
無償の配布が完了されるまでに時間がかかったこともあり、開設されたばかりの日本版の公式フォーラムでは、しばらくこの措置に対する質問や話題で埋め尽くされました。
このままアメリカ地域でプレイするか、アジア地域に移行するかの議論も活発に行われました。
この措置が取られた契機は、日本の地域関連の意見が直接運営側に多数届けられたことです。
ユーザーの少数意見も尊重する(それが実際に反映され得る)ブリザード社のゲームにおいては、これほどの反響があれば即座に納得できるリアクションが返ります。
同社製のゲームでは、ユーザーの意見が反映されるのを実感できるケースが少なくありません。
ハースストーンにおいては、ユーザーからのフィードバックが大きな重要性を持っています。
日本国内のハースストーンのコミュニティにおいては、これ以上の特大ニュースは存在しなかったでしょう。
今後も、これを上回るほどに影響度があるニュースは生まれないかもしれません。
何と、ハースストーンの完全日本語版がリリースされました。
しかも、「英語音声+日本語字幕」のような生半可なローカライズではなく、テキストの全文日本語化と、豪華声優陣による日本語音声の吹き替えが実現されました。
発表の映像をリアルタイムで視聴している最中には、「まさか、まさか」の思いしか頭に浮かばなかったことを今でも覚えています。
ブリザード社自らが公式に日本語ローカライズを手掛ける、初の事例となりました。
なかなか公式の日本語化が実現しないことを経験されてきた往年のブリザード・ファンの方々は、この発表には少なからず驚かれたのではないかと思います。
ゲームだけでなく、公式サイト、公式フォーラム、そしてBattle.netまでもが日本語化されるのを知り、いよいよブリザード社は日本市場と本気で付き合う気なのだと実感しました。
言語サポートが提供されていなかったにも関わらず、すでに数十万人もの日本在住のユーザーがハースストーンをプレイしていたとのことです。
この実績が主な要因となって、日本語化が着手されたのだそうです。
発表時には、ブリザード社でアジア市場のマネージメントを統括されているHamilton Chu氏がわざわざ来日し、日本語版のプロモーションを担当されました。
完成された日本語版によるエキシビジョン・マッチに感動し、「お前の魂は我がものとなろう!」に震え、「君のターン!」を目撃し、酒場のオヤジの声を担当された落合弘治さんがスペシャル・ゲストとして登場し、今月中にもリリースされるという発表があったという、あのプロモーション・イベントは、終始興奮させられる内容でした。
そして、リリースされる前の発表の段階からすでに、日本国内のプレイヤーが急増したように感じました。
興味を持っていたけれど言語問題によってプレイすることをためらっていた、潜在的な参加者が多数存在していたのだと思われます。
これまでブリザード社のゲームを長年プレイしてきた中で、これほどに嬉しいサプライズとなるニュースは過去にありませんでした。
今さらではありますが、日本語化を決断してくださったハースストーンの開発スタッフとブリザード社に、特大の感謝を申し上げます。