近日中に適用されるパッチ「6.1.3」の内容に、カードの能力の修正が含まれることが公式に発表されました。
修正対象となるカードは7種類です。
いずれも最近のランク戦や大会において、ネガティブな感情を与え得る強さを有しているカードです。
修正内容は、ほとんどが直接的な弱体化です。
それぞれ対象カードの使用率を抑えるとともに、コミュニティからの苦情に近い要望へ応える狙いがあるものと思われます。
以下に、対象となる7種類のカードの修正内容を掲載します。
2016年9月末の時点で、全クラスの中で使用率がおよそ20%にも達していると言われるシャーマンは、やはり弱体化の標的の筆頭となりました。
岩穿ちの武器が弱体化される理由は、「早期の除去手段になること」「お手軽な大ダメージ・コンボのパーツになること」「いつの時代の『スタンダード・フォーマット』でも使用できるカードであること」であるそうです。
トンネル・トログとトーテム・ゴーレムも起用されることが多く、弱体化の候補となりましたが、いずれも半年程度で「スタンダード・フォーマット」から外れるカードであるために、岩穿ちの武器が選ばれたと説明されています。
個人的には、この修正は大いに歓迎するところです。
序盤戦で、タスカーのトーテム師からランダムにトーテム・ゴーレムや炎の舌のトーテムなどが召喚されると、その時点で試合が崩壊するほどの有利が与えられるからです。
そのような事態については、「グランドトーナメント」のリリース前にカードが発表された時点で、あらゆるプロ選手たちが危惧を表明していました。
それから1年以上が経過しましたが、やはり弱体化を受ける結果となりました。
今後は、シャーマンのヒーローパワーのプレイによって出現する、4種の基本トーテムしか召喚しないようになります。
現在、ほぼ全てのハンターのデッキで起用されている荒野の呼び声も弱体化されます。
このカードについても、発表された時点で以下のような疑問の声が多数挙がっていました。
「コスト3に比しては強い獣の相棒の3枚分が、わずかコスト8?」
「旧神」セットの中でも最強クラスになるだろうと予想され、実際そのとおりになったカードの弱体化に異議はありません。
しかしながら、現時点においては「コスト9でも使う」という意見が多数を占めているようです。
ウォリアーの低コストの除去カードと言えば、おなじみの止めの一撃とシールドスラムのセットです。
とりわけ止めの一撃は、ウォリアーが豊富に持つ全体1ダメージの能力と好相性であるために、デッキの種類を問わず、シールドスラムよりもさらに起用率が高くなっているカードです。
そして、シールドスラムがエピック・レアリティのカードであるのに対し、止めの一撃は誰もが最初から所有する「基本」セットのカードです。
起用率の高さと、「基本」セットの中では特別に強いという理由から、弱体化を受けることになりました。
ただ、現時点においては「大きな弱体化になっていない」という意見が大半を占めているように見受けられます。
コストが2となっても、相変わらずテンポ・アドバンテージを大きく稼げる手段とみなされているようです。
突撃と攻撃力+2を付与する → 突撃だけを付与する
付与したミニオンは次のターンまでヒーローを攻撃できなくなる
ウォリアーの突撃は、疾風を持つ激昂のウォーゲンと組み合わせた即死コンボのパーツとして用いられています。
今回の変更の要点は、付与したターンの間はヒーローに対する攻撃が不可能となることであり、ウォーゲンの即死コンボを抑止するために施されます。
ハースストーンの開発陣は、フルに近いヒーローの体力を1ターンで削りきるような即死コンボの存在を、否定的にとらえています。
ベータ・テストの段階から発表されていたカードバランスの修正方針に基づいた修正対象の筆頭であり、ゲームへの興味やゲームプレイの楽しさを大きく失わさせる要素と断定されています。
そのため、トップ・シーンでも扱われるようになった即死コンボは、常に優先的な排除の対象となります。
これまでメイジの各種凍結呪文、リロイ・ジェンキンス、ウォーソングの武将など、あらゆる即死コンボの戦術のパーツが弱体化されてきました。
そして、突撃ウォーゲンもその例外ではありませんでした。
突撃に変更が加えられるのは、実に3回目となります。
「コスト0でこのターンだけ味方のミニオン全てに突撃を付与する」 →
「コスト0で味方のミニオン1体に突撃を付与する」 →
「コスト3で味方のミニオン1体に攻撃力+2と突撃を付与する」 → …
突撃は、最近のパッチによって、すでに闘技場では登場しないカードとなっています。
現在は序盤から中盤あたりで決着をつける速攻系のデッキやミッドレンジのデッキが主流で、長期戦用のコントロール・デッキが活躍しにくい状況となっています。
その主流の中のアグロ(速攻)デッキには、必ずと言っていいほどに鬼軍曹が起用されているために、弱体化を施すのだと説明されています。
過去には、アグロ・デッキの常連となっていたレプラノームとナイフ・ジャグラーが、同じような理由で、同じような攻撃力低下の弱体化を受けています。
