5人制グループのHealerは単独行動となるが、Raidでは複数のHealerが所属する。
Healerチームの間でコミュニケーションを密にとり続けるのも、Raid Healを成功させるためには欠かせない必須の作業だ。
国内外を問わずに私が在籍してきたRaid攻略ギルドのほぼ全ては、今振り返ると幸いにもその必要性が十分に認識されていたのだと思う。
必ずと言っていいほどギルドのHealerチームのチャット・チャンネルがゲーム内外で設けられていたし、Healerが集う専用のボイス・チャットや掲示板でも活発に議論が交わされていた。
ガイドの序盤でHealerをスポーツ・チームのディフェンダーに例えたが、そのディフェンダー同士でチームワークを図る重要度はRaid Healにおいても変わらない。
とりわけHealerチームは他のRaid内の役職以上にチームワークを要する。
Heal Workは見た目や記録に表れない作業が多いので、個々のHealerが自発的に情報を発信しないとRaid Healの全体像を描けないからだ。
最後に挙げるHealerの重要な基本資質は「協調性」だ。
Healer陣の間には競争や順位などない。
あるのは「Raidを生かしきる」というただ1つの目標だけだ。
役割を課せられることになった場合は、その全てを果たすことだけに集中する。
託されたその役割を果たすために、ベストだと思われるHealingの一手を選択し続ける。
世界最速クリアを競うギルドを含めて、高難度のPvEコンテンツを攻略するギルドにおいてHealingに関するコミュニケーションが交わされないRaidなど絶対にない。
私も常にその一員となることを要求されたし、情報を共有できない、あるいはしようとしないHealerは(いくら5man等のソロHealが超優秀であっても)常に二流以下だと見なされていた。
自分の任務が自分にとって不適切であると感じられたり、自分の担当に対するHeal Workに余力や不足があると認められたら、遠慮なくその懸念を表明しよう。
逆に沈黙を貫いたり、意見を拒んだり、あるいは利己的な要求を押し通そうとする態度は大いに問題であり、Healerチーム全体の成長を阻む。
採用された戦術やHealer以外のメンバーたちに問題もミスも特に見受けられない――それなのに死者が出るというならば、Heal Workが失敗している可能性が高い。
このような場合は、一度Healerチームの間で徹底的にHeal Workの組み立てを討論する場を設ける方がいい。
問題となる場面では余力があって、手助けできる者がいるかもしれない。
Healer同士で繰り返しコミュニケーションを図ることで、Heal失敗の原因と対策も素早く特定できるだろう。
ある程度RaidのHealerチームが発展すると、難関の課題であるCooldown発動のオーダーの調整にも取り組めるようになる。
最高難度のエンカウンターにもなると、全HealerがCooldownを一つも無駄にせずに活用するHeal Workが前提となるので、そのオーダーの取り決めもやはり欠かせない。
「戦闘の最初と最後で2回CDを使えるからTank担当HealだけどRaid向けに最初にCDを使い、次に二手に分かれるポイントではHealer2人がそれぞれCDを使い、次の全員が戻ってくるポイントでは全員のHealでカバーできるからCDを温存し……」
このようにCooldownの発動タイミングを綿密に定めて実行へ移すには、日頃からHealer同士で議論を重ねる土壌が育まれた組織力を有している必要がある。
高難度の敵がもたらす理不尽なほどの甚大な損害の一つ一つに対して、限られた手段を無駄にすることなく当てはめていく模様は、パズル・ゲームを解く感覚にも似ている。
リソースを余すことなく有効に使いきり、AIを用いたかのように理想的なサイクルで成し遂げた芸術的なRaid Healingの共同作業の完成は、筆舌に尽くしがたい達成感を与えてくれる。
Healerチームの「コミュニケーション」「チームワーク」「組織力」「協調性」「担当の遵守と尊重」なくしては、決して果たせない偉業である。
意見を交わす相手がHealerだけとは限らない。
時としてTankやDPSにもディフェンシブなCooldownスペルを特定のタイミングで要求し、それをHeal Work全体のルーティンに組み入れることもあるだろう。
Healを担当するプレイヤーとの意思疎通も欠かせない。
野球のバッテリーにも例えられるTankとTank担当Healerは、とりわけ綿密な関係を築くことが望まれる。
Holy PaladinとしてTank担当Healをよく任されていた私は、お互いを信頼し合うTankと組む方が不思議とTankの生存率が安定していたものだと思い出す。
Healer以外のプレイヤーと意見を交わす過程で、Healerからの視点だけではとても気づかないような他の役職独特の制限や感覚、付与してほしいスペルとそのタイミングなどを学ぶこともある。
Healを受ける側の事情もよく汲み上げて、それをHealerチームの議題にも取り込み、多角的な視点から全体のHeal Workを成熟できるように努める。
Healerガイド一覧
「World of Warcraft」Healer列伝 #8
(Sally Whitemane)
ホワイトメイン家がスコージの疫病によってアンデッド化した際に、一人だけ難を逃れていた少女期のサリーは、まん延防止のために感染した家族を粉砕せねばならないという残酷な体験を経てスコージを強烈に憎悪するようになる。
同様の境遇にあった者たちが組織する軍事宗教団体スカーレット・クルセイドに入隊した彼女は、懸命に努力してハイプリーストと蘇生の知識を習得し、やがてはフォーセイクンも含む全てのアンデッドから恐れられる審問官(Inquisitor)となるまでに至る。
かつてスカーレット・クルセイドの隊員であり、死後にフォーセイクンとなっては同教団から裏切られたリリアン・ヴォスの復讐によって、サリーは刺殺された。
その後にデスナイトによって蘇生されたサリーは、皮肉にも生前に憎んでいたアンデッドとして蘇り、新生のデスナイト四騎士の一員としてボルヴァー・フォードラゴンに仕えるようになる。