ドン、ドン、ポコ、ポコ、ドン、ポコ、ポコ――
流木で作られたトーテムを叩き鳴らすリズムに囲まれたドイル教授とマローンは、恩人のトートランたちに導かれるまま、丘の上にある原始マーロックの村に訪れていました。
「いま、我々は何と、友好的なマーロックの歓迎セレモニーのゲストとして招かれています!」
撮影するなら今だと言わんばかりに記録を再開させているドイル教授は、原始マーロックたちから独特の装束(しょうぞく)を与えられて、ご満悦の表情をしていました。
一方で、カメラを回しながらも、この状況に警戒しているマローンは、どこからともなく現れ続けるマーロックの群衆から目が離せませんでした。
祭りのような雰囲気のもとで、演奏するマーロック、踊るマーロック、食事や飾り付けを用意するマーロック、不気味な紫色の床を研磨剤(けんまざい)で磨くマーロックなどが、あちこちで見受けられます。
飛刀手流道場の忍者からマーロックのナァグル語を教わったことがあるマローンは、聞き耳を立てると、どうやらこの原始マーロックたちは、「パーティ」「宴」「メガフィン」という単語を連発しているらしいことに気付きます。
「メガフィンだって!? ――私の大発見シリーズに収めるにふさわしい、未知なる生物がまだ現れるのか!」
危険かも知れないという意味でマローンから伝えられたのに、はしゃいでばかりいるドイル教授は、マーロックから勧められた「祝い酒」を飲み干した直後に、ぶっ倒れました。
(あのお酒って、さっき床を磨いていた研磨剤じゃ――?)
マローンがそう気づいた直後のこと――見上げるほどにドデカイ、見たこともないほどに巨大なマーロック「メガフィン」が、二人のもとへにじり寄ってきたのです。
(やはり、これは僕たちをいけにえとして、この巨大マーロックに捧げるための祭りだったんだ――)
(やはり、僕たちはあのカメ人間どもにだまされて、ここに連れてこられたんだ…!)
眠りから覚めたドイル教授は、目の前でうごめく岩のように大きいマーロックが突然視界に入り、驚きの叫びを放ちました。
「やっと起きたんですかぁ!――教授は…お酒に、弱いっすねえ!」
ドイル教授がよく見ると、その巨大生物のすぐ隣りで、顔を真っ赤にして泥酔しているマローンが、陽気にこちらへ語りかけていました。
「この研磨剤……、気高い芳香で…、酒の女神の芳醇な微笑みのめぐみ……! うまかっ…です、かゆい…うま」
「研磨剤」の単語からして何のことやら理解できないドイル教授は、嗅ぎ覚えがあるフルーティな香りをマローンが放っていることから、自分が飲み干した「祝い酒」を彼も楽しんでいることを、かろうじて理解しました。
「教授うぅぅ…!――僕は疑い深い…バカ者でぇ…、カメも、マーロックも、いい奴らなのにッ…!」
いよいよ酩酊(めいてい)してきたマローンは、彼ら原始マーロックが本気で自分たちを歓迎してくれていること、彼らの研磨剤は飲用酒を兼ねていること、そして隣の巨大マーロックがマーロック語を教えるペンフレンドになってくれたことを、ベロベロな口調でドイル教授に説明しました。
それからの記憶が途絶えた二人は、夜が明けてから、激痛によって目覚めることになります。
「全身がまんべんなく痛い!」
――大量に飲んだ「祝い酒」の副作用によるものだと即座に判断したマローンは、自身の探検日誌に以下のように記しました。
「追伸: なんで太陽がこんなにうるさいんだ?!」
<目次>
中立 | 霊の歌い手ウンブラ |
中立 | ヴォラックス |
中立 | 先遣隊長エリーズ |
中立 | ジャングルハンター・ヒーメット |
ヒーメット・ネッシングウェアリー――狩猟道を極めんとするアゼロス至高のハンター | |
中立 | オズラック |
ドルイド | ティランタス |
ドルイド | ジャングルの巨獣たち / 圧踏のバーナバス |
ハンター | 沼の王ドレッド |
ハンター | 沼地の女王 / クイーンカルナッサ |
メイジ | パイロス |
メイジ | ウェイゲートの開門 / 時間湾曲 |
パラディン | 太陽の番人タリム |
パラディン | 最後のカレイドサウルス / ガルヴァドン |
プリースト | 太陽の砕片ライラ |
プリースト | 目覚めよ創造主 / 希望の番人アマラ |
ローグ | 死体花シェラジン |
ローグ | 地底の大洞窟 / クリスタルコア |
シャーマン | 原始の王カリモス |
シャーマン | マーロック大連合 / メガフィン |
ウォーロック | クラッチマザー・ザヴァス |
ウォーロック | ラッカリの生贄 / 冥界のポータル |
ウォリアー | キングモッシュ |
ウォリアー | ファイアプルームの中心で / サルファラス |
特別編 | ジョージ・ハーバート・ドイルIV世 |