最後にどうしても伝え残しておきたい項目がダメージ・メーターによる弊害だ。
私が長く経験してきた中で、これ以上にHealer陣のチームワークを大きく阻害し続けた存在はない。
Healerを、Healing DoneやHPSの値だけで評価することほど馬鹿げた話はない。
Healing DoneやHPSなどは、そもそも数値が高ければ良いなどという要素ではない。
純粋に多ければ多いほど良いDamage Doneとは全く性質が異なるのだ。
Tankの努力によって向上されるダメージの軽減や回避、Raidメンバーたちの動きの上達などは、Raidの総合的な被ダメージ量を減少させる。
当然、それに比例してHealing Doneの値も小さくなっていくのだが、むしろこれは歓迎すべき結果であるはずだ。
ダメージ・メーターはあくまでダメージ量の計測が主目的のツールであり、Healingメーターはそれに付随する、参考程度の資料として捉えるのがちょうどいい。
今一度言うが、私たちHealerの最大の目的は最終的にRaidを生かしきることであり、なるべく速く多くHeal量を稼ぐことでは決してない。
誤解なきよう正確に述べると、ダメージー・メーターの存在そのものではなく、メーターを他人の評価基準としているユーザーに要因がある。
残念なことに、いまだにメーターの値でHealerの実力を判断するプレイヤーやギルドは多い。
私はそんな彼らを「メーター至上主義者」と陰で呼ぶことにしている。
「メーター至上主義者」たちの頭の中は単純明快である。
Healing Doneが高かった = Good Healer
Healing Doneが低かった = Bad Healer
彼らのHealerに対する誤認識は、各Healerが担当する被ダメージのソースを問わないことからも生まれる。
メーターの値でしかHealerの働きを判断できないPugなどでは、Tank担当のHealerよりRaid Healerの方が高評価を受けやすい。
Healing Doneの総量が高いからだ。
いくらTankが最もダメージを受ける対象とはいえ、大抵Tank単体へ向かうダメージ総量より他大勢が受けるRaidダメージ総量の方がはるかに大きい。
ダメージ源が異なればHealすべき被ダメージの総量も異なるのが当たり前なのだが、「メーター至上主義者」たちは目に見える記録の結果だけで安易にHealerを評価してしまう。
Healing Doneの比較が役に立つのは、比較対象が全く同じ役割で、全く同じ構成の中で従事している場合に限る。
HPSも、特定のBurst Damageに対するHealの強度を観測するために参考とする指標の一つにすぎない。
「メーター至上主義者」たちによる誤ったHealerの評価がまかり通る環境においては、どのような弊害が生じるか。
Healerたちがメーターを意識した行動に走るのだ。
メーターの値を稼がないと評価されないからだ。
Tank担当Healerが余計なRaid Healに走る、ゆっくりHealできる状況でCooldownを使いまくって肝心の最終Phaseで余力がなくなる――
無用なHealの奪い合いが横行することで、Healer間の規律や組織の成熟が大いに阻害されてしまうのである。
何度でも言う。
Healerチームの間には競争や順位などない。
あるのは、Raidを生かしきるというただ1つの目標だけだ。
無意味なHeal競争が根絶されるためにも、Healerを評価する側にもこの訓戒は共有される必要がある。
私たちメーターAddonのユーザーの全員が、異なる役割のHealerをメーターというフィルターを通して比較するのは無意味だと認識せねばならない。
Healerガイド一覧
「World of Warcraft」Healer列伝 #9
(Velen)
惑星アーガスを統治していた強大なエレダー族のヴェレンは、豊富な知恵と魔力を兼ね備えて敬愛される、慈悲深きエレダ―の指導者の一人であった。
預言者として名高いヴェレンを象徴する予知的な幻視の能力によって、彼は悪魔の力に魅せられたエレダ―族の破滅の未来を察知し、その誘惑を跳ねのけた少数の同胞と共に悪魔の支配から逃れる亡命の日々に明け暮れることになる。
不時着したドラエナ大陸で隠れ住んでいてもなお悪魔の追討は緩まず、その手先と化したドラエナのオークたちによって壊滅的な打撃を受けるも、ヴェレンはかろうじて生き残った仲間たちを見捨てず懸命に治療を続けながらどうにか逃亡先のアゼロス大陸まで率いた。
そこでエクソダーに居を構えてアライアンス陣営に参入したヴェレンたちは、かつてのエレダー族が指揮官を担う悪魔の焦熱の軍団との戦争において極めて重要な役割を果たすことになる。