「Tilt」というゲーム用語がある。
「理性の喪失状態」や「理性を失った判断力によるプレイ」を指す。
WoWでも用いられるが、カードゲームでこそ頻繁に見かける単語だ。
ハースストーンではMTG勢が去った今でも多用されているのかも知れない。
もちろん「Tilt」は悪い結果をもたらす。
それはWoWの金策でも十分に起こり得る。
理性を失うと、これまでに培ってきたノウハウを放り投げて諦めたくなることさえある。
特に、慣れない段階で思うように稼げない時期には理性を失いやすい。
その結果として起こしやすい愚行の例を挙げる。
- 結果を出せないために焦り、初心者であるのに自己流の金策システムを編み出し、原則をくつがえすような無茶苦茶な設定に改悪してしまう。
- 売れないからとオークションに張り込み続け、Botに対しても何にでも対抗し、常に自分が最優先の出品となるよう再出品を病的に繰り返してしまう。
- 最終的には、競争相手を憎むようになってしまう。
私もそのような事態に何度も陥った負の経験を持つので、心情はよく理解できる。
だが、それらは余計に悪い結果を招くばかりであったことは明言しておきたい。
自己流の金策システムの改悪は、より売れなくなるだけだ。
病的なオークションの張り込みは、マークされて(ログインと出品を見張られたりWhitelistに登録されたりして)出品キャラの再作成を余儀なくされる結果にもなる。
他のプレイヤーを憎むほどの不健全な心理は、せっかく趣味として興じるゲーム活動に悪影響を残し、不幸にさせる。
ストレスを抱え始めると、非合理な行為に及び、それがさらなるストレスをもたらす悪循環にはまっていく。
せっかく築いた金策システムの収益性を大きく損う要因が、他の何ものでもない自分自身になり得るという訓誡が、この金策ガイドにおける最後のアドバイスだ。
思うように売れないと悩む心理の大半は、数ヶ月以内の短期的なスパンで成果を測ろうとするマインドに起因する。
金策は長期のスパンで捉える心構えが肝要だ。
前回解説したとおりに、大まかな市場の相場の変動は、新しいコンテンツが登場するまでを一区切りとする。
少なくとも、その新しいコンテンツが提供されるパッチごとの1シーズンをスパンの最低単位に据えよう。
売れ時や、相場の移り変わりや、その他多数の要因によって変動する収益は、1ヶ月単位の程度の期間ではとても測りきれない。
前回に掲載した、誰もが売れない相場の停滞期に「売れない」と悩むことなどあってはならない。
日常的な設定のメンテナンスは不可欠ではあるが、短期の成果を大げさに捉えすぎて極端な調整へ振り切ってはいけない。
このガイドでとにかく「気軽な1日1~2時間の金策」というフレーズを繰り返したのも、私自身がしでかした上記までの失敗談を戒めとして伝えたいからだ。
金策は、短期的な成果を求め過ぎずに気長に構え、片手間にやるつもりでストレスを感じずに継続する方が、最終的に最良の結果を得やすいはずだ。
「短期の短気は損気」だ。
わずか1ヶ月程度の期間の成果だけで一喜一憂をすることのない心の余裕と忍耐力を備えるようにする。
とりわけ金策や市場の仕組みに慣れ始める初期の段階でこそ、強く認識しておくべき心得である。
この金策をストレスなく継続するために忘れてはならない基本方針は、目的として得た「無料プレイ」を最大限に楽しむことだ。
それがWoWであるならば、出品と補充生産をさっさと終えて、街の外に出て思う存分にコンテンツを遊び尽くそう。
それがハースストーンであるならば、長時間の生産活動などを裏で放置させながら、あらゆる金満デッキやあらゆる有料コンテンツを満喫しよう。
何度でも言うが、完全無料化を果たす程度なら丸一日を金策に費やす必要などない。
あなたは、莫大すぎるほどのゴールドの保有を必要とする業者でも競技者でもないのだ。
「無料プレイ」を得るための手段に固執しすぎて「無料プレイ」を享受できないのであれば本末転倒だ。
楽しくなくては続かない。
こうしてTSMの金策の経験を余すことなく伝え残してきた訳なのだが、元も子もなく言ってしまえばTSMの金策だけが唯一の手段ではない。
これが最も効率よい金策方法であることは間違いないと確信しているが、もしこの金策が苦痛であるというならば他にも手段がたくさんある。
動画やテレビを視聴しながら延々とハーブ、鉱石、皮などの素材を収集しまくる金策が気楽だというプレイヤーだって大勢いる。
宝探しの感覚でダンジョンにこもり、高額で売れるTransmog用の装備品を見つけ出すのが楽しいというのなら、それがその人にとっての最適な金策だ。
いずれの方法でもプレイ無料化程度のゴールドなら十分に稼げる。
その程度の規模の金策ならば、必ずしも最高効率化が各プレイヤーにとっての最適解であるとは限らない。
金策に必須である継続と一貫性の確保は、その金策自体にストレスを感じないことが大前提の条件となる。
最終回となる次回は、細々としたTipsを付記して完結とする。
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