「天下一ヴドゥ祭」のコンテンツも全部開放され、新たなメタ環境も定まりつつあった年末に、突如として公式サイトにバランス調整の内容が発表され、人々を大いに驚かせました。

12月の新環境のメタを代表した「奇数パラディン」と「キングスベイン・ローグ」が、まずレベルアップ！と吸血毒の弱体化修正によって制約を課されました。

サロナイト鉱山の奴隷の修正は、その「コピーの召喚」の能力を活用していたシャダウォック・コンボのデッキや、ケレセス公爵による強化や手札内強化を施すデッキに多大な影響を与えました。

そして野生の繁茂と滋養が弱体化されたドルイドは、ドルイド・クラスの代名詞であり続けたマナ加速の手段を失い、トップ・シーンから一斉に退場して冬の時代を迎えることになりました。

これらの調整内容の是非（ぜひ）がどうであれ、こうしたバランス調整の発表の数々が、各カードセットのリリース情報よりも格段に大きく取り上げられる最近の現状は憂慮されるべきだと個人的には感じています。

以前から開発陣は「対戦環境の変化や平均以下のデッキの底上げは、拡張セットの新カードの追加によって果たすことをバランス調整の原則とする」と表明しており、私もその理念に賛同しています。

この年末の調整が過剰な反響を呼び寄せる結果となった背景には、残念ながらも「天下一ヴドゥ祭」の新カード群が変革を十分に果たせず、対戦環境の大部分が既存の状態のまま停滞していた事情があったのではないでしょうか。

多用されているマンモス年のセットが去る来年の「スタンダード」からは、カードのバランス調整よりも新拡張セットの新カード群の方が（良い意味で）議論を発展させる存在になってほしいと願うばかりです。

マンモス年の世界王者がTom60229選手に決定した翌週に、4種のカードのバランス調整がパッチ「10.2」に含まれることが発表されました。

修正対象はボーンメア、回廊漁り蟲、海賊パッチーズ、縛鎖のラザであり、いずれも弱体化されました。

それぞれは当時のメタ環境において多用されていたカードでした。

ボーンメアはアグロ、コントロールを問わずに様々なデッキで採用された他、闘技場でも人気が最高クラスである低レアリティの中立カードという存在でした。

回廊漁り蟲と海賊パッチーズは、それぞれテンポ系のデッキの攻撃性を飛躍的に高める存在でした。

縛鎖のラザは、言わずと知れた「ラザカス・プリースト」の根幹を成す存在であり、影刈アンドゥインのヒーローパワーの乱射をもたらして同デッキを最強の座に押し上げていました。

このバランス調整が極めて高い反響を巻き起こした主な要因は2つであり、まずはレジェンド2体の弱体化が衝撃的だったことです。

ラザに関しては「ラザカス」の「引いた者勝ち」の性質に理不尽さを感じていたプレイヤーが大勢いた背景があり、突撃を失ったパッチーズに関しては「I’m in charge now!」のボイスまで差し替えられるという余波も話題を一層盛り上げました。

もう1つは、議論を過度に拡大させる材料となるネガティブなフィードバックが、コミュニティの間で巻き起こっていたことです。

ラザもパッチーズもあと数か月で「スタンダード」から退場するカードであり、「1年以上に渡って放置され続けていたのに、なぜ今になって？」という疑問が投げかけられて、それに同調する声が相次いだのです。

この調整後は、ウォーロック・クラスを筆頭とするコントロール系のデッキと、小型ミニオンを並べるパラディンが台頭するメタへと変遷しました。