特別コラム #3
ギルニーアスは、外部からはフォーセイクンのアンデッド軍の猛攻を受け、内部では凶暴的なウォーゲンの群れと争うようになりました。
このような事態を招いた、ギルニーアス国王のゲン・グレイメインの統治力を疑問視していた人物が、グレイメインの旧友である貴族のダリアス・クロウリー卿(Lord Darius Crowley)です。
外部と国を隔てる壁の建設と、アライアンス陣営からの脱退にクロウリー卿は強く反対していて、その頃から彼とグレイメインの仲は険悪になっていました。
ギルニーアスとアライアンスとの関係性を残す方が国益につながると信じていたクロウリー卿は、私軍をジェイナ・プラウドムーアのアライアンス遠征軍に参加させるなどしていました。
折しも、ギルニーアスという国が壁の内外の両面から脅威にさらされていた時期です。
とてつもない不安と恐怖に駆られていたのはグレイメイン国王も同様であり、負のテンションが極まった彼はついに、クロウリー卿の私軍の派遣を国の裏切り行為だと決めつけ、クロウリー卿を謀反(むほん)者として断罪したのです。
その知らせを聞いた、当のクロウリー卿も激昂し、このことによって両者の対立が一気に表面化しました。
クロウリー卿は、ギルニーアス国内の地域社会と多様なコネクションを有していたために、潜在していた国王の不満分子を容易に募ることができました。
特に、彼が支援をし続けてきた、「グレイメインの壁」によって分断されてしまった地域の街や村の市民からは、絶大な支持および協力を得ました。
クロウリー卿の拠点であるギルニーアス北部において、彼を取り巻く軍団はまたたく間に規模を拡大させ、ついに反乱軍の結成が果たされたのです。
その反乱軍は、現政権の打倒を掲げて南下し、首都まで迫りました。
中央政府にも存在していた国王反対派の協力も得て、国が所有する大砲や銃火器まで略奪したクロウリー卿の反乱軍は、ギルニーアスの首都圏一帯を内乱に巻き込みました。
集中砲火を受けたギルニーアスの首都も大きな損傷を受けました。
しかしながら、七大王国の一つにも数えられたほどのギルニーアスの政府軍は、さすがの軍事力を備えており、この危機的状況の中にあっても反乱軍の侵攻を何とか抑えきったのです。
首都陥落を失敗させたクロウリー卿が政府軍によって捕獲されると、彼が率いた反乱軍は自然と瓦解(がかい)して散り散りとなりました。
この市民戦争の被害によって政府の機能が低下し、その記録と交信が途絶えたギルニーアスは、再び実態と情勢が不明な国になりました。
それが明らかになったのは、さらに年月が経った後の、第3の拡張セット「World of Warcraft: Cataclysm」のストーリーが展開された時期です。
デスウィングが降臨した際の地殻変動が、「グレイメインの壁」の一部も崩落させていました。
このことによって、ギルニーアスは外部との往来が限定的ながらも可能となり、その内部の現状が少しずつ伝えられ始めたのです。
どうやらグレイメイン国王は、広まり続けるウォーゲンの呪いを対処するために、密かにナイトエルフ族の助言を得ていたようです。
あのエルーンの大鎌――大昔にウォーゲンの凶暴化をドルイドにもたらした武器――の製作に携わった一人であるという、そのナイトエルフのプリーステスは、ウォーゲンの呪いの詳細をグレイメインに伝えました。
そして、武器を製作して呪いを拡散させたことの償いとして、プリーステスに伝わる魔法の儀式をグレイメインに教授しました。
その儀式から発せられる聖なる力は、ウォーゲンと化した者たちの精神に影響し、凶暴化する前の意思を蘇らせて、部分的な治療ながらも彼らをギルニーアス市民として復活させることができます。
魔法の儀式を執行するためにグレイメインに帯同したナイトエルフの助力も得て、ギルニーアスに住むウォーゲンたちは徐々に、獣化したままでも自制心をコントロールできるようになっていました。
凶暴化したウォーゲンの脅威への対策がようやく準備され始めたというのに、ギルニーアス王国は存亡の危機を迎えることになりました。
先の市民戦争で疲弊していたギルニーアスの首都は、デスウィング降臨による地殻変動のダメージでさらに衰弱し、もはや外敵に対抗する余力を失っていました。
すでに増え続けていたウォーゲンの大群の侵攻を撃退することができなくなっていたのです。
ウォーゲンの群れが首都まで容易に攻め入ると、ギルニーアスの中央政府は再び戦火に見舞われることになりました。
ギルニアン(ギルニーアス市民の総称)が一丸となって対抗せねばならない国難であると認めたグレイメイン国王は、ギルニーアス随一の猛者(もさ)であるクロウリー卿と、彼に従っていた反乱軍のメンバーの解放を指示しました。
クロウリー卿とその反乱軍は、とにかくギルニーアス国民の避難を成し遂げるためにグレイメインに協力し、自分たちが略奪した後に隠し持っていた銃火器を提供するなどして、政府軍を補佐しました。
ここでさらに、ウォーゲンの群れに続く大きな脅威が、ギルニーアスの内部に侵略し始めていました。
かねてより「グレイメインの壁」の外に押し寄せていて、その防壁が崩落したことによって大挙して内部に入り込むことができるようになった、フォーセイクンのアンデッド軍です。
この頃にホード陣営の総大将となっていたガロッシュ・ヘルスクリームは、アライアンス陣営に対する攻勢を強めていて、まずはギルニーアスの資源と拠点――とりわけ遠征を可能とする港――を占拠することを計画しました。
そのギルニーアスを完全に征服するために、大規模なフォーセイクンのギルニーアス侵略軍を派遣させたのです。
とうとう防ぎきれないことを悟ったグレイメイン国王は祖国を捨て置き、自国の難民を引率して、ウォーゲン種族に対する理解があるナイトエルフ種族の首都ダーナサスを目指しました。
程なくしてギルニーアス王国は崩壊――グレイメインは、いつの日か同地で王国を再建することを誓いました。
ウォーゲンの呪いの治療を継続するナイトエルフは、そのウォーゲンたちに付き従う必要があったため、空き家となった自分たちの住居をギルニーアス難民に提供しました。
こうした数々の恩に報いるために、ギルニーアスは再び、そして今度は本格的に、アライアンス陣営に所属することになったのです。
「ウォーゲンの部分的な治療」
「ギルニーアスのアライアンス再所属」
これらは、アライアンス陣営のプレイヤーがギルニーアス出身のウォーゲン種族としてプレイできるようになった由来である、ストーリー上の設定です。