「すごい！――これはすごいことだ！」

ドイル教授ではなく、珍しく弟子のマローンの方が興奮気味にわめき立てた理由は、ウンゴロの超大型恐竜との出会いを「すでに果たしていた」ことでした。

原始マーロックの村が並び立っていた丘の全体が恐竜そのものであり、歓迎祭の舞台で踏みしめていた紫色の床が恐竜の背中であり、その恐竜が今まさに二人とマーロックの村ごと背中に乗せて移動していたのです。

彼らに合流したトートランのリーダー・ウンブラが、ウンゴロの中心部に位置する火山を指し示すと、この首長の恐竜であるメガサウルスは二人をそこまで送ったのでした。

「火の山に登って真実を見つけなさい――」

相変わらずウンブラは言葉少なに語ります。

彼女に感謝しているドイル教授とマローンは、火山の頂上で探検隊のみんなが待っているのだろうかとも考えながら、彼女の指示に従うことにしました。

温泉が放出する硫黄のにおいが立ち込める中で、二人は新たに出来たウンゴロ原住民の友人たちと別れを告げた後で、火山のふもとで走り回っている小さな炎のエレメンタルたちに注目し始めました。

例のごとく「新発見だ！」と興奮するドイル教授がそれらのスケッチを始めれば、「可愛い！」と興奮するマローンはそれらをペットとして連れ出すことにしました。

その夜のキャンプで、ドイル教授が夢中で描き続けたスケッチ群は、マローンが連れ出したペットのエレメンタルが火事を起こしたために、全て焼失しました。

なぜだかドイル教授が手足を動かす代わりにそうつぶやき始めたり、巨大な炎のエレメンタルに丸焼きにされそうなったことを除いては、彼らの登山は順調でした。

カルデラ――火山活動によって発生する大きなくぼみ――においてキャンプを設けた二人は、ウンゴロの大地をどこまでも覆う広大なジャングルの景色に目を見張りました。

「エディ、これは壮観な風景だ！――ここから見下ろすと、ウンゴロ・クレーターの全てを一望できるぞ」
「ええ、教授！見渡す限り、ウンゴロ・クレーターの木、木、木――」

「――あれ、教授？ウンゴロの「クレーター」は、一体どこに……」
「…………おかしいね、エディ――ウンゴロを囲っているクレーターの壁が、どこにも見当たらないね」

ウンブラが火山の上から見せたかった「真実」とはこのことなんだろうかと、マローンが思い悩み始めたそのときに、二人は今まで見たこともないエレメンタルを発見しました。

それは、他の全種類のエレメンタルを合成したような神々しいエレメンタルで、たくさんのエレメンタルの下僕を引き連れていて、見た目が鮮やかで魅惑的だけれども、どう見ても凶悪そうな存在でした。

こっそりとやり過ごそうとしたマローンたちでしたが、新種のエレメンタルに見とれているドイル教授がクリスタルにつまずいてスッ転んで、そのためにエレメンタルたちの儀式らしきものが中断されたようで、怒ったエレメンタルたちから追われる事態になりました。

「エディ、なんて私たちは不運なんだろう！こんなときに、追い打ちをかけるように火山の噴火が始まってしまったみたいだ！」

あんたさえミスしなければエレメンタルの方は――とマローンが責める間もなく、二人はエレメンタルと溶岩に囲まれて逃げ場を失い、絶体絶命の窮地に陥りました。

そのとき！――

――バサバサバサ！！

突然二人の足は宙に浮き、二人の眼下には広大なジャングルの地形が広がり、数秒前まで立ち尽くしていた溶岩まみれの火山が二人の目の前から離れていきました。

「プテロダックス！」

ドイル教授が上方を向きながらそう叫ぶと、つられて顔を見上げたマローンは、巨大な飛行型の恐竜が飛びながら自分たちをつかんで連れ去っていることに気づきました。

（この恐竜の名前が「プテロダックス」…？！ ――というか何で僕たちを…？ ――というか僕たちはこれから一体…！？）

この状況では成り行きに任せるしかなかったマローンは、パニック状態に陥りながら無意識に、はるか下方の地上にある遺跡らしきものと、内部が何やら発光している洞窟を空中から眺めていました。