その「ハロウェンド」のイベント・ボスであり、ハースストーンでも「ハロウェンド」のイベントのメイン・キャラクターを務めている首なし騎士は、人間のアンデッドである敵対キャラクターです。
生前は、ウーサー・ライトブリンガーが率いるシルバーハンドの騎士団に属する、トマス・トムソン(Thomas Thomson)という名の聖騎士でした。
彼は、同じくシルバーハンドに属していたアーサス王子の変遷に、人生を大きく振り回されました。
アンデッドに化す病に冒されたストラトホルムの都市を、住民ごと焼き払うことをアーサスが命じると、彼はウーサーやジェイナと共に猛反対しましたが、結局それが強行されて多くの市民が犠牲になりました。
自身が長年管轄してきた町で、富豪として住んでいたバロン・リーヴェンデアがアーサス側に裏切り、その町の穀物に毒を混ぜていることを彼は目撃しました。
そして、国に帰還したアーサスが、実父の国王を殺害し、所属していたシルバーハンドをウーサーもろとも滅ぼし、暗黒騎士としてアンデッドのスコージを率いる存在になったことを彼は伝え聞きました。
これらの事象によって、精神的に苦しむようになったトマスは、スコージの襲来が本格化する前に遠方へ避難するよう家族に指示しつつも、自身は残されたシルバーハンドの騎士としてスコージとの交戦に明け暮れました。
ついにはアーサスとスコージに対する憎しみが爆発してしまい、彼はスカーレット・クルセイドに入団したのです。
スカーレット・クルセイドは、スコージを含めるアンデッド全般の抹殺を掲げる、シルバーハンドの騎士団から派生した宗教的な団体です。
スカーレット・クルセイダーとしての活動を始めたトマスは、あるとき、スコージの襲撃によって発生した難民があふれ返る街に遠征しました。
これらの難民が、スコージに化ける病に冒され、それを伝染する大きな病原体になっていないかをチェックするためでした。
リーダーから「確実に病がはびこっている」と伝えられたトマスは、ろくに確かめもせずに、いまわしいスコージの予備軍であると見なして、難民全員を――以前に彼が猛反対していたはずの、憎きアーサスのストラトホルムにおける凶行と同じように――虐殺し始めたのです
一斉処刑の最中に、手にかけた一人の女の子の顔を見て、トマスはがく然としました。
――トマスの最愛の娘だったのです。
トマスが最後に彼女を叱った場面において、平手打ちをした際に見せた表情と全く同じ表情を向けながら、彼女は父親であるトマスの目の前で崩れ落ちました。
トマスは家族全員に避難を指示していたものの、運悪く嵐が到来していて船が出発できず、彼の家族はやむなく難民と一緒にこの街で滞在していたのでした。
彼の精神は錯乱しました。
この世の全てのものが邪悪なエネルギーに感染していて、その苦しみを解放できる存在は自分ただ一人であると思い込むようになりました。
「ハロウェンド」の祭りの時期に、「救済」という名目で多くの同志を次々に殺すという、狂気の暴挙に出たトマスは、その舞台であったスカーレット修道院において斬首されました。
それからしばらく経って、実は悪魔の化身であったスカーレット・クルセイドのリーダーが、トマスはアゼロス大陸の破滅に加担する兵にふさわしい存在だと認め、悪魔のフェル魔法によってトマスを首なし騎士として蘇らせました。
フェル魔法特有の緑の光を放つようになったアンデッドのトマスは、生前に狂乱し始めた「ハロウェンド」の時期に、斬首されたスカーレット修道院の墓場より、首なし騎士として各地に幻影を飛ばして、相変わらず「救済」という名目でアゼロス全土を襲うようになりました。
彼は砲撃用の爆弾としてカボチャを多用しますが、それは彼の愛した家族がカボチャ農場を営んでいたことが関係していると推測されています。