ほぼ死産の状態で産まれ出たダリオン・モグレイン(Darion Mograine)は、父が大急ぎで彼を凍える川に入水させたことによって、息を吹き返し、かろうじて生を受けました。
ただ、彼は幸せな家庭生活に恵まれることはありませんでした。
彼を産んだ直後に母が合併症で死亡すると、今度はスカーレット・クルセイドに誘惑された兄が権力の獲得と引き換えに父を殺害したのです。
アゼロスの警備隊として活動するアージェントの従騎士であったダリオンは、父が死んでしばらくしてから、スコージ軍の要塞ナクスラーマスの侵攻要員として派遣されました。
ナクスラーマスの城主のケルスザードが従えるデスナイトの四騎士が、その侵攻部隊を壊滅させると、かろうじて生き残ったダリオンは、彼の父が四騎士の一員となっていたことに気づきました。
スコージとして蘇生されてデスナイトの四騎士に属していたダリオンの父は、自分の霊魂を装備していたアッシュブリンガーという剣に込めて、これをダリオンが気付かぬ内にダリオンの手中に移送しました。
無我夢中で剣を握りながら逃げ帰るダリオンに対して、ダリオンの父の魂は、剣を通して「スカーレット修道院までこの剣を連れて行け」と指示しました。
自身を殺害したダリオンの兄を成敗するためであり、その指示に従ったダリオンと対峙した兄は、アッシュブリンガーから解き放たれた父の魂によって葬られました。
怨念を剣に込めた父をどうにかして救済したいと願ったダリオンは、聖騎士団のトップであるティリオン・フォードリングに相談しましたが、これは自分でもどうすることもできないとティリオンは釈明し、別れ際にダリオンへこう諭し(さとし)ました。
「邪悪な所業をも上回る、愛ある行為だけが、そなたの父の魂を解放できるであろう――」
この応答の後に、ティリオンから反対されたにもかかわらず、ダリオンはティリオンが率いる聖騎士団へ入団することを決めました。
あくる日の朝に、ダリオンたち聖騎士団は、かつてないほどに猛威を振るうスコージ軍の襲来に対向するべく招集されます。
このスコージ軍の勢いの源は、リッチキングの右腕となる存在であるケルスザードの参戦でした。
劣勢が顕著となって追い詰められた聖騎士団の一員であるダリオンは、父の形見であるアッシュブリンガーを手にしてケルスザードに挑みましたが、この名剣を持ってしても、今の自分ではケルスザードを打倒するには力不足であることを悟りました。
その戦闘のさなかに、彼はティリオンが残した「邪悪な所業をも上回る、愛ある行為だけが魂を解放できる」という言葉を思い出しました。
彼は父に対する愛情だけでなく、アゼロスの平和のために活動する仲間の聖騎士たちや、尊い犠牲を払ってきた幾千もの戦没者たちに対する敬愛の意も込めて、「愛しているよ、父さん」と一言つぶやきながら、何とアッシュブリンガーで自身の胸を貫き通したのです。
自分の命を引き換えにしてでも、敬愛する聖騎士団を救いたいと願った彼の自己犠牲は果たして実り、何千もの歴戦の勇者たちの魂がその行為に呼応して、凄まじい光の力をあらゆる方向へ放射してスコージ軍を撃退しました。
後にケルスザードによって蘇生され、スコージ軍のデスナイトに成り果てたダリオンは、浮遊要塞アケラスで遠征するデスナイトの部隊のリーダーとなり、プレイヤーが操るキャラクターを含めた新人のデスナイトの教育も同時に任されました。
あるときに、ティリオン・フォードリングをおびき寄せるためだけに、自分の部隊を犠牲にする指令を出したリッチキングに対して激怒したダリオンは、その時点でリッチキングの支配から解き放たれて、反逆のデスナイトになりました。
直後にリッチキングとティリオンが相まみえた際には、彼は所有するアッシュブリンガーを聖騎士団長であるティリオンに託すことによって、不死の力で汚染されていたアッシュブリンガーを聖剣に蘇らせました。
そしてティリオンたちに付き従うことを選んだダリオンと、同じくリッチキングの影響から外れたデスナイトたちは、打倒リッチキングを掲げる「エボンブレードの騎士団」を結成しました。
リッチキングの脅威が過ぎ去り、今度は悪魔の軍団の脅威が差し迫ったときに、3代目のリッチキングとなったボルヴァー・フォードラゴンは、自身が司るデスナイト軍を再編成する過程で「デスナイト四騎士」を選出することにしました。
ナズグリム、トロルベイン、ホワイトメインがそれぞれ四騎士として選出された後に、最後の四騎士かつ四騎士のリーダーとしてボルヴァーが迎えようとしていたのは、グルダンと悪魔の拷問によって殺されていた、偉大な聖騎士ティリオン・フォードリングでした。
ティリオンをデスナイトとして蘇生するべく、彼の遺体の回収を命じられたダリオンは、内心ではあまりに無謀な計画であると思いながらも、その命に黙って従いました。
そのミッションに同行するプレイヤーのデスナイトに対して、ダリオンは「ティリオン卿が共にいれば、これほど心強いことはない」と前置きしながらも、「その遺体を収容する聖騎士団がデスナイト化に応じる訳がなく、抵抗する聖騎士たちを殺めることに対する光の懲罰が私たちを襲うだろう」と、覚悟を決めておくよう忠告しました。
案の定、ティリオン卿をデスナイトに加えようとするダリオンたちの行為を「暴挙」だと批難した聖騎士たちは、ダリオン率いるエボンブレードの騎士とプレイヤーたちに反抗してきました。
最大の障害であったレディ・リアドリンをも制したダリオンたちは、いよいよティリオンの墓を掘り起こそうとしましたが、その瞬間に周囲がまばゆい光に包まれました。
驚がくするダリオンたちに対し、リアドリンは「このような振る舞いをライトが見過ごすとでも思ったか!」と一喝し、「ここは神聖なライトの力で保護された領域――貴様らの闇の力は到底及ばない!」と怒鳴りました。
自分が当初に予感していたとおりに、光のエネルギーによる制裁をまともに浴びて倒れたダリオンは、かろうじて逃れたエボンブレードの騎士たちに運ばれましたが、基地のアケラスに着くなり息絶えました。
ダリオンの犠牲を悼む四騎士およびプレイヤーたちと遠方からコンタクトをとり、事の成り行きを聞いたリッチキングは、ダリオンが犠牲を恐れない最も勇敢なエボンブレードの騎士であることを、改めて認識しました。
そしてリッチキングは、デスナイトの英雄であるプレイヤーに、死霊術の能力を授けて以下のように命じました。
「そこに横たわるは、デスナイト軍の最高司令官にふさわしい、四騎士のリーダーのダリオン・モグレインである――四騎士の最後の一員として迎え入れるべく、ただちに彼を蘇生せよ」
二度目の復活を果たしたダリオンは、過去に結成された四騎士をリーダーとして率いた父のように、新生の四騎士の支柱になることを誓いました。
「凍てつく玉座の騎士団」のレジェンド
<目次>
中立 | ダークフォールンとブラッドプリンス評議会 |
ケレセス公爵 | |
タルダラム公爵 | |
ヴァラナール公爵 | |
中立 | アーファス |
ドルイド | ハドロノックス |
ハンター | ピュートリサイド教授 |
メイジ | シンドラゴサ ―― マリゴスに寵愛された青竜と死竜の女王 |
パラディン | ボルヴァー・フォードラゴン ―― 不屈と犠牲の精神で身を捧げた黒変の聖騎士 |
ボルヴァー・ドラゴンフレイム | |
プリースト | ベネディクトゥス大司教 |
ローグ | リリアン・ヴォス |
シャーマン | ムウラビ |
ウォーロック | ブラッドクイーン・ラナセル |
ウォリアー | ドグサレガオ |
中立 | リッチキング ―― 氷牢より腐敗を司る死霊の総帥 |
アーサス・メネシル ―― 暗黒騎士の王へいざなわれた聖騎士の王子 | |
特別編 | エボンブレードの騎士団 |
デスロード・ナズグリム | |
トーラス・トロルベイン | |
審問官ホワイトメイン | |
ダリオン・モグレイン ―― 死をも厭わぬ大胆不敵の聖剣の担い手 |