「World of Warcraft」におけるリリアン・ヴォスは、リッチキングが討伐された直後の拡張セット「Cataclysm」より誕生したアンデッド種族のキャラクターです。
かつてリッチキングによって蘇生されたアンデッドは皆、彼が率いる邪悪なスコージ軍に属しました。
その中で、リッチキングの影響から抜け出た一部のアンデッドは、自我と過去の記憶を取り戻して、フォーセイクンという独自のアンデッドの社会を築きました。
「Cataclysm」以前のプレイヤーが操るアンデッド・キャラクターも、フォーセイクンでした。
その後に、アンデッドを生み出す根源であった死霊の王リッチキングが討伐されると、アンデッドの供給が断たれたフォーセイクンの存亡が危ぶまれることになりました。
そこで、自由を取り戻した元スコージのヴァルキル(Val’kyr)たちが、備えている死霊術を駆使して墓場の死体を蘇生し、新たなフォーセイクンとして編入することを、リーダーのシルヴァナス・ウィンドランナーから依頼されたのです。
「Cataclysm」以降のプレイヤーが操るアンデッド・キャラクターも、ヴァルキルによって蘇生されたフォーセイクンです。
ただ、蘇生と同時に強固な忠誠心を抱かせるリッチキングの死霊術とは異なり、ヴァルキルの死霊術は蘇生時から生前の意識を呼び起こさせます。
それゆえに、ヴァルキルによって蘇生されたアンデッドは、蘇った直後にとまどうことも少なくありません。
リリアン・ヴォスも、そのようなアンデッドの一人でした。
彼女は、ハイプリーストのベネディクトゥス・ヴォス(High Priest Benedictus Voss)の娘として生まれました。
※補足: ベネディクトゥス・ヴォスとベネディクトゥス大司教は、何の関連もない赤の他人ベネディクトゥス・ヴォスは、スコージを含むアンデッド全般を憎む宗教団体スカーレット・クルセイドの一員であったため、その娘のリリアンは生まれながらにして対アンデッド用の体術を教え込まれ、物心がついた頃からスカーレット・クルセイダーとして活動しました。
悪魔の将軍の謀略によってスカーレット・クルセイドの内部崩壊が始まったときに、指揮系統を失っていた彼らはフォーセイクンとの大規模な戦闘によって大量の戦死者を出し、リリアンもそこで命を落としました。
敵対していたはずのアンデッドとして蘇生されたリリアンは、当初は現実が受け入れられず、差し出された鏡で自分の様子を見てもなお、ただ怯えながら「こんなの嘘よ…!」「私がアンデッドになる訳ないわ!」「お父さんが私を助けてくれるんだから!」などと叫ぶことを繰り返すばかりでした。
そして、助けを求めるべく、父がいるスカーレット・クルセイドの拠点へ向かったリリアンは、アンデッドであるがゆえにスカーレット・クルセイドによって捕獲されてしまいました。
牢の中で必死に「私はベネディクトゥス・ヴォスの娘よ!」「お父さんを出して!」と救いを懇願するリリアンに対して、彼女の看守は衝撃的な伝言をしました。
「ハイプリースト・ヴォスは、あなたが自分の娘であることを非難し、あなたをただちに処刑せよとおっしゃった」
「ハイプリーストは、あなたがアンデッドを滅する武器になることを望まれていたが、あなたがそのアンデッドになった今はもう――」
信じられないといった表情でがく然としたリリアンでしたが、思いを巡らせる暇はありませんでした――
――なぜならば、今まさにアンデッドを切り刻む至福の時間を迎えようとしているスカーレット・クルセイドの看守が、リリアンに向かってにじり寄っていたからです。
悲しみと怒りの感情で満たされたリリアンは、ただ本能に身を任せるようになったことで暗殺者としての能力が覚醒し、超人的な機敏さで看守をまたたく間に返り討ちにしました。
脱出した彼女は、この瞬間から父とスカーレット・クルセイドに復讐を誓う殺人鬼となりました。
頻繁に発生するようになった、スカーレット・クルセイダーのメンバーが犠牲となる闇討ちの事件現場には、怒りに燃えるリリアンが発するようになった紫色の炎が残されました。
そしてついに彼女は、塔の中で陣取る父のベネディクトゥス・ヴォスと再会し、彼の護衛たちを一瞬の内に殺害しました。
「リリアン…、お前…――再び会えて、嬉しいよ」
「お黙りなさい」
「あなたは、私を殺りくマシーンとして育てたでしょう?――今の私はどうかしら、父さん?」
「私は――ああ…」
「でも待って…、思い出したわ――あなたは私にアンデッドだけを殺すように教えたのだから、アンデッドになった私を、私自身が殺してほしいということなのよね、父さん?」
「リリアン――私は…」
「ただ、よく考えてみたら、おかしな話よね――何で私自身を殺さないといけないの…」
「――代わりにお前を殺すことができるのに!」
塔の中の壁面に何度も父を叩きつけて打ち殺し、復讐を果たしたリリアンは、なおもスカーレット・クルセイドの残党を駆逐するために旅立ちました。
「World of Warcraft: Mists of Pandaria」でも再登場したリリアン・ヴォスは、スカーレット・クルセイドの本拠地であるスカーレット修道院に変装して潜り込み、不死身の上級審問官ホワイトメイン(High Inquisitor Whitemane)――後に蘇生された四騎士の一人の審問官ホワイトメイン――をルーンブレイドの力によって処刑しました。
リリアンは、この頃にはアンデッドを創造する死霊術(Necromancy)全般にも憎しみを抱き始めたらしく、スカーレット・クルセイダーかつ死者の蘇生を司るホワイトメインの存在を彼女はどうしても許せなかったようです。
3代目のリッチキングによる制御が及ばずに独自にアゼロスへ危害を加えている、スコージの死霊術師たちが巣食うスコロマンス(Scholomance)にもリリアンは赴き、そこで死霊術師のリーダーであるダークマスター・ガンドリング(Darkmaster Gandling)の討伐も果たしています。
紫色の炎をまとわせながら流浪の処刑人として活動していた彼女は、悪魔の三度目の襲来というアゼロス全土の危機において、悪魔の軍団に対抗する一大連合軍に参加し、ローグ・クラスの英雄となるプレイヤーと共に行動するようになります。
「凍てつく玉座の騎士団」のレジェンド
<目次>
中立 | ダークフォールンとブラッドプリンス評議会 |
ケレセス公爵 | |
タルダラム公爵 | |
ヴァラナール公爵 | |
中立 | アーファス |
ドルイド | ハドロノックス |
ハンター | ピュートリサイド教授 |
メイジ | シンドラゴサ ―― マリゴスに寵愛された青竜と死竜の女王 |
パラディン | ボルヴァー・フォードラゴン ―― 不屈と犠牲の精神で身を捧げた黒変の聖騎士 |
ボルヴァー・ドラゴンフレイム | |
プリースト | ベネディクトゥス大司教 |
ローグ | リリアン・ヴォス |
シャーマン | ムウラビ |
ウォーロック | ブラッドクイーン・ラナセル |
ウォリアー | ドグサレガオ |
中立 | リッチキング ―― 氷牢より腐敗を司る死霊の総帥 |
アーサス・メネシル ―― 暗黒騎士の王へいざなわれた聖騎士の王子 | |
特別編 | エボンブレードの騎士団 |
デスロード・ナズグリム | |
トーラス・トロルベイン | |
審問官ホワイトメイン | |
ダリオン・モグレイン ―― 死をも厭わぬ大胆不敵の聖剣の担い手 |
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