ゲーム・デザイナーとしては異様と言って差し支えないほどに、高い人気と認知度を誇るようになったベン・ブロード氏は、やがてはゲーム・ディレクターに昇格し、ゲーム・デザイン以外の役割を任されることが多くなりました。
何しろ、ベン・ブロード氏が口を開けば、それだけで大多数の人が注目するのです。
各拡張セットの広報に始まり、ゲームの変更点等の解説に従事したり、外部のインタビューや企画へ応じる機会が増やされました。
近年では主に、ハースストーンの開発チーム「Team 5」を統括しながら、その「Team 5」の「顔」として振る舞う活躍を見せていました。
自身が持つ高いカリスマ性を発揮することで、ハースストーンの開発チームとハースストーンのコミュニティを仲介し、その両者の主張をコントロールしてきた功績も忘れられません。
ベン・ブロード氏が出演し、彼の特有の伝え方でプレゼンテーションされた「デザイナーの洞察 = Designer Insights」シリーズの公式動画は、開発チーム側がプレイヤーに周知させたいゲームの仕様などを有効的に発信しました。
プレイヤー側から発信される不満や批判に対しても矢面(やおもて)に立ち、ネガティブなフィードバックは開発の進行を再考する契機であるとして好意的に捉え、やはり特有の伝え方で応答しては、それらを緩衝(かんしょう)する役目を果たしました。
怒り心頭の様子で不満をぶちまけるKripparrian氏に対しては、プライベートな動画メッセージを送るという開発陣としてのルールを破る手段で応じたのですが、ゲーム・デザインの譲れない部分であることを懸命に説きながら、結果的に影響力が高いストリーマーを「なだめた」行為については、多方から高い評価を得ました。
敬愛されたデザイナーやディレクターは多く存在しますが、ベン・ブロード氏のような親しまれ方をした人物はそう多くはありません。
常にポジティブで、他者とのコミュニケーションを図ることを好み、観る者を明るくさせる快活な彼は、世界中のプレイヤーから愛されました。
「ハースストーンにはベン・ブロードという楽しい人がいる」――外部からもそう認知されるようになり、彼はブリザード社を代表する一員となるまでに至りました。
ゲーム・デザインの基礎を築いた功績も含めて、ベン・ブロード氏がハースストーンの普及に多大な貢献をもたらした存在であることは、疑う余地がありません。