これらのカードの起用率が激減したことを考慮すると、鬼軍曹も同じ運命をたどることになるのかもしれません。
おそらくは、このカードの変更が最大の焦点となるはずです。
ヨグ=サロンは、発表された当初は「ランダム祭を楽しむネタ・カード」などと揶揄(やゆ)されていましたが、予想に反して楽しさではなくストレスを与える存在になってしまいました。
その大きな理由は2つあります。
まずは、実際には理不尽な有利を発動した側に与える――特に盤面の劣勢時に逆転する――可能性が高いカードだと判明したことです。
1回の呪文のプレイにつき、確実に発動側の有益となる確率がおよそ50%もあるのに対し、確実に発動側の不利益となる確率はおよそ10%しかないと算出されています。
運悪く自滅する結果になることもありますが、呪文プレイの回数が増えるごとに、発動側を大きく利する可能性が高くなります。
そしてその結果は、終盤戦まで積み重ねてきた双方のプレイ内容を一掃してしまいます。
10分近くかけて悩み抜いてミニオンを交換した用兵の全てが、状況に応じてダメージを与えあった計算の全てが、ヨグ=サロンの1プレイだけで意味を持たなくなり、それまでの双方が展開した戦術とは全く関係ない戦況がランダムに出現してしまうのです。
これが「あまりに理不尽」と評される所以(ゆえん)です。
もう1つの理由は、ヨグ=サロンがランダム要素の集大成のような存在であることです。
プレイされる呪文も対象も全てコンピューターが決定し、プレイヤーが介入できずに運の良し悪しに任せるしかないプレイが、10回20回と繰り返されるのです。
ハースストーンのゲーム内容について、開発陣とコミュニティとの間で大きなギャップがある見解の一つは、このランダム要素です。
開発陣はつい最近も「ランダム要素はハースストーンの重要な構成部分である」と改めて強調していますが、コミュニティは「強すぎるランダム要素が楽しさを損ない、リタイアする者を増やす原因になっている」と主張しています。
9月17日に海外の有力チームであるTeam Dignitasがハースストーンからの撤退を表明しました。
その理由の一つが「ヨグ=サロンのランダム性だけで決着する対戦ゲームはe-Sportsではない」であるらしいと推測されていることは、小さくない衝撃をコミュニティにもたらしました。
プロ選手も、彼らの配信を観る者も、一般プレイヤーも、多くがヨグ=サロンの効果を不快に感じています。
そう感じていながらも大会等でヨグ=サロンを起用するのは、その方が強くなれるからです。
勝つためには、仕方なくもヨグ=サロンを起用せざるを得ない事情があります。
今回の変更は、ヨグ=サロンのランダム祭を楽しむファンの存在も考慮しながら、多くの変更案を試行した結論として決定されたそうです。
単独だけのプレイでヨグ=サロンを消失させる可能性がある呪文は、現在の「スタンダード・フォーマット」の環境においては以下の28種類(235種類中)です。
自然への回帰
マルチ
星の雨
星の炎
爆発の一矢
動物変身・イノシシ
動物変身
ファイアーボール
フレイムランス
炎の大地のポータル
パイロブラスト
沈黙
祓い清め
密言・死
聖なる炎
影隠れ
影の一閃
退散
進化
大地の衝撃
精霊崩壊
溶岩爆発
呪術
蔓延する狂気
影の炎
魂抽出
捻じれし冥界
破滅!
乱闘
ご指摘ありがとうございました。
この全てのカードが必ずしもヨグ=サロンに命中するわけではありません。
また、複数の小ダメージの呪文によってヨグ=サロンが破壊されることもあります。
ヨグ=サロンは来年の「スタンダード・フォーマット」でも残ります。
ハースストーン史上において最大級に問題視されたカードの今後に注目が集まります。
- 各カードは、その内容が変更されると、一定期間だけ還元した際の魔素(Dust)の獲得量が、作成時と同等まで増えることが恒例となっています。
今回は、還元できない「基本」セット以外のカードであるタスカーのトーテム師、荒野の呼び声、鬼軍曹、希望の終焉ヨグ=サロンがその対象となります。ただし、それは実際にカードが変更された後からであって、パッチが適用される前に還元しても魔素の獲得量は増えないことに注意してください。
- ヨグ=サロンがオーバーロードを持つ呪文をプレイすると、オーバーロードが発生してプレイヤーのマナがロックされる現象については、バグであると公式に認められました。
このバグは、将来のパッチで修正されるとのことです。 この7種のカードが変更されるパッチ「6.1.3」では修正されません。 - この7種のカードが変更されるパッチ「6.1.3」は、ハースストーン選手権の最終選抜大会(Last Call Invitational)前に適用されることが発表されています。
最も早い最終選抜大会はヨーロッパ地域の10月8日の土曜日(現地時間)であるため、本日(木曜日)から来週の土曜日までの間に適用されることになります。
最終選抜大会に出場する全選手は、大会前の約10日の間に、今回のカードの変更を考慮してデッキを修正することを強いられます。