Healerだけが担うユニークな作業が「選別」だ。
一貫して「敵を保持する」「敵を倒す」と特定の対象に集中するTankやDPSと異なり、HealerはHealingの都度にその対象を選別している。
戦闘へ臨む前にHealの優先順位をきちんと把握しておくこともHealerの重要な仕事だ。
そのセオリーは全然難しくない。
「倒されると全滅に直結しやすいキャラクター順にHealを優先する」だけである。
一般的なエンカウンターにおけるHealの優先順位は「Tank > Healer >>> DPS」だ。
Tankの死はすなわちWipeであり、そのTankの生命を維持するHealerの死はTankの死を招く。
18年前から変わらないこの鉄則はまず最初に頭に叩き込んでおく。
それを踏まえた上で、Heal対象の優先度を細かく定めていく。
Healerとして成功するための鍵となる作業である。
自分がHealを担当する味方が最優先であることは言うまでもないし、自力で回復できたり他のHealerがカバーできるような対象は後回しになる。
回避不能のダメージを大きく被る者や、特別に設置された要回復のNPCなど、エンカウンターの独特の仕様によってHealの優先順位が変動するケースも多い。
同じDPSであっても熟練度とダメージ量が高いプレイヤーは優先順位が高いし、ミスを連発してHealerの時間とマナを無駄にするようなプレイヤーは優先順位が低い。
残り数秒を争う最終盤のバースト時には、HealerよりもDPSの生存を優先させて削りきらせる等の判断力も必要だ。
Healの優先度は、エンカウンターやその瞬間の状況によっても大きく変化する。
柔軟な判断の切り替えに慣れるには多くの練習が必要となるので、実戦ではそれを常に意識して習熟に努めるようにする。
その延長線上にある究極の選別が「命の選別」だ。
海外ではトリアージ (Triage) と呼ばれ、実際の医療現場や戦場治療室でも使われる用語だ。
高難度のチャレンジや味方のミスが続発する戦闘においては、残念ながらHealerは全員を生かしきることはできない。
その膨大すぎる被ダメージ量を前にしては、回復が間に合わなかったり消費マナが枯渇するなどの理由によって誰かの命を諦めざるを得ない。
「全員を生かしきる」ことが使命であるHealerにとっては苦渋の選択となる。
だが、その「命の選別」を適切に判断することもまたHealerにとっては避けられない使命である。
「命の選別」の事態に瀕した際につける優先順位は、通常のHeal対象の優先順位とほぼ変わらない。
Cooldownを使い果たしていたら優先度が下がる等の例外はあるものの、原則的には「倒されると全滅に直結しやすいキャラクター順に優先する」という前提に変わりはない。
大きく異る点は精神面である。
Healerは選別で漏れたプレイヤーを見捨てる。
選別で漏れたプレイヤーはHealerから見捨てられ、戦闘から退場していくのだ。
この厳しい責任は重いと感じられるべきであり、これを軽んじているようなHealerは絶対に味方から信頼されない。
最大限に努力したにも関わらず誰かの犠牲を強いた場合には、その理由と判断についてHealerは自信をもって説明できなければならない。
参加者全員が高いプライドを有するトップ・ギルドにおいては、「命の選別」をめぐってHealer陣のリーダーとの言い争いが展開されることも珍しくない。
私自身も、何度も責め立てられた。
Heal対象の「選別」は記録として残ることがなく、適切だったとしても称賛されることは少ない。
むしろ、見捨てられたプレイヤーから恨めしく思われることの方が多い。
そうしたストレスに耐え得る強い精神力も必要とされる。
それを備えるコツは、やはり迅速かつ的確な判断を堂々と下せる判断力を養うことだ。
Healerガイド一覧
「World of Warcraft」Healer列伝 #5
(Moira Thaurissan )
ドワーフ族の首都アイアンフォージを統治するマグニ・ブロンズビアード国王は、娘であるモイラに対して男子としての後継者教育を強いたことにより、親子の間に亀裂を生じさせてしまう。
次第に女王となる将来を憂いたモイラは、対立していたダークアイアン帝国のドワーフに捕まると、その皇帝のソーリサンの意気に感化されてアイアンフォージに戻ることなく彼と結婚してしまった。
討伐されたソーリサン皇帝の後を継いだモイラ・ソーリサンは、やがて気丈な女帝として成長し、ついにはドワーフの三大クランのブロンズビアード、ワイルドハンマー、ダークアイアンを統合するまでに至る。
その貢献によってAllianceへの参入を果たすと、悪魔襲来時にはファオルやヴェレンらと肩を並べて司祭の集団を統率したり、大きく傷ついたアゼロスの大地の治療に専念するなどして、プリーステスとしての資質も存分に発揮するようになる